破産宣告(破産手続開始決定)とは?自己破産との違い
自己破産は、多重債務者や過大な債務を負った人の経済的再生と救済を目的としており、裁判所からの免責許可が下りれば借金を原則として0にできる制度です。
しかし、「破産」という響きのせいか、自己破産を再生のチャンスではなく「悪いこと」と考えている人もいるようです。
「悪いこと」というイメージを増幅させるワードの1つが「破産宣告」かもしれません。
「宣告」という言葉は、しばしば「余命宣告」や「死刑宣告」などで使わせるせいか、悪い印象がつきまとっているようにも思われます。
しかし「破産宣告」の「宣告」には、悪い意味などありません。
ここでは「破産宣告」とは何なのか、宣告があるとどうなるのか等を解説していきます。
1.破産宣告とは
実は、現在の法律上「破産宣告」という言葉は存在しません。
(かつて存在していましたが、既に別の言葉に置き換わっています。)
それにも関わらず破産宣告という言葉が散見されるのは、過去に使われていた言葉が未だ定着したままだからと思われます。
破産宣告は「破産手続開始決定」の昔の言い方です。
裁判所が「これから破産手続を進めますよ」と決めて、それを宣言しただけに過ぎず、デメリットの側面はありません。家族や職場に通知されることもありません。
破産宣告は、裁判所が「書類に不備もなかったし、自己破産する条件を満たしているので、手続きを始めることに決めました」と宣言するというものですから、どちらかというと「良い知らせ」と言えるでしょう。
なお、破産手続開始決定から2週間後には、破産者の情報が「官報」に掲載されます。
[参考記事]
自己破産・個人再生で官報に載るとどうなる?
2.破産宣告と自己破産の違いはある?
「破産宣告と自己破産ってどう違うの?」と思っている方もいるようです。
破産宣告(破産手続開始決定)は自己破産と全く違うものではありませんが、自己破産に含まれる内容であるとご理解ください。
破産宣告(破産手続開始決定)を受けることで、ようやく借金を解決する自己破産の手続きがスタートすることになります。
3.破産手続開始決定(破産宣告)を得る条件
では、破産手続開始決定(破産宣告)を受けるにはどのような条件が必要なのでしょうか?
(1) 破産手続開始原因があること
まずは債務者が「支払不能」や「債務超過」の状態であることが求められます。
支払不能とは、債務者の財産・能力・信用力などをフル活用しても債務の返済ができない状態が継続する見込みであることです。
「一時的にお金がなくてたまたま返済できないが、来月になったら問題なく支払える」などの状態では、支払不能と認められません。
また、債務の額が大きくても、収入や財産が多ければ、やはり支払不能とは認められません。
借金の額だけでなく、収入や財産その他を加味して支払不能かどうかが決められるのです。
債務超過とは、マイナスの財産がプラスの財産を上回っている状態のことです。
個人の破産であれば「支払不能」が破産手続開始決定を得る条件となります。
一方、法人破産の場合は「支払不能」または「債務超過」のどちらか一方であれば、破産手続開始原因となります。
(2) 破産障害事由がないこと
これは「破産手続を始められない事情」のことです。
例えば、破産の申立てに必要な費用を裁判所に納めていない場合がこれにあたります。
また、破産手続の申立て時点や破産手続中に、同じ債務者を対象として以下の手続きが行われた場合は、破産障害事由に当たるため破産手続が行われません。
- 個人再生
- 会社更生
- 特別清算
これらの手続きと破産を同時に行うことはできないので注意してください。
(3) 破産の申立てが適法であること
破産を申立てた人に申立ての権利がなければなりません。
自分で申立てをする場合は、自分に債務があることが必要です。
法人であれば、法人の代表者などが破産の申立て権を持っています。
[参考記事]
自己破産ができない場合・失敗したらどうなる?
4.破産宣告した後の流れ
簡単ですが、自己破産は基本的に以下のような流れで行われます。
- 裁判所に申立てをする
- 破産手続開始決定(破産宣告)が行われる
- 破産管財人の選任、財産の換価・配当や債権者集会の実施(管財事件の場合)
- 破産手続の廃止(終了)が宣言される
- 免責手続が始まる
- 免責許可決定・確定→借金が0になる
破産手続は、破産者の財産を換価して配当する手続(破産手続)と、借金を支払う義務をなくしてもらう手続(免責手続)から成り立っています。
破産宣告、現在の言い方で「破産手続開始決定」は、文字通り「破産手続」をスタートするという決定です。
この決定があった後は、破産手続が進行していくことになります。
破産手続にかかる期間は、破産手続開始決定(破産宣告)が出てから約3ヶ月~半年程度でしょう。
しかし、破産者に手持ちの財産がほとんどないなどの理由により、自己破産が「同時廃止」という方法で行われる場合、破産手続は開始と同時に終了(廃止)となります。
[参考記事]
自己破産で同時廃止となるケース|同時廃止の流れ・期間・費用は?
弁護士や裁判所、破産管財人と連携しながら、破産手続や免責手続を進めていきましょう。
5.破産宣告(旧称)は破産手続きのスタートライン
以上のように、破産宣告は「破産手続開始決定」の昔の呼び方です。
破産手続開始決定があった後は、裁判所によって破産手続が進んでいきます。
破産手続が進むということは、最終的には借金がゼロになる自己破産の手続きが進むということでもあります。
問題なく破産手続開始決定を受けられるように、破産を行うときは弁護士と相談して申立ての準備をしてください。
弁護士がいないと、破産手続開始決定が出るまでに時間がかかることがありますし、何より申立ての準備そのものに手間と時間を取られてしまいます。
いち早く借金問題を解決するために、ぜひ泉総合法律事務所の弁護士にご依頼ください。