「債権譲渡通知書」が届いたらどのように対処すれば良い?
借金を滞納したままでいると、ある日「債権譲渡通知」というものが届くことがあります。
見慣れない書類なので「新手の詐欺かもしれない」「よくわからないから捨ててしまおう」と思う人もいるかもしれません。
「この書類を受け取ったら何をすればいいの?」「返せていない借金についてどのような処理がされるの?」と不安になる人もいるはずです。
そこで、このコラムでは「債権譲渡通知」について解説していきます。
債権譲渡通知はどういった書類なのか?届いたらどうすればいいのか?
現在借金を滞納している方や、既に債権譲渡通知を受け取ったという方は、本文を参照の上、決して焦らず、落ち着いて行動することをおすすめします。
1.債権譲渡通知とは?
債権譲渡通知とは、その名の通り「債権が譲渡されたことを債務者に通知する」書面です。
この説明だけではピンと来ない人が大半だと思いますので、「債権譲渡とは何か?」というところから説明していきます。
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(1) そもそも債権譲渡とは?
「債権」とは、簡単に言えば「返してもらう権利のある借金」の意味です。
そして、その債権の「譲渡」は合法的な行為です。借金を滞納していると、債権者は「この人から取り立てるのは時間がかかりそうだから、債権を他の会社に売って譲渡してしまおう」と考える可能性があります。
それが実際に実行されたとき、お金を借りた大元の債権者から送られてくるのが「債権譲渡通知」です。通常の金融業者(銀行や消費者金融)であっても、自社で取り立てをする手間や時間を減らす等の目的を実現するために、借金の回収(取り立て)を専門とする業者へ債権を譲渡することは一般的に行われているのです。
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(2) 債権譲渡されたらどうなる?
債権が譲渡されたということは、債務者から見ればお金を返す相手が変わるということです。
それだけではあるのですが、債権を譲渡された債権者は、多くの場合で元の債権者に比べると債権回収のノウハウを多く持っていることが多いのが問題です。これまでは電話や手紙で催促をされるだけであったのに、債権譲渡をされてからは一括での返済を要求されたり、差し押さえ等の法的手段を実行されたりするでしょう。あの手この手で債務者にお金を払わせようとしてくるため、債務者としては更に精神的に疲弊してしまいます。
また、「借金は時効で消滅する」ということを知っている人も多いと思いますが、新しい債権者は時効の成立を阻止する手段も講じてくる可能性もあります。
債権譲渡通知が来たということは、債権回収のプロが現れたようなものだと考えて、危機感を持つようにしましょう。
2.債権譲渡通知の効果
債権譲渡通知は、基本的に普通郵便ではなく内容証明郵便で届きます。
突然の内容証明郵便に慌てる人もいるかと思います。
しかし、債権譲渡通知の効果を知っておけば慌てる必要はありません。
債権譲渡通知にはどのような効果があるのか見ていきましょう。
(1) 債権者の変更
債権譲渡通知には、債権者が変わったことが書かれています。
このとき債務者は、債権者の変更や債権譲渡自体を拒否することはできません。「債権者が変わったことに納得してないので支払には応じない」ということもできません。
その後のやり取りも旧債権者とではなく、新債権者と行うことになります。
債務者は新債権者から支払の催促を受け、新債権者へ返済するという関係になります。
(2) 支払には応じる必要がある
債務者が納得しようとしまいと、債権譲渡は債務者の同意なしで行うことができます。
そして新しい債権者に対しては、債務者が債務を弁済しなければならない義務を負います。
支払いに応じなければ何らかの法的措置が行われる可能性があるので、注意してください。
借金は、一定期間経過すると時効で消滅します。時効の進行をリセットする方法もいくつか存在するのですが、債権譲渡通知自体にそのような効果はありません。
時効をリセットするには「裁判上の請求」や「差し押さえ」などが必要とされています。確定日付ある内容証明郵便は上記には当たらないので、時効の進行に影響を与えないのです。
とはいえ、債権譲渡通知の後は新しい債権者が裁判上の請求等をしてくる可能性が高いです。時効の成立を待たず、お早めに弁護士などに相談して対策を練ることが大事です。
3.債権譲渡による周囲への影響
(1) 家族や職場への影響
債権譲渡通知が来たからと言って、直ちに家族や職場に借金がバレるということはありません。
同居の家族が債権譲渡通知を受け取って中身を見た場合はバレてしまいますが、会社に借金がバレる可能性は低いでしょう。
ただし、新債権者が給与差し押さえ等に踏み切った場合は、確実に職場に借金のことがバレてしまうので要注意です。
これを避けるためには、給与差し押さえ回避のためにお早めに弁護士へご相談ください。
(2) 保証人への影響
債権譲渡通知は主債務者にのみ送れば効力が発揮されるため、保証人や連帯保証人へ送る義務は法律上ありません。
しかし、現実的には主債務者だけでなく、保証人や連帯保証人へも債権譲渡通知が送られることが多いようです。
これには、保証人が債権譲渡の事実を知らないまま旧債権者へ返済をしてしまうのを防ぐ等の意図等があると考えられます。
保証人や連帯保証人に借金の滞納を秘密にしている場合、債権譲渡通知が送られてくることによって滞納状態がバレてしまう可能性があることにご注意ください(尤も、滞納を数ヶ月続けている段階で主債務者から保証人に連絡がいっている可能性は高いです)。
4.債権譲渡通知が届いたらやるべきこと
債権譲渡通知が届いても、すぐに給与や預貯金が差し押さえられるわけではありません。過度に焦る必要はありませんが、放置しておくと大変なことになる可能性があることを知っておくべきです。「よくわからない書類だから」とよく読まずに済ましてはいけません。
最後に、債権譲渡通知が届いたときにするべきことを紹介していきます。
(1) 発信者・譲受人・内容を確認する
何よりも確認しなければいけないのは、債権が「誰」から「誰」に移ったかです。
債権者が複数いる場合は特に注意しなければなりません。
どの債権者に対する債務が譲渡の対象になったのかをクリアにしなければ、誰にどの債務を弁済しなければ良いのかがわからず、混乱の原因になるからです。
債権譲渡通知が詐欺の手段として使われることもあります。
発信者や新しい債権者等に心当たりがない場合や、たとえ心当たりがある場合でも、債権譲渡通知に書かれた新債権者名や所在地等でネット検索をかけてみるといいでしょう。実在しているのか、正規の業者であるのかなどをよくチェックし、詐欺犯罪でないかどうかご自身で確かめることが大切です。
もちろんネット検索に引っかからないからと言って安全な業者であると断言はできませんが、一応の目安にはなります。どうしても心配だ、怪しいと思ったら、弁護士や警察に相談するといいでしょう。
(2) どうしても返せない借金は弁護士に相談する
債権譲渡通知が来ると驚くことが多いかと思いますが、究極的には債権者が変わりましたというお知らせなのでさほど怖がることはありません。
しかし、取り立てに慣れた業者が新しい債権者となることが多いという点では注意が必要です。
返せないからといって放置するのではなく、借金問題を根本的に解決する対策をとりましょう。
借金に関して、「返済が苦しく、完済の目処が立たない」「多重債務状態となっていて、何をすればいいのか分からない」など、少しでも迷った場合は弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士であれば、個々のケースに最適な対処法を教えてくれるでしょう。債権譲渡通知の原因となった借金の根本的な解決方法もアドバイスしてくれます。
債権譲渡通知を受け取ったという方・借金を返せないで生活が苦しいというは、泉総合法律事務所の弁護士にぜひともご相談ください。