自己破産 [公開日]2018年5月14日[更新日]2021年10月29日

自己破産の申立書はどう書けばいい?

自己破産手続きは、現在あるほとんど全ての借金の返済義務を免除してもらう債務整理方法です。
成功すれば、悩んでいた借金の返済に追われる生活から解放されます。

もっとも、借金の返済義務を免除してもらうためには、法律が規定する手続きを経て、裁判所に「免責」を認めてもらう必要があります。
その裁判所に対し、最初に提出する書類のうちの一つに「破産申立書」があります。

今回は、自己破産の申立て時に必要になる「破産申立書」について解説します。

1.破産申立書とは?

破産申立書は、自己破産手続きを裁判所に申し立てる際に必要となる書類です。

申し立てをする場合は、破産申立書だけでなく、住民票、債権者一覧表、資産内容の説明書やその裏付け資料など必要書類も合わせて提出します。
必要な書類に不備があれば手続の開始すら認めてもらえないという点で、重要な出発点となるものです。

ただ、破産申立書は裁判所毎の定型化された書式が用意されており、基本的にはその各記載欄を埋めていくだけで完成します。
また不備があっても、裁判所の書記官から直すよう指示があります(破産法21条1項)。これを「補正」と呼びます。

補正の指示に従わなければ申立は却下されてしまいますが、拒否する理由はありませんから、素直に従えば問題ありません。

ですから申立書の記載をあまり堅苦しく考える必要はありません。

[参考記事]

自己破産と個人再生の必要書類|揃わないとどうなる?

2.破産申立書の内容・記載事項

破産申立書に記載する内容には、破産法21条1項によって必ず記載するよう求められている「必要的記載事項」と、それ以外の「訓示的記載事項」があります。

(1) 必要的記載事項とは?

「必要的記載事項」の具体的な内容は、破産規則13条1項に記載されています。

法律で必要とされているので、記載漏れがあれば申立を認めてもらえませんが、裁判所で用意している書式に記載欄があるので、記載を漏らす方はいないでしょう。また前述のとおり、記載漏れがあっても、裁判所の書記官が教えてくれますから心配ありません。

①申立人の氏名、住所

破産は、債権者が申し立てる場合(債権者破産)と、債務者が申し立てる場合(自己破産)に分かれます。自己破産では、申立人イコール債務者となりますから、ご自分の住所・氏名を記載します。

なお、現在、実際に住んでいる住所と住民票上の住所が異なる場合は、両方を記載してください。

②申立人に法定代理人がいる場合は、法定代理人の氏名・住所

法定代理人は、未成年者の親権者や成年後見人などです。

③申立ての趣旨

裁判所に対して、何を求めて申立をしているのかを明らかにすることです。

個人債務者の自己破産では、次のとおりとなります。

  • 「申立人について破産手続を開始する」
  • 「申立人(破産者)について免責を許可する」

④破産手続きの開始原因となる事実

破産手続の開始原因とは「支払不能」です(破産法15条1項)。これは平たく言えば、「負債があるが、今だけでなく、今後も返済ができない」状態です。

そこで、そのような状態にあることを申立書の「申立の理由」欄に記載する必要がありますが、破産法は「債務者が支払を停止したときには、支払不能にあるものと推定する」(15条2項)と定めてくれているので、法的には、最低限、返済を滞納していることを記載すれば足りることになります。
個人の自己破産で破産開始原因の有無が問題となることなどまずありませんから、それで十分です。

実際、東京地裁の申立書書式では、「申立人は、添付の債権者一覧表記載のとおりの債務を負担しているが、添付の陳述書及び資産目録記載のとおり、支払不能状態にある」と印刷されています。

(2) 訓示的記載事項とは?

訓示的記載事項は、破産法で記載が要求されているわけではない事項です。その内容は最高裁判所によって破産規則13条2項に定められており、そのうちいくつかは、裁判所の用意した書式に記載欄が設けられています。

また別紙添付書類としての提出が求められるものもあります。以下に、個人の自己破産で必要となる主なものを挙げます(東京地裁の場合)。

  1. 債務者の収支状況、資産、負債状況
    ・債務者の収支状況は別紙「家計の状況」として、申立前2ヶ月間の収支報告(収入と支出を項目別に集計した簡単な家計簿)を作成して提出します。
    ・資産の状況は、別紙「資産目録」に、不動産、預貯金、有価証券、自動車など資産内容別に記入して提出します。
    ・負債状況は「債権者一覧表」に各負債の内容を記載して提出します。
  2. 破産手続き開始の原因事実が生ずるに至った事情
    ・別紙「陳述書」に記載します。各負債が生じた理由や借入金の使途など、負債が生じてから返済できなくなるまでの事情につき、大筋のストーリーを記載します。なお後述しますが、この部分をどのように記載するかは、手続が円滑に進行するか否かに大きくかかわり、申立の準備をする上で、もっとも重要な点ですから、弁護士に依頼されることを強くお勧めします。
  3. 債務者の財産に関してなされている訴訟手続等
    ・給与の差押えや訴訟が提起されている場合に、その事件番号を記載します。
  4. 債務者に関して係属する他の倒産手続き
    ・例えば債務者が会社を経営しており、その法人破産申立がなされている場合には、その事件番号を記載します。
  5. 申立人又は代理人への連絡先等

これらの記載事項は、各裁判所が用意している破産申立書及びその添付書類の書式に記載欄が設けてありますから、書式にしたがって記入すれば足ります。

訓示的記載事項に記載漏れがある場合も、裁判所から指摘され記載するよう求められるでしょう。これも記入を拒む理由はありませんから、素直に従いましょう。

3.破産申立書の入手方法

破産申立書の書式は各裁判所のホームページからダウンロードできます。

必要な添付書類の書式も一緒にダウンロードできますので、確認してみてください(ネット上で公開していない裁判所については、裁判所に直接問い合わせをすれば入手できます)。

4.破産申立書の記載令(書き方)

破産申立書の標準的な書式例をあげておきます。

5.弁護士に破産申立書の作成を頼むメリット

破産の手続きに関しては、弁護士に依頼した方が便利です。
最後に、弁護士に破産申立書の作成を含めた自己破産手続きを依頼するメリットについてご説明します。

(1) 申立てまでのスピードが速くなる

自己破産を決めたら、できるだけ早く手続きを済ませて借金生活から解放されたいと思うのが通常です。

ですが、一般の方が自力で進めていくと「分からない」と感じる事項も多いため、申立書を準備するまでにも時間がかかってしまいます。

弁護士なら、申立て準備もスピーディーに進めていくことができますので、手続きの開始はもちろん、解決までのスピードも早まります。

(2) 書類や手続き上のミスがなくなる

破産申立書自体はそれほど難しい内容ではありませんが、その他の添付書類などの書き方・集め方で躓く人は多いです。

弁護士なら、全ての書類の必要事項を漏らさず記載することができる上に、書類の収集もサポートすることができます。

裁判所は必要書類について丁寧に教えてくれるわけではないので、専門家である弁護士がいるだけで安心できるでしょう。

また申立書はともかく、陳述書の「破産申立に至った事情」や「家計の状況」の記載内容は、単純に事実を記載すれば良いわけではありません。

嘘を書くわけにはいきませんが、最初から返済できないとわかっていて債務を負担したのではないか?返済能力がないことを隠して借り入れをしたのではないか?資産を隠しているのではないか?浪費など免責不許可事由があるのではないか?等々、裁判官に無用な疑いを持たれてしまうと破産手続がスムーズに進まなくなる危険があります。

嘘をつかない範囲で、過不足のない説明を文章化する必要があり、それが弁護士の腕の見せどころです。

(3) 依頼段階で督促も止まる

弁護士に依頼すれば、受任通知を債権者に送付した段階で貸金業者等の債権者からの取り立てもストップします。
受任通知を送付した後に貸金業者等の債権者が債務者に対し直接取り立てをすることは法律で禁止されているためです。

自分で手続きをする場合は、破産申立書が受理され、各債権者に通知書を送付するまで取り立ては止みません。

取り立ては精神的にもストレスがかかりますので、できるだけ早くこれをストップするだけでも気持ちが楽になるはずです。

督促がとまる「受任通知」とは

6.自己破産手続きは申立から弁護士にお任せを

破産申立書は、自己破産手続きの出発点となるものです。

自分で手続きしようと思ったものの、添付書類を作成する段階でどうすれば良いかわからなくなってしまい、弁護士事務所に駆け込む方も少なくありません。
書類内容を確認して難しいと感じたら、無理せず弁護士に手続きをお任せください。

自己破産を成功させるには、専門家の経験とノウハウが必要です。自己破産の手続きをご検討中の方は、債務整理に強い弁護士に一度ご相談ください。

相談は何度でも無料です。借金の悩みや不安についてお気軽に弁護士へご相談ください。
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