個人再生の流れ
ここでは、個人再生手続きの流れについてご説明します。
なお、期間はあくまでも目安であり、依頼者の方のご状況・裁判所の運用などによって異なります。
流れ自体も、各裁判所(東京・千葉・神奈川など)の運用によって異なる点もあるため、ご相談時に弁護士にご確認ください。
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- 1 ご依頼~受任通知発送
- 個人再生は、必要書類が多岐に渡り、また裁判所を通す厳格な手続きであるため、一般の方がご本人自身でこの手続を行うことは極めて困難と言えます。そこで、個人再生手続きを採る場合、弁護士へのご依頼がほとんど必須となります。
弁護士と面談のうえ、ご依頼いただいた場合には、速やかに受任通知(弁護士が介入して債務整理手続を行うということを記載した書面)を各債権者(借金を貸した側)に宛てて発送します。
この受任通知が債権者に届いた後、銀行や消費者金融といった貸金業者(債権者)は、依頼者の方に対して督促の電話をしたり、手紙を送ったりすることが法律上できなくなります。
また、依頼者の方は、今後債権者に債務の支払いを行う必要がなくなります。なお、受任通知発送後は、新たな借入れをしないようにお願いしております。
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- 2 債権調査(受任通知発送から約1~2ヶ月後)
- 受任通知の発送後、債権者から、現在の債務額とこれまでの取引履歴を開示してもらいます。
利息制限法の利率(借入金額に応じて15~20%)を超える利率で取引をしていた場合には、利息制限法の利率で引き直し計算を行い、過払い金が発生していれば、貸金業者に対して過払い金の返還請求を行います。
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- 3 個人再生申立に必要な書類の準備(債権調査終了から約3~4ヶ月後)
- 依頼者の方に、申立書作成に必要でかつご自身でないとわからない部分、たとえば借入れに至る経緯などの下書きや必要書類の収集を行っていただきます。
先述の通り、個人再生に必要な書類は多岐に渡ります。しかし、収集や作成については弁護士がアドバイスをしますのでご安心ください。
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- 4 裁判所への申立て(債権調査終了から約3~4ヶ月後)
- 申立書とそれに付随する必要書類が完成すると、弁護士が裁判所へ個人再生の申立てを行います。個人再生の開始決定が認められると、裁判所によっては個人再生委員が選任されたり、審尋期日が設定されたりします。
個人再生委員とは、裁判所に代わって、債務者の財産・収入・返済計画について確認する弁護士のことで、裁判所が選任します。
東京地方裁判所の場合は必ず選任され、その他の裁判所では事案によって選任されることになります。個人再生委員とは?個人再生の際の注意点と弁護士依頼のメリット
審尋期日とは、依頼者の方が裁判所に出廷して、15~20分程度、裁判官と直接面談を行う日時のことです。
その際、もちろん弁護士も同伴します。なお、裁判所によっては審尋期日が設定されない場合もあります。
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- 5 履行テストの実施(申立から約1~2ヶ月後)
- 個人再生では、手続き中に「履行テスト」が行われます。このテストは、再生計画案の履行可能性を検証するために、計画弁済額相当額(毎月一定額の積み立て)を継続していけるかどうかをチェックするものです。
個人再生は、借金を減額した上でその残務を3年程度に渡り分割返済していく手続きなので、「借金が減額されたあと、きちんと返済していけるのか?」という判断は非常に慎重に行われます。
再生委員が選任されている場合は再生委員の口座へ入金し、選任されていない場合は裁判所の指定口座などへ返済予定額を毎月入金することになります。
入金して積み立てたお金は、個人再生委員への報酬を差し引かれた後、債務者に返還されます。
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- 6 手続開始決定
- 裁判所は、申立書が適法であり、かつ、履行テストの結果や再生委員が選任されている場合には再生委員の意見等を踏まえた上で、個人再生手続の開始決定を行います。
この後は裁判所主導の下で再生債権の届出や調査が始まるとともに、法が定める債権者平等原則等が特に強く要請されることになります。
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- 7 債権額の確定(上記の手続開始決定から約1ヶ月半後)
- 最終的な借金の額が確定されます。申立書に記載した債権額に誤りがある場合は、債権者から正しい金額の主張が裁判所へ提出されます(これにも異議がある場合は、それを主張し争います)。
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- 8 再生計画案の提出(債権確定から約1ヶ月以内に提出)
- 最終的な借金の額を確定させた上で、今回の個人再生の手続でいくら減額され、いくら返済しなければいけないかが決定します。
また、減額し残った借金を何年で返済していくか、といった返済計画の案(再生計画案)を作成し、家計の収支表とあわせて裁判所に提出します。
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- 9 書面決議・意見聴取(計画案提出から約1週間後)
- 裁判所経由で債権者に再生計画案が配られ、検討されます。小規模個人再生手続の場合、ここで債権者(頭数の過半数、または過半額の債権を有する債権者)が再生計画案に反対(不同意)すると、再生計画案が認可されない、つまり再生手続が廃止(打切り)となってしまいます。
なお、給与所得者等再生の場合、債権者はこの再生計画案に対して反対することはできません。したがって、小規模個人再生が認可されなかった又はそもそも認可されない可能性が高い等の場合には、弁済額が高くなるというデメリットはあるにせよ給与所得者等再生を検討することも必要になるでしょう。
両者の使い分けも一般の方がご自身で行うのは困難ですので、弁護士に相談するのがよいでしょう。
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- 10 再生計画案の認可(書面決議・意見聴取から約1ヶ月後)
- 履行テスト(月々の積立)を無事に乗り切れば、今後もきちんと返済していくことができると認められ、裁判所から再生計画案の認可が下ります。
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- 11 再生計画に基づく支払い開始
- 裁判所で認められた再生計画に基づいて、毎月の返済を開始していくことになります。計画案通りに最後まで完済すれば、残りの借金は全額免除されます。
「一括返済や繰り上げ返済はできるのか」「途中で返済できなくなった場合はどうするべきなのか」等、個人再生手続き終了後に発生し得る問題については、以下のコラムをご覧ください。
[参考記事]
個人再生後に一括返済、繰り上げ返済はできる?
[参考記事]
個人再生の認可決定後の流れ|認可決定・確定後の注意点