法人破産 [公開日]2020年5月12日[更新日]2021年10月8日

法人税の滞納・差し押さえについて

法人が支払わなければならないコストの一つに「税金」があります。

法人には、法人ならではの税金が多数存在しますが、ここではその中から特に「法人税」にスポットを当てて、法人税を滞納した場合に起こること、支払えない場合にするべきことを解説します。

法人税の支払いが不安な人や、既に法人税を滞納されている方はぜひお読みください。

1.法人税とは

法人税は「法人が得た利益に対して発生する税金」です。
個人の所得に所得税がかかるのと同じようなものと考えてください。

課税対象となるのは「普通法人」で、以下の法人が該当します。

株式会社・持分会社・有限会社・労働組合・企業組合・管理組合・医療法人・相互会社など
※これら以外に、農協・漁協・信用金庫なども課税対象ですが、税率が異なります。

法人税は法人自身が税額を計算し、所轄の税務署に申告と納税を行うことになっています。

計算の対象期間は各法人が定款で定めている事業年度と同じです。
事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内に申告と納税をしなければなりません。

2.法人税を滞納するとどうなる?

実は、法人税を滞納している企業は多く、国税庁が公表している『令和2年度租税滞納状況』によると、実に1,081億円もの法人税の滞納が新たに発生していることがわかります。

もし法人税を滞納してしまった場合、どのようなことが起こるのでしょうか?

(1) 延滞税の付加

納期限を1日でも過ぎれば「延滞税」が発生します。
延滞税は滞納分を完済するまでの期間に応じて課税されます。

以下2パターンの利率があります。

①納期限翌日から2ヶ月経過するまで
年率7.3%、または特例基準割合+1%のうち、いずれか低い方が適用されます。
特例基準割合とは、前々年10月~前年9月までの銀行の新規短期貸出約定平均金利の合計を12で割って計算するものです。財務大臣が告示します。

②納期限翌日から2ヶ月が経過した後
年率14.6%か、特例基準割合+7.3%で、やはり低い方が適用されます。

滞納し続けると、それだけ延滞税は増えてしまいます。

(2) 督促状による催促

納期限から約1ヶ月を過ぎたあたりで、税務署から督促状が送られてきます。

督促状には納期限、滞納中の税の種類、担当部署などが記載されています。

もし従業員が督促状を見た場合、資金繰りが苦しいことを疑われ、会社としてのプレッシャーになるでしょう。

(3) 書面や電話、訪問による催促

督促状が来ても無視している場合、税務署は書面や電話でさらに催促を行います。
必要に応じて税務署のスタッフが直接やってくることもあるでしょう。

従業員達は度々来る税務署からの連絡を不審に思いますし、取引先に悪い噂が流れるかもしれません。

(4) 差し押さえ

税務署は督促と並行して、法人の財産を調査しています。

取引銀行や取引先は申告書に記載がありますので、口座や売掛金の調査は比較的容易です。
そして税金を納める見込みがないと判断すると、実際に差し押さえに踏み切ります。

督促状の送付から10日経過すれば、法律上は差し押さえが可能です。
実際には滞納から10日で差し押さえされることはほぼありませんが、いつ差し押さえが行われるかは徴税側次第なので誰にもわかりません。

差し押さえによって会社の財産の多くは没収され、公売にかけられてお金に換えられ、滞納した税金の支払いに充当されます。

また、法人の口座にある残高のほか、売掛金等の債権も差し押さえられます。

売掛債権の債務者である取引先にとっては、売掛金の支払相手が滞納者ではなく税務署に変わるため、差し押さえの事実が知られてしまいます。取引上の信用が失われる可能性は高いでしょう。

なお、全ての財産を差し押さえられるわけではありません。例えば以下のようなものは差し押さえを免れます。

  • 会社印
  • 技術者や職人などが業務で使う器具など(商品以外)
  • 未公表の発明品など

なお、口座を差し押さえられた事実は銀行に把握されるので、口座は凍結され、その銀行から融資を受けられなくなる(銀行取引が出来なくなる)可能性もあるでしょう。

(5) 代表者の個人財産が差し押さえられる可能性

法人税の滞納をしているのは法人なので、基本的には法人の財産のみが差し押さえの対象となります。

しかし代表者個人が法人の保証をしている場合、個人の財産にも差し押さえが及ぶ可能性があります。

[参考記事]

会社が破産・倒産した場合の社長・代表取締役の責任は?

なお、会社を解散して税金から逃れようと考える人もいるかもしれません。

しかし、解散登記をしても、滞納した税金がある限り、税務署は解散登記を無効として法人が存続しているものと考えます。

そして、法律上は「解散時に会社の残余財産を受け取った者」に対して税金の納付を請求できます。
解散しても徒労に終わって延滞税が増すだけなので、他の方法を考えるべきでしょう。

3.滞納への対処方法

税務署は徴税策を実行していますが、法人税未納の企業は多く、滞納には何らかの対策が必要です。
現実的に法人税を支払えない場合、以下の方法を考えてください。

(1) 担当窓口に相談

滞納しそうな場合は滞納前に、既に滞納している場合は直ちに担当部署まで相談してください。

場合によっては「納税の猶予」という制度を利用できます。
これが認められれば差し押さえをされなくなりますし、既に行われた差し押さえが解除されることもあります。

延滞税の全部または一部が免除される可能性もあるので、参考にしてください。

納税の猶予を受けられるのは以下のような人です。

  • 災害や盗難で財産が減った
  • 事業で大きな損失を受けた
  • 納税者やその家族が病気になるか怪我をした
  • 事業を休廃業した

これら以外に「他に国税の滞納がない」「申告書が提出済み」「納付できないと税務署が認める」などの条件をクリアしなければなりません。

たとえ上記に当てはまらない人でも、税務署が分割払いに応じてくれることがあります。諦めないで交渉してください。

(2) 法人破産で税金の滞納は解決できる?

本来的には、法人破産をすれば支払義務を負う主体である法人が消滅するので、支払義務もなくなります。

問題は会社の代表者などが法人の保証をしているときで、この場合は保証人に税金の支払義務が移行してしまいます。

中小企業などの代表者は法人の保証人になっていることが多いためこの場合、税金の支払いからは逃れられません。

そして、法人と違って自然人は自己破産しても存在が消滅せず、また税金は非免責債権であって破産しても免責されないので、税金の納付義務も消滅しません。

やはり税務署と相談して、分割払いなどを考える必要があります。

4.うかつな法人破産は厳禁!必ず弁護士に相談を

税金の滞納を法人破産で解決しようとした時、代表者が法人の保証をしている場合は要注意です。
安易に破産をしても解決できない債務があるため、法人破産のときも自己破産のときも必ず弁護士にご相談ください。

泉総合法律事務所にご相談いただければ、それぞれのケースに応じたベストソリューションをご提案いたします。

お一人で悩まず、お早めにご相談いただければと思います。

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