自己破産での免責審尋とはどういう手続きか?流れと内容、注意点
「お金を借りたが返す目処が立たず、返済が困難になった。借金額が多く、減額でも払いきれそうにない」という場合、「自己破産」を考えるべきです。
破産法に基づいて自己破産手続きが進行すると、免責審尋(めんせきしんじん)という期日が設けられます。これには、破産者本人が期日に裁判所へ出頭しなければなりません。
免責審尋は、簡単に言えば裁判官との面談になるのですが、どのようなことを聞かれるのか分からず荷が重いと思う方も多いのではないのでしょうか。
このコラムでは、免責審尋を受ける際の注意事項等について弁護士が詳しく解説します。
1.自己破産手続上の「審尋」の種類
「審尋(しんじん)」とは、民事の手続において、裁判所に対して自由に意見を言う機会を当事者(または代理人)や利害関係のある人に与えることです。
破産手続における審尋には、「破産審尋」と「免責審尋」の2つがあります。
(1) 破産審尋
破産審尋は、債務者が破産申立てをした後に行われます。これは、裁判所が破産手続開始決定を出すために行うもので、地裁によっては資料のみで省略されたりすることもあります。
破産審尋が行われる場合には、期日が設定され、自己破産に至った理由や債務状況などの説明をすることになります。
裁判所にもよりますが、面接の所要時間は10~15分程度です。
自己破産の原因は人によって異なるので、少々突っ込んだ質問をされることもあります。
心配な人は、審尋までの期間に弁護士と想定問答をシミュレーションしておくことで、安心して審尋に臨むことができます。
(2) 免責審尋
破産審尋のあとは破産手続開始の決定が下されますが、それで借金が免除されるわけではありません。もう一つ「免責審尋」があります。
免責審尋は、借金の免責を許可するかどうかを裁判所が判断するために行います。免責とは、簡単に言うと借金を0にするということです。
免責審尋で裁判所が「問題なし」と判断すれば免責許可が下ります。
全ての裁判所で免責審尋が行われているわけではありませんが、東京地裁のように全てのケースで免責審尋期日を実施している裁判所もあります。
また、同時廃止のときには免責審尋なしとするところもあれば、同時廃止は集団審尋とするなど、取り扱いは千差万別です。
詳細は、自己破産をする裁判所の管轄内の弁護士に問い合わせをすれば分かります。
免責審尋が行われる場合は、呼出状に記載された審問期日に本人が必ず出席しなければなりません。仕事の都合などで勝手に休むと裁判官の心証が悪くなり、それが原因で免責不許可になる可能性もあります。
しかし、都合が悪い日を一方的に指定されるということもありません。免責審尋期日は弁護士も出席する必要があるので、裁判所と弁護士の間で日程調整を行います。どうしても都合が悪い日がある場合には事前に弁護士に伝えておくとよいでしょう。
そのため、仕事が忙しいという人もそれほど心配する必要はありません。
2.免責審尋で聞かれること(質問内容)
免責審尋で聞かれる内容について不安になる人も多いと思います。
しかし、免責審尋の内容は比較的形式的なものであり、大体は裁判官の言葉に誠実に返事をしていれば問題ありません。
免責尋問で聞かれる内容は、個人審尋か集団審尋かでも多少内容が変わります。
集団審尋でも人数によって内容は異なり、東京地裁のように多くの人がいる場合はごく簡単な質問をされて終わりますが、他の裁判所ではもっと掘り下げて質問されることもあります。
いずれにせよ、集団審尋の場合、免責審尋ではすでに申立書類に事情が記載されており、プライバシーの問題もあるため、一般的にはあまり踏み込んだ質問はなされません。
具体例としては、裁判官から以下のことを聞かれます。
「住所・氏名・本籍に違いはないか?」
「申立書類の内容に間違いはないか?」
「免責不可事由はないか?」
こうした質問に対しては「はい、間違いありません」「相違ございません」と答えれば大丈夫です。
地裁によっては、自己破産や免責について趣旨を理解しているか質問されることもあるようですが、特別難しいことを聞かれることはありません。
免責決定を受けられるか・正しく受け答えできるか心配な人は、審尋までの期間に事前に弁護士と受け答えのシミュレーションをしておきましょう。
なお、もし債権者から異議が出ていたり、免責不許可事由があったりする場合は、裁判官がこのタイミングで代理人弁護士に対して反論書の提出を指示します。その場合、一般的には免責決定までの時間が通常よりも長くなります。
いずれにしても、弁護士からのアドバイスを受けた上で誠実に答えていれば、それほど心配する必要もないでしょう。
3.免責審尋期日の流れ
次に、免責審尋期日の流れを解説します。
(1) 免責審尋期日のタイミング
免責審尋は、破産手続の開始決定からおよそ2ヶ月後に行われます。
管財事件の場合は債権者集会の日に免責審尋も行われることが多いので、開始決定から2~3ヶ月後を目安に期日が設定され審問が行われます。
(2) 免責審尋期日の当日|裁判所到着後
免責審尋は弁護士と一緒に出席するので、裁判所に入る前に弁護士と待ち合わせをします。弁護士と一緒に裁判所に入ったら、名簿に名前を記載する等、各裁判所に合わせた手続きを行います。
指定の時刻になると裁判官が入廷します。その後、裁判官から自己破産に関する話があり、簡単な質問に答えて終了です。
免責審尋の時間はおよそ10分で終わります。集団審尋の場合は待ち時間もあるので、人数によっては終わるまでにもっと時間がかかることもあります。
免責審尋が終わったら、あとは免責決定を待つのみです。
(3) 免責審尋後から免責決定までの期間
審尋終了から免責決定までの期間は約1週間ですが、裁判所によって免責決定までの期間は異なります。
免責決定の通知は、書面で郵送により送られてきます。免責の決定が下りると、約2週間後に免責についての情報が官報に掲載されます。決定から約1ヶ月後の「免責許可決定の確定」をもって免責が決まります。
免責の効果については以下の記事をご覧ください。
[参考記事]
自己破産の「免責」とは?決定・確定するとどうなるか
4.免責審尋についてのよくある質問
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自己破産をするといつ裁判所の呼び出しがある?
民事の手続において、裁判所に対して自由に意見を言う機会を当事者(または代理人)や利害関係のある人に与えることを「審尋」と言い、自己破産手続では「破産審尋」と「免責審尋」の2つがあります。
よって、この審尋の際に債務者は裁判所へ赴く必要があります。破産審尋は、債務者が破産申立てをした後に行われます。
免責審尋は、破産審尋を終えて破産手続の開始決定からおよそ2ヶ月後に行われます。 -
破産審尋や免責審尋では何を聞かれる?
破産審尋では、自己破産に至った理由や債務状況などの説明をすることになります。
免責審尋で聞かれる内容は裁判所により様々ですが、具体例としては、裁判官から以下のことを聞かれます。
「住所・氏名・本籍に違いはないか?」
「申立書類の内容に間違いはないか?」
「免責不可事由はないか?」地裁によっては、自己破産や免責について趣旨を理解しているか質問されることもあるようですが、特別難しいことを聞かれることはありません。
注意点としては、自己破産で免責決定が認められるためには、破産手続に対して誠実な態度で臨むことが求められます。よって、当然ながら虚偽の説明をしてはいけません。
免責審尋における態度も重要で、ここで心証が悪くなると、免責決定に影響を与える可能性もあります。免責審尋で裁判官や債権者に良い印象を持ってもらうためにも、不安がある場合は弁護士と事前によく打ち合わせを行うようにしましょう。
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免責審尋の服装は?
免責審尋の服装は普段着で大丈夫です。しかし、スウェットやサンダルなど、余りにも崩れた格好では心証を損なう可能性もあります。
また毛皮や貴金属、ブランド品で身を固めるのもNGです。それだけで資産の存在や浪費を疑われます。
あくまでも自己破産を申請する立場であることを念頭に、できるだけ地味・清楚な服装で行くことをおすすめします。 -
免責審尋の持ち物は?
特に必要な持ち物はありませんが、弁護士との待ち合わせがあれば携帯電話などの連絡手段は忘れずに持っていきましょう。
もし事前に「出頭者カード」が送られてきている場合には、それも忘れずに持参します。
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免責審尋に遅刻をしそうな場合はどうする?
免責審尋では遅刻は厳禁です。免責許可決定は破産手続への協力状況や反省、態度なども総合的に考慮されるため、遅刻をすると今後の免責手続に影響を与えることもあります。
裁判官の心証を悪くしないためにも、遅刻や欠席は絶対にやめましょう。もし、当日やむを得ない事情やアクシデント(電車の遅延など)が発生した場合は、必ず事前に弁護士に連絡を入れて、その後の対応を相談してください。
5.まとめ
自己破産をしたら免責審尋を受けることになりますが、不安に思うことはありません。審尋についても、不安がありましたら弁護士が丁寧にアドバイスします。債務整理・自己破産はお早めに専門家にご相談ください。
泉総合法律事務所の弁護士は、自己破産についても免責決定までの期間最後までしっかりサポートいたします。経験豊富な弁護士が借金解決のお手伝いをしますので、どうぞお早めに無料相談をご利用ください。