リフォームローンと住宅ローンの個人再生時における扱い比較
個人再生には「住宅ローン特則」という制度が存在します。
債務整理をすると、ローン支払中の品物は債権者に回収されてしまうのが一般的です。
しかし住宅ローンに関しては例外的に、「住宅ローン特則」を利用することで、マイホームを債権者に回収されずに済みます。
では、「リフォームローン」は住宅ローン特則の効果範囲に含まれるのでしょうか?
特に中古住宅を購入するときに多いのですが、住宅ローンとともにリフォームローンを利用して、入手した住宅をリフォームする例が多く見られます。
リフォームローンを抱えた状態で個人再生を検討している方は、ぜひ本記事をご一読ください。
1.個人再生の住宅ローン特則について
(1) 「住宅資金特別条項に関する特則」を使える条件
住宅ローン特則は、正式には「住宅資金特別条項に関する特則」と言います。
これを利用できるのは以下の条件を全て満たした場合です。
- 個人再生する債権が住宅資金貸付債権(住宅ローン等の借り入れ)である
- 住宅ローンの対象が再生債務者(個人再生の申立人)の所有する住宅である
- その住宅が再生債務者の居住用の建物である(店舗兼住宅の場合、床面積の2分の1以上が居住部分である)
- その住宅が再生債務者の生活の本拠とする建物である(別荘等でない)
- その住宅が住宅資金貸付債権の担保となっている
- その住宅を担保として住宅ローン「以外」の借り入れをしていない
難しい言葉が続きましたが、簡単に言えば以下のようになります。
「生活している住宅に抵当権をつけて住宅ローンを借り入れている場合は、基本的に住宅ローン特則を使うことができる」
ただし、住宅ローン「以外」の抵当権が住宅についている場合は、住宅ローン特則を利用できません。
太陽光発電装置などをローンで購入する場合、住宅に抵当権を設定されるケースがあるので注意が必要です。
(2) 「住宅資金貸付債権」とは?
1つ問題となるのが「住宅資金貸付債権」という言葉です。
民事再生法では、「住宅資金貸付債権」の定義を以下のように定めています。
「住宅の建設若しくは購入に必要な資金、又は住宅の改良に必要な資金の貸付け」
注目すべきは「住宅の改良に必要な資金の貸付け」という部分です。
住宅の改良とは、まさにリフォームを意味します。
このことから、法的にはマイホームの増改築やリフォームの費用であっても、条件を満たせば住宅ローン特則の対象になるとされています。
(3) 抵当権の有無が重要
もう1つ問題となるのが「住宅を担保としているか?」という点です。
住宅ローンを利用する場合、大抵は購入する住宅には基本的に抵当権が設定されます。
それに対してリフォームローンは、基本的に「無担保」で借りるケースが多いのではないでしょうか?
抵当権が設定されるリフォームローンは、大きく言って次の2パターンです。
中古住宅を購入するケース
この場合は住宅購入資金と中古住宅のリフォーム資金をまとめて「住宅ローン」として借りることが多いようです。
したがって通常の住宅ローンと同様に、住宅には住宅ローンの抵当権が付きます。
そしてリフォーム資金が住宅ローンの一部となっているため、抵当権の効果はリフォーム資金にも及ぶことになります。
ローンの借り換えをしたケース
他の銀行で住宅ローンを利用しており、借り換えのタイミングで同時にリフォーム資金を借りた場合です。
この場合も抵当権の効果がリフォーム資金にまで及ぶケースが多いです。
(4) リフォームローンが住宅ローン特則の対象になる条件
以上から、リフォームローンであっても2つの条件を満たせば住宅ローン特則の対象として扱われます。
- 住宅の改良に必要な資金の貸付である
- 住宅が担保になっている(抵当権が設定されている)
では、リフォームローンに抵当権が設定されていない場合はどうなるのでしょうか?
2.抵当権のないリフォームローンを借りている場合
抵当権を利用するリフォームローンはむしろ少数派かもしれません。
多くのリフォームローンは担保がない「無担保ローン」でしょう。
そういった場合は住宅ローン特則を利用できなくなりますが、個人再生ではどういった扱いになるのでしょうか?
(1) 普通の債務として扱われ、個人再生で減額される
住宅ローン特則の対象にならない以上、リフォームローンであっても一般的な他の債務(債権)と同様に扱われます。
つまり無担保のリフォームローンは、個人再生をすると、通常の債務と同じように減額されるのです。
ここで「ローンがある状態で個人再生をすると、債権者にローンで買ったものが回収されるのでは?」と考える人がいるかもしれません。
しかしローン支払中の品物が回収されるのは、ローンの期間中は所有権がローンの債権者にあるなどの事情があるためです。
担保権も所有権も有していない債権者が債務者から何かを回収するには、裁判所を通じて強制執行などの手続きを踏む必要があります。
そして強制執行は、個人再生等の手続きをすることによって回避することが可能です。
結果として、特に財産を失うことなくリフォームローンを減額することができます。
(2) 無担保の太陽光ローンはどうなる?
太陽光発電設備を無担保ローンで導入できる例もあるようです。
この場合はローンを完済するまで太陽光発電設備の所有権が債権者にあることが多いので、個人再生を含めた債務整理をすると、太陽光発電設備を回収されてしまう可能性があります。
しかし太陽光発電設備を回収するには、取り外し工事に多額の費用がかかります。
このため「設備を回収して中古で売っても儲からない」と考えて、何もしない業者もいるようです。
ケースバイケースなので断言することはできませんが、太陽光発電設備が回収されない可能性もゼロではないと考えてください。
3.その他の問題点
個人再生におけるリフォームローンの扱いが抵当権の有無によって異なることはおわかりいただけたと思います。
最後に、リフォームローンを抱えた状態で個人再生する際に懸念される問題についてご紹介します。
(1) 債権者の不同意(小規模個人再生の場合)
小規模個人再生をする場合、債権者の同意が問題となります。
以下のいずれかの場合、小規模個人再生をすることができません。
- 再生計画案に不同意の債権者の数が債権者総数の過半数
- 再生計画案に不同意の債権者の持つ債権額が総債権額の過半数
問題は債権額に関する部分です。
リフォームローンは額が大きいことが多いので、債権者が1社であっても総債権額の半数を超える可能性があります。
1社の反対で小規模個人再生をすることができないかもしれないので、反対が予想される場合は給与所得者等再生を行う必要があります。
ただし、給与所得者等再生は小規模個人再生よりも個人再生後の返済額が上がりやすいため、自分の経済状況をよく考えて、弁護士と相談しながら行うようにしてください。
(2) 訴訟の継続
「我が家のリフォームローンは無担保だから個人再生で減額してもらえる」と気楽に考えていてはいけません。
債権者は訴訟を提起して支払いを求めることができるからです。
実は個人再生の場合、再生手続開始決定後であっても、既に始められている訴訟手続は中断せずに継続します。
もし訴訟で負けた場合、債権者が強制執行をするための「債務名義(判決等)」を持つことになります。
個人再生中に強制執行をされることは基本的にありません。
しかし個人再生には「債権者が債権の届出をする」段階があります。
このとき債務者にとって納得できない額の届出をされた場合、債務者は当然異議を述べることになります。
すると債権者は裁判所に「評価申立て」というものを行い、それを受けた裁判所が債権額の調査を行います。
そして「債務名義」を債権者が持っている場合、評価申立ての費用は債務者が負担することになっているのです。
個人再生と訴訟を同時に行うだけでも負担が大きいうえに、さらなる経済的負担がのしかかるおそれがあるので、訴訟を起こされる前に個人再生をするなどの対策が必要となります。
(3) 返済額の上昇
住宅ローン特則にリフォームローンが含まれる場合、住宅ローンもリフォームローンも従来通り支払う必要があります。
当然ながら住宅ローンもリフォームローンも減額されないため、個人再生後の返済額は上がってしまいます。
返済できない場合は住宅ローン特則を使わない、または自己破産を検討するなどの対応を迫られるかもしれません。
4.リフォームローンがある状態の個人再生は弁護士へ
リフォームローンであっても、住宅に抵当権が設定されるタイプのものであれば住宅ローン特則の効果が及びます。
一方、無担保のリフォームローンは個人再生をすれば減額の対象になります。
いずれにせよ、リフォームローンを整理することで持ち家を奪われることは基本的にありません。
しかしいくつか注意点があり、それを守らなければ住宅を失う可能性もゼロではないので注意してください。
そもそも住宅ローン特則は手続きが複雑で、弁護士の助力なく自力で行うのは不可能に近いです。
弁護士がいればリフォームローンがある状態での難しい個人再生を適切に進めてくれます。
個人再生のことは、ぜひ弁護士までご相談ください。