特定調停 [公開日]2018年3月2日[更新日]2023年9月13日

特定調停とは?任意整理との違いとデメリット

裁判所

1.特定調停と任意整理の違い

借金整理の方法として広く知られているのは、任意整理・個人再生・自己破産といった3つの手続き(=債務整理)で、これは弁護士や司法書士といった専門家に依頼をするのが通常です。

ですが、この3つの債務整理方法のほかに、簡易裁判所を利用した借金の整理方法があります。それが「特定調停」という手続きです。

(1) 特定調停とは?

特定調停とは、借主がご自分で簡易裁判所に申立てをして、簡易裁判所にて債権者を相手に借金返済方法を話し合う手続です。「①債務がある」かつ「②将来的に債務の支払いが困難になりそうである」場合に利用することができます。

弁護士や司法書士といった専門家に依頼をせず、あくまでご自分で簡易裁判所という機関を利用して(裁判所に仲介をしてもらって)借金返済方法を債権者と話し合う、といった点で、先ほどの3つの借金返済方法とは大きく異なる借金整理方法です。

大まかな手続の流れとしては、まず借金を滞納している業者から取引履歴を開示してもらい、最終的な借入額を確定します。
そして、その借入額を完済できるよう、簡易裁判所が貸金業者と借主の間を取り持ちます。裁判所の役割は、あくまで貸金業者と借主との間で合意ができるよう双方に働きかけることですので、完全に借主の味方となるわけではありません。

最終的に、分割での借金の返済や返済計画のリスケジュールについて合意ができれば、その後は新たな合意内容に従って借金を返済していきます。

(2) 債務整理(任意整理)とは?

任意整理・個人再生・自己破産といった債務整理方法のうち、「債権者と直接交渉する」という意味で、任意整理は特定調停と似た点がある手続きです。

任意整理は、弁護士に代理人となってもらった上で、貸金業者と個別に交渉をして将来利息を減額してもらったり、長期の分割払い(3年〜5年ほど)で返済する和解を取り付ける裁判外の手続きです。

裁判所を通さないため、必要書類も少なく、手続き自体も簡易かつスピーディに終了します。

2.任意整理と比べた特定調停のデメリット

特定調停は、実はデメリットが多くあり、実務的にかなり利用しにくい手続です。よって、弁護士が特定調停を進めることは原則としてありません。

以下では、特に任意整理と比較した場合の特定調停のデメリットを説明していきます。

(1) 複雑な手続きや準備を自力で行う必要がある

任意整理の場合は、取引履歴を開示してもらう、任意整理後の返済計画案を作成するなど、手間のかかる手続きや書類の準備は依頼を受けた弁護士が全て行ってくれます。

しかし、特定調停は弁護士に依頼をして行う手続きではありませんので、あらゆる準備を債務者本人がやらなければなりません。
まずご自分で申立書を作成し、簡易裁判所に特定調停の申立をするところから始まり、基本的には裁判所への手続を全て自分で行わなければなりません。裁判所にも、平日の昼間に何度か足を運ぶことになります。

(2) 取立ストップまでに時間がかかる

弁護士や司法書士といった専門家に任意整理を依頼した場合、弁護士や司法書士が正式に依頼を受けたことを証明する受任通知が貸金業者に届いた段階で取り立てがストップします。

特定調停でも、簡易裁判所が申立書を受理すると、貸金業者は債務者への取り立てをストップしなければなりません。
しかし、書類を集めたりするなどの必要があり、実際の申立までには時間がかかります。申立準備中における取り立てはストップせず、実際に取立がストップするまでには時間がかかると言えるでしょう。

取り立て・督促は精神的にも大きな負担となるため、できれば弁護士に任意整理などを依頼してすぐにでもストップしてもらうことをお勧めします。

(3) 支払いが滞ると強制執行にかけられる可能性

特定調停で話し合いがまとまると、調停調書が作成されます。
この調停調書には一般の判決と同じ効力があり、支払いが滞った場合はすぐに強制執行(財産の差し押さえ)が可能となってしまいます。

具体的には、貸金業者が勤務先を知っているような場合には、給与を差し押さえられる可能性が高いでしょう。

任意整理でも最終的には貸金業者と合意書を取り交わすのですが、調停調書のようにすぐに強制執行ができるというような効力はありません。その合意書をもって直ちに強制執行が可能ということにはなりませんので、病気や解雇などで万が一支払いが困難になってしまった場合でも落ち着いて弁護士に相談することができます。。

(4) 特定調停は家族に知られる可能性がある

特定調停はあくまで裁判所を通して行う手続なので、裁判所から借主本人宛(自宅)に書類や通知が届きます。
したがって、同居の家族に特定調停を申立てたことを知られてしまう危険性は充分にあります。

一方、任意整理であれば、依頼を受けた弁護士が代理人となって貸金業者とやり取りをしますので、貸金業者からの連絡はありません。

弁護士が借主と連絡を取る際も携帯電話に直接連絡をしますし、書類は弁護士であることが分からないように個人名で郵便を出すといった配慮がなされているのが通常です。

(5) 調停委員は必ずしも債務整理の専門家ではない

特定調停で間を取り持ってくれる調停委員は、必ずしも債務整理の専門家であるとは限りません
そのため、特定調停を行った結果、分割払いが短期でしか認められなかったり、将来利息がカットされなかったりするなど、借主である申立人にとって不利な調停内容に終わってしまう場合もあります。

任意整理であれば、依頼を受けた弁護士や司法書士は間違いなく債務整理の専門家です。
払い過ぎた利息を元本に充当することによる減額交渉や、将来利息をカットするといった交渉、3年以上の分割払いでの合意など、可能なかぎり借主に有利な内容で和解をしてくれるでしょう。

3.債務整理したくない人でも泉総合法律事務所へ

このように、特定調停は必ずしも万全ではありません。
令和3年度(2021年度)の司法統計によれば、特定調停の成功率は14.4%ということです。

「債務整理したくない!」と考えていても、実際には任意整理(もしくは個人再生、自己破産)が最も適切な借金の解決方法であるケースもあります。

泉総合法律事務所では、任意整理、個人再生、自己破産といった債務整理方法の中から、あなたにとって最も適切な借金解決方法をご提案しますので、安心してご相談ください。

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