自己破産ができる条件
自己破産は、裁判所に支払不能状態であることを認めてもらい、借金の支払い義務を免除してもらう手続です。
しかし、借金で困り果て、払えないからと自己破産の申請をしても、無条件で借金がゼロになるわけではありません。
自己破産の手続には、「手続き開始の条件」と「免責の条件」があります。そして、条件に当てはまらなければ、自己破産は認められません。
そこで、自己破産ができる条件(できない条件)や、注意すべき点を以下で指摘します。
自己破産の手続きを開始する条件
まず、自己破産の手続きを開始するには、「支払不能」であることが前提条件となります。
「支払不能」とは、簡単に言うと、『客観的に見て、借金を返済出来る収入や財産がないこと』です。
「支払不能」と考えられる例
借金総額 | 300万円 |
---|---|
財産 | 僅かな預貯金 |
収入状況 | 無職(月額8万円の年金) |
健康状態 | うつ病のため通院中 |
住居費 | 月額5万円(家賃) |
その他事情 | - |
上記ケースの場合、売却して借金に充てる財産も無く、月8万円の中から月5万円の家賃やその他生活費を賄うと借金の返済は難しいため、「支払不能」であると言えるでしょう。
「支払不能」と考えられない例
借金総額 | 300万円 |
---|---|
財産 | 都内のマンション |
収入状況 | 無職(月額8万円の年金) |
健康状態 | うつ病のため通院中 |
住居費 | なし |
その他事情 | - |
一方、上記ケースの場合、マンションの価値にもよりますが、マンションを売却すれば300万円を支払えるのであれば、「支払不能」ではないと言えるでしょう。
「支払不能」の要件に、借金がいくらあればよい、債権者数が何社以上あればよい、というものはありません。借金を抱える方の年齢、健康状態、収入状況、財産状況、借金の総額等を総合的に見て判断するものです。
また、あくまで目安ですが、任意整理手続で、元金を3年かけて支払えるか支払えないかが1つの判断基準になると言われています。
生活保護を受けている方は、国が既に支払不能状態と認めているようなものですので、まず自己破産は認められると言ってよいでしょう。
参考:生活保護と借金・自己破産の関係〜法テラスの利用について
免責に関する条件
自己破産手続きにより借金をゼロにしてもらう手続きを「免責手続き」といいます。
先述の支払不能に当てはまり無事に破産手続きが開始できたとしても、今度はこの免責の条件をクリアできなければ、自己破産をしても借金の支払い義務が残ってしまいます。
免責が許可されない原因としては「免責不許可事由」があります。
<免責不許可事由>
- 財産隠し
- 換金行為(クレジットカードの現金化など)
- 一部の債権者にのみ弁済(偏頗弁済)
- 浪費・ギャンブルなどによる借金
- 自分の収入を偽ってお金を借りた
- 書類の破棄・改ざん
- 債権者を偽る
- 虚偽の申告
- 破産管財人等の業務の妨害
- 過去に自己破産してからの期間が7年未満
- その他、破産法上の義務違反
ギャンブル等の免責不許可事由がある場合、自己破産手続に誠実に協力し、借金の原因が既に取り除けているなら、裁判所の裁量により借金が免除になることが殆どです。
しかし、免責不許可事由の中に「過去7年以内に自己破産したこと」も含まれるのですが、この事由については裁判所が厳格であり、裁量免責を得るのは非常に困難です。
通常自己破産手続をとった方は、いわゆるブラックリストに載るため、7~10年程は新たな借金は出来ないはずです。
それなのに、借金をすることが出来たのはおかしい、二度と借金はしないと誓ってすぐにまた借金をしているので、この人は自己破産手続をとる意味がないと考えられてしまうからと言われています。
そのため、過去7年以内に自己破産した場合はほとんど自己破産ができないといえるでしょう。
また、財産隠しや、裁判所・管財人への虚偽申告、管財人の業務の妨害などをしてしまうと、裁量免責を得るのは非常に困難となりますから、絶対にしないようにしましょう。
免責不許可事由について、詳しくは以下のコラムをご覧ください。
[参考記事]
免責不許可事由とは?該当しても裁量免責で自己破産ができる!
自己破産で注意すべき点
資格制限
資格を利用して仕事をしている人は、それぞれの資格に関する法律によって、「自己破産手続を取った場合、一定期間この資格に基づいて仕事はできません」と定められていることがあります。
仕事ができなくなる期間は、通常破産手続が始まってから終わるまで(3~4ヶ月間)ですが、仕事に大きな支障が出る方は破産手続を取らない方がよいでしょう。
<代表的な制限される資格一覧>
- 警備員
- 宅地建物取引業者
- 生命保険募集員
- 損害保険代理店
- 証券会社の外交員
- 公認会計士
- 税理士
- 弁護士
- 司法書士
※医者、看護師、薬剤師の方は、破産しても資格に影響はありません。
※公務員の方も、破産しても資格に影響はありません。(公正取引委員会委員、公安委員会委員など特殊な場合を除く)
裁判所や管財人弁護士に支払う費用
同時廃止であれば15,000円ほど、管財事件であれば22万円ほどの費用が最低でも必要です(申立をする裁判所によって金額は異なります)。この費用を支払えないと、自己破産手続をすることができません。
自己破産の手続きの代理人を弁護士に依頼する場合には、弁護士費用もかかります。
もっとも、分割払いも可能な事務所も多いので、弁護士費用については弁護士事務所に一度ご相談ください。
まとめ
以上のように、自己破産をするためには複数の条件があります。条件を満たすかどうかは、借金がある方の生活環境や収入状況などを確認する必要があります。
自己破産を検討されている方は、まずは泉総合法律事務所にご相談ください。
泉総合法律事務所では、債務整理に関する相談は何度でも無料ですので、安心してご来所いただけます。