自己破産と仕事の関係|制限を受ける職業・資格一覧
自己破産をすると、一定の期間のみ就けない職業があることは確かです。
しかし、「自己破産で資格を剥奪される」「自己破産できない職業がある」「自己破産をすると将来なれない職業がある(就職できない)」ということはありません。
職業制限・資格制限自体も、その後一生続くものではないのでご安心ください。
とはいえ、自己破産による資格制限中の生活(収入源の確保)はもちろん、会社を解雇されないか・資格を剥奪されないか等について不安に思う方は多いと思われます。
今回は、そんな自己破産と仕事の関係について解説します。
1.自己破産手続中の職業制限について
各法律の定めにより、自己破産をすると一定の職業に制限がかかります。
これは「自己破産のデメリット」として様々な場所で公開されている情報でしょう。
しかし、制限される期間は限定的です。大抵の場合、従事できなくなるのは破産申立てをして開始決定から復権を得る(借金の免除を受ける、すなわち「免責許可の決定が確定」する)までの4〜6ヶ月間です。
自己破産をしたからといって、永久にその仕事に就けなくなるわけではありません。また、「自己破産できない職業」「自己破産することで将来なれない職業」というものも存在しません。
しかし、ほんの一時期でも就業できないと、生活に支障を来す、又は自己破産したという事実が会社に知られてしまう可能性はあるでしょう。
2.資格制限がかかる職業の一覧
では、自己破産の手続き中に制限される職業(できない仕事)の一覧をご紹介していきます。
(1) 弁護士、司法書士、宅建主任者等の士業
弁護士、司法書士、行政書士、弁理士、宅建主任者などの一部士業は、自己破産をした場合は欠格事由に相当するので、申立をして開始決定から復権までは登録をすることができず、その間は仕事に就くことができません。
(2) 一定の職業
生命保険募集人、警備員、旅行業務取扱主任者、貸金業登録者、質屋、建築士事務所開設者、一般建設業・特別建設業などの職業に従事する人は、自己破産申立をして開始決定から復権までの間はその仕事に就くことはできません。
(3) 会社取締役、執行役、監査役
会社役員は自己破産による欠格条項はありませんが、自己破産申立をして開始決定によって委任契約が終了する(民法653条2号)のでその地位を失うことになります。
会社の取締役や監査役は自己破産で委任契約が終了しますが、破産の手続き中であっても株主総会で再任されれば、同じ役職に留まることも可能です。
(4) 人事官、教育委員長や教育委員
人事院の人事官や、市町村の教育委員会の委員長・委員は、既に任命されている場合、法律の規定により自己破産の申し立てをすると退職させられます。
(5) 公正取引委員
公正取引員は、破産開始の決定を受けた場合、罷免されることがあります。
(6) 商工会議所など団体企業の役員
自己破産をして復権を得ない場合は、商工会議所の会員の資格がなくなるので、商工会議所など団体企業の役員はできなくなります。
また、復権するまでの間は後見人、後見監督人、保佐人、補助人、遺言執行者などにもなれません。
なぜなら、経済的破綻者に人の財産をゆだねることは適当ではないとされるためです。
このように、自己破産の申立で上記の資格制限を受ける場合は、その間、当該資格に基づく業務を行うことができません。
その後、免責が決定した場合、復権して以前と同様に働くことが可能です(復権後は士業などの登録もできるようになります)。
主にお金や資産を預かる職業の人は制限を受けやすく、資格職でも医師、看護師、介護士などは特に影響を受けません。
また、公務員の場合も職業制限はありません。
[参考記事]
公務員が自己破産する際の注意点|職場にバレずに借金整理できる?
このように、ごく普通の会社員は自己破産において仕事に関する過度な心配をする必要はありません。
そもそも資格制限を受けない職業の方が多いですので、不安な方は一度弁護士に確認されることをお勧めします。
3.自己破産中に制限される仕事への対応策
上記のような資格制限を受ける仕事をしている場合でも、その制限を受けるのは申立から復権までの4ヶ月~6ヶ月ほどです。
復権後は問題なくそれまでの仕事に従事できますし、国家資格が剥奪されることもありません。
[参考記事]
自己破産における破産者の復権とは?
しかし、ほんの数ヶ月でも仕事ができないとなれば、生活には大きな影響が出るでしょう。
では、具体的にどのような対策を取り得るのでしょうか。
(1) 所属部署を変えてもらう
自己破産を選択することになった場合、別部署へ異動すれば問題なく仕事ができる資格・職業ならば、職場の人に相談をして、復権までの間は別部署で働かせてもらうことが考えられます。
(2) 一旦退職して再雇用してもらう
(1)が叶わない場合、現在の職場を一旦退職(自主退職)し、復権後に再雇用してもらうという方法があります。
しかし、再雇用までの間は、今までと別の方法で収入を得る必要があるでしょう。
なお、職業制限を受けた後に転職するにしても、自己破産により転職が不利になることはありません。履歴書などに破産歴を書く必要もないのでご安心ください。
(しかし、金融機関などでは、面接などでブラックリストに掲載されていないかを確認されることがあるようです。)
資格制限を受ける職業の場合、自己破産の事実はどうしても会社に知られてしまいます。それ以外でも、会社から借金をしている場合や、給与の差し押さえを受けていた場合は、勤務先に借金の存在が知られてしまうでしょう。
しかし、自己破産を理由にした解雇は禁止されているので、リストラされる心配はありません。
ただし、多少なりとも肩身の狭い思いはする可能性はありますので、その点については覚悟をしておく必要はあります。
(3) 自己破産以外の債務整理を検討する
資格制限があるのは、債務整理の中でも自己破産手続きだけです。
個人再生や任意整理では、資格・職業の制限はありません。
資格制限が気になる場合、まずは弁護士に相談してあなたにぴったりの債務整理方法を検討してもらうと良いでしょう。
自分では自己破産しかないと思っていても、専門家の目で見たら個人再生で解決可能かもしれません。
4.自己破産と仕事(職業・資格)に関するよくある質問
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自己破産したらなれない職業は?(一覧)
自己破産の手続き中に制限される職業(できない仕事)の一覧は、以下の通りです。
※いずれの職業も、自己破産の手続きが終了さえすれば、以前と同様に働くことが可能です。- 弁護士、司法書士、行政書士、弁理士、宅建主任者等の士業
- 生命保険募集人、警備員、旅行業務取扱主任者、貸金業登録者、質屋、建築士事務所開設者、一般建設業・特別建設業など一定の職業
- 会社取締役、執行役、監査役
- 人事院の人事官や、市町村の教育委員会の委員長・委員
- 公正取引委員
- 商工会議所など団体企業の役員
- 後見人、後見監督人、保佐人、補助人、遺言執行者など
主にお金や資産を預かる職業の人は制限を受けやすく、資格職でも医師、看護師、介護士などは特に影響を受けません。
また、公務員の場合も職業制限はありません。 -
自己破産をしても働けるの?
自己破産による職業の制限は一時的なものです。
「自己破産で資格を剥奪される」「自己破産できない職業がある」「自己破産をすると将来なれない職業がある(就職できない)」ということはありません。 -
自己破産をした後の職業制限・資格制限はいつまで?
一定の仕事に従事できなくなるのは、破産申立てをして開始決定から復権を得る(借金の免除を受ける、すなわち「免責許可の決定が確定」する)までの4〜6ヶ月間です。
職業制限・資格制限がその後一生続き、働けなくなるということはありませんのでご安心ください。
5.まとめ
以上の通り、資格制限による勤務先への影響は限定的です。自己破産により一生今の仕事ができなくなるわけではありませんし、自己破産が原因で解雇(クビ)となることもありません。将来なれない職業や、取れない資格というものもないのでご安心ください。
債務整理による資格制限・職業制限を心配するよりも、自己破産などで債務を整理し、今後の生活、強いては仕事に集中するようになる方がメリットも大きいと言えるでしょう。
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