自己破産の種類
自己破産には、大きく分けて管財事件と同時廃止事件の2つの種類があります。
それぞれどのような手続きなのかをご説明します。
管財事件とは
管財事件は、自己破産における原則的な手続きです(自己破産の手続きは原則として管財事件を想定しています)。
管財事件では、破産者の価値ある財産の換価処分を行い、債権者に分配する手続きを行います。そのため、破産管財人が選任され、財産の把握、調査、管理、換価が行われることになります。
破産管財人は裁判官ではなく、裁判所が選任した弁護士が行います(これは、破産者が個人的に代理人として選任とした弁護士とは異なります)。裁判所は破産管財人の監督を行うことになります。
[参考記事]
破産管財人とは?権限・報酬などをわかりやすく解説
管財事件になるのは、債権者に分配すべき財産がある場合、免責不許可事由がある場合、法人代表者である場合等です。
例えば東京地裁では、33万円以上の現金を保有している場合、20万円を超える資産を保有している場合、財産調査の必要がある場合、ギャンブルで借金を作ったなどの免責不許可事由がある場合、法人破産も並行して行っている場合などが挙げられます。
少額管財とは
管財事件にも、「通常の管財事件」と「小額管財事件」の2種類があります。
この2つの違いは、主に予納金の金額差です。
東京地裁では、通常の管財事件であれば予納金として最低でも50万円程度が必要ですが、小額管財の場合は最低20万円程度で済みます。
弁護士を代理人として選任している個人の管財事件の多くでは、小額管財が利用されています。
もっとも、小額管財はどの裁判所でも運用されているわけではありませんので、お住まいの地域の裁判所に詳しい弁護士へ一度確認してみることをお勧めします。
管財事件の特徴
管財事件の特徴としては以下が挙げられます。
- 破産管財人が選任される
- 手続きが複雑になり、長期化する
- 予納金が高額になる
管財事件の場合には破産管財人が選任され、財産の換価処分がある分手続きが複雑になります。
財産額の確定に時間がかかることも多いため、手続き期間は半年〜1年は想定しておくべきでしょう。
また、管財事件の場合は高額な費用が必要となります。
この費用が必要になるのは、破産管財人の報酬を賄うためです。
破産管財人の職務を全うするためには数ヶ月にわたり財産の把握や調査・管理に時間を割かなければいけないため報酬が必要となり、これを予納金という形で支払うことになります(実際には、債権者数や債権額よっても予納金の具体的な額は変わります)。
この他、管財事件について詳しくは以下のコラムで解説しています。
[参考記事]
自己破産で管財事件になったら|流れ・期間・予納金等を解説
同時廃止とは
同時廃止とは、換価処分すべき財産がない場合の自己破産手続きのことを指します。
破産手続開始決定と同時に手続の廃止決定をすることから「同時廃止」という名前がついています(破産手続とは、破産者の財産を換価して配当する手続のことです)。
申立人の手元に目ぼしい財産がほとんどない状態だと、換価処分すらできません。このような場合に破産管財人を選んで破産手続を行うことは意味がないため、これを簡略化した手続きが創設されたのです。
同時廃止事件となるのは、予納金を含む手続き費用を支払うだけの財産がなく、免責不許可事由がない場合です。
同時廃止事件は自己破産手続きの中では例外に位置しますが、個人の手続きの多くは同時廃止事件になるといわれています。
なお、免責不許可事由については、以下のコラムで解説します。
[参考記事]
免責不許可事由とは?該当しても裁量免責で自己破産ができる!
同時廃止の特徴
同時廃止事件の特徴は、以下の通りです。
- 手続きが簡易的
- 時間がかからない
- 費用が安く済む
同時廃止事件の場合は、管財事件に比べて手続きが簡易的で済みます。
管財事件では6ヶ月以上かかる手続きも、同時廃止事件の場合は3ヶ月程度で済むでしょう。
また、費用が安く済む点も特徴の1つです。
管財事件であれば20万円以上の予納金が必ずかかってきますが、同時廃止ではこれほど高額な裁判所費用は必要ありません。手続き費用としては2万円程度で済むでしょう。
同時廃止について詳しくは以下のコラムで解説しています。
[参考記事]
自己破産で同時廃止となるケース|同時廃止の流れ・期間・費用は?
管財事件か同時廃止かは裁判所が決める
同時廃止にするか、管財事件にするかに関しては、裁判所が判断します。
同時廃止になるか管財事件になるかの一番の決め手は、財産を保有しているかどうかです。
預金も現金もほとんどないという状況の場合は、免責不許可事由がなければ、多くのケースで同時廃止になるでしょう。
他方、それなりに現金や預金、資産があるという場合には、管財事件となります。
どちらになりそうかというのをご自身で確定するのは難しいため、この点も一度専門家である弁護士に相談してみましょう。
最終的に判断するのは裁判所ですが、弁護士ならどちらの手続きになりそうか予測をつけ、その予測をもとに申立てに向けた準備を進めていくことが可能です。
同時廃止とする確率を上げるには弁護士依頼が必要
自己破産をしなければいけない状況なのですから、できるだけ手続き費用を抑えたいと思うのは当然です。手続き費用を安く済ませるためにも同時廃止を望む方は多いです。
同時廃止にする可能性を上げるには、弁護士への依頼が必要と言えます。
ご自身で自己破産手続きを進めてしまうと、申立て前の準備が不十分となり、裁判所に申し立てた際に資産や借入状況の調査が必要と判断される可能性が高くなります。
調査が必要と判断されると、管財事件になってしまいます。
弁護士に依頼すれば、手続き面の全面的なサポートが得られます。申立て書類の綿密な準備も行いますので、裁判所に調査不十分を判断される可能性は低いでしょう。
むしろ、「専門家である弁護士がきちんとした調査をした上で書類を準備している」と判断されやすいため、同時廃止も認められやすくなります。