時効援用とは?
「借金は一定の期間が経過すれば時効で消える」と考えている方は多いでしょう。
しかし、実は時効というものは期間の経過だけで成立するものではありません。
期間が経過した後で時効の「援用」を行うことで、ようやく正式に時効が完成します。
借金の支払義務を時効で消滅させたい場合は、時効に必要な期間の経過を待ってから、時効の援用を行います。
時効援用は「借金を消滅させる」ための最後のトリガーと言えます。
時効援用をしなければ、たとえ何十年経っていても時効が完成しません。借金はそのまま残り、利息や遅延損害金が増えていくことになります。
時効援用のやり方
時効援用は、相手方へ意思表示すれば足りるとされています。そのため口頭で「消滅時効を援用します」と伝えても、時効援用の効果は発揮されます。
しかし、口頭では将来的に「言った・言わない」の水掛け論になるおそれがあるため、実務上は「内容証明郵便」で相手方へ伝える方法が一般的です。
内容証明郵便を使えば自分・相手・郵便局のそれぞれに同じ文面の書類が残るため、意思表示をした証拠になります。
なお、内容証明郵便の書き方自体はネットで調べることができますが、記載する内容に不備があると正確な意思表示なのかどうか後で問題になることがあります。弁護士に依頼して、正確かつ法的に問題のない内容証明郵便を作成してもらうことをおすすめします。
弁護士が作成した内容証明郵便には弁護士の名前が記載されるので、相手が納得する期待も大きくなります。
時効の援用をしないとどうなる?
時効の援用をしなければ、時効が完成しません。
債権者は、時効が完成する前に訴訟の提起や強制執行をすることで、時効の完成を阻止することができます。
また、裁判所を使わずに、「すぐに1,000円だけ払ってもらえれば、利息を少しおまけします」「支払期日を伸ばしてあげます」と言ってくる債権者もいます。
時効の援用前にこういった誘いに応じてしまうと、債務の「承認」という行為に該当し、せっかく重ねた時効期間が更新されてしまいます。
消滅時効の成立に必要な期間が経過したら、忘れずに時効の援用を行いましょう。
債務の消滅時効はいつ?(2020年民法改正後)
消滅時効を主張するためには、消滅時効になるまでに必要な期間を知っておく必要があります。
時効に関する期間は法改正され、2020年4月1日に施行されました。
2020年4月1日以降の債務については改正後の規定が適用されるので、ここでは改正後の法律に基づいた期間を説明します。
一般の債権について
以下のいずれか早い方となります。
- 債権者が権利を行使することができることを「知ったとき」から5年(主観的起算点)
- 権利を行使することができるときから10年(客観的起算点)
金融機関や貸金業者等からお金を借りた場合、債権者はお金を貸す契約をした時点で「権利を行使できること」を「知っている」ことが通常です。
そのため通常の債権債務に関しては、「お金を借りたとき」から5年間を実質的な時効期間と考えておくといいでしょう。
なお、2020年3月31日以前に発生した債権については、改正前の規定である後者(客観的起算点)が適用されます。
わかりづらいのが「権利を行使できるとき」が具体的にいつなのかです。
これは「返済を請求できる日」だと考えてください。例えば「3月31日が返済期日」の借金であれば、債権者が返済を請求できる日は「4月1日」となります。
お金を借りたときを基準にするのではなく、「返済期日の翌日」から消滅時効のカウントが始まると考えてください。このカウントを間違えると、まだ到来していない消滅時効を主張することになりかねません。
しかし通常の貸金契約などでは「債権者が権利を行使することができることを『知ったとき』から5年」が適用されるので、「権利を行使することができるときから10年」というのは例外的なケースとなります。
特別な債権について
一般的な借金以外にも消滅時効は設定されているので、参考のため記載します。
①不法行為による損害賠償請求権
以下のどちらか早い方です。
- 被害者またはその法定代理人が損害および加害者を「知ったとき」から3年
- 不法行為の時から20年
②生命または身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効期間
以下のどちらか早い方です。
- 被害者等が損害及び加害者を「知ったとき」から5年
- 権利を行使することができるときから20年
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