自己破産の免責確定後、新たに借金が発覚したらどうなる?
自己破産を申し立てると、価値のある財産は処分されて債権者へ配当されますが、最終的には債務全額の免責を受けることができます。
その前提として手続保障を図るため、自己破産を申し立てる際には、把握している債権者を一覧表にまとめて、裁判所に提出しなければなりません。
しかし、自己破産の免責が確定した後で、債務者も把握していなかった債権者が登場し、借金の返済を求められるケースが存在します。
(免責とは、借金が0になることです。)
この場合、把握が漏れていた借金についても、追加で免責が認められるのでしょうか。
それとも、免責が認められずに、借金を返済しなければならないのでしょうか。
1.自己破産後に借金が発覚する主な原因
自己破産後に新たな借金が発覚する原因には、さまざまなパターンが考えられます。
借金の存在をそもそも知らなかったケースもあれば、借金の存在自体は知っていながら、債権者一覧表への記載を怠るケースもあるでしょう。
[参考記事]
債権者一覧表の書き方を解説
自己破産後に借金が発覚する主な原因は、以下のとおりです。
(1) 債権者の数が多すぎて把握が困難
多重債務の状態に陥っていて、多数の債権者から借金をしている場合には、すべての借金を把握することが困難なケースもあるでしょう。
自己破産の申立てを行う前に、借金の内容や金額は当然確認しますが、その際に一部の債権者の把握が漏れてしまった場合、自己破産後に借金発覚するという事態が発生してしまいます。
(2) 滞納が長期に及んでおり債務の存在を失念していた
滞納が長期間に及んだために、債権者も半ば回収を諦めていて、請求の音沙汰がなくなっているケースもあります。
現行民法に従うと、借金の消滅時効は「請求できることを知った時から5年」(民法166条1項)ですが、2020年3月31日以前に借り入れた借金の場合は「請求できる時から10年」です。
したがって、最大で10年間、全く返済を請求されなかったとしても、消滅時効が完成しないうちに改めて請求がなされる可能性があります。
しかし、債権者から長期間返済を催促されなかった借金は、債務者本人もすっかり忘れていることがあり、その場合、自己破産後に借金の存在が発覚するといった事態が生じ得るのです。
(3) 個人間の借金で契約書を締結していなかった
家族や友人などから借金をする場合、金融機関などから借り入れるケースとは異なり、契約書を締結しないことがあります。
契約書がないとしても、お金を借りたという事実に変わりはないわけですから、家族・友人は債権者となります。
しかし、契約書がないうえに、ある程度返済を大目に見てもらっている借金の場合、債務者としても頭から抜け落ちてしまう可能性があるでしょう。
この場合、自己破産の後で借金の返済を請求され、その段階で初めて借金の存在を思い出すという事態が生じます。
(4) 債権者一覧表を作成する際にミスがあった
借金の存在は知っていたものの、債権者一覧表を作成する際、単純に事務的なミスによって、債権者の記載が漏れてしまうことがあります。
特に債務者が自分で自己破産を申し立てる場合、債権者一覧表の作成ミスが生じるリスクが高いです。
ミスがないように万全を期すためには、自己破産の申立てを弁護士に依頼することをお勧めいたします。
(5) 意図的に債権者一覧表への記載をしなかった
私怨などが原因で、意図的に債権者一覧表に債権者を記載しないケースも、少数ながら存在します。
債権者一覧表からの記載が漏れた債権者は、そのまま自己破産手続きが終了してしまうと、破産手続きによる配当を受けることができません。
しかし、後述するように、意図的に債権者一覧表から特定の債権者に関する記載を落としてしまう行為は、債務者にとって全くメリットがないので避けましょう。
2.自己破産手続き中に新たに借金が発覚した場合
裁判所に債権者一覧表を提出した後、手続きの途中で記載されていない借金が発覚した場合には、裁判所に対して債権者一覧表の補正を申し出ましょう。
手続き内での債権者一覧表の補正は柔軟に認められるため、自己破産手続きの途中で新たな借金が発覚した場合は、すぐに補正の対応をとるようにしてください。
3.免責確定後に新たな借金が発覚した場合
これに対して、自己破産の免責が確定した後の段階で新たな借金が発覚した場合には、事情が複雑になってしまいます。
この場合、債務者が借金の存在を知っていたかどうかによって、免責の可否に関する結論が異なります。
(1) 借金の存在自体を知らなかった場合|免責の対象
債務者が借金の存在自体を知らなかった場合、免責確定後に借金が発覚した場合でも、その借金は免責となります。
債権者は破産配当を受けられない不利益を負いますが、債務者が本当に知らなかったのであれば強く責任を問えないため、他の借金と同様に、免責を認めることとされているのです。
(2) 借金の存在を知っていた場合|非免責債権
これに対して、債務者が借金の存在を知っていたにもかかわらず債権者一覧表に記載しなかった場合には、その借金は「非免責債権」に該当するため、免責が認められません(破産法253条1項6号)。
記載漏れ自体が意図的ではなく、債務者の過失による場合であっても、借金の存在自体は知っていたのであれば、同様に非免責債権に該当してしまいます。
なお、債務者が借金の存在を「知っていた」かどうかは、最終的には借金の返済を請求する訴訟手続きなどにおいて、客観的な証拠から認定されることになります。
債務者の記憶から抜け落ちていたというのが事実だとしても、契約書や請求書などの書証が揃っている場合は、裁判所によって「知っていた」と認定されてしまうおそれがあるので注意が必要です。
ちなみに、特定の借金が「非免責債権」に該当したとしても、他の借金に対する免責の効力が覆されることはありません。
つまり、免責が認められなくなるのは、あくまでも非免責債権に該当する借金についてのみです。
(3) 詐欺破産罪には該当しない
債権者一覧表に、知っている借金の内容を記載しなかったとしても、その行為自体について詐欺破産罪(破産法265条1項)が成立することはありません。
詐欺破産罪に当たる行為は以下のとおりですが、債権者一覧表に知っている借金の内容を記載しない行為は、いずれにも該当しないためです。
- 債務者の財産を隠匿し、または損壊する行為
- 債務者の財産の譲渡または債務の負担を仮装する行為
- 債務者の財産の現状を改変して、その価格を減損する行為
- 債務者の財産を債権者の不利益に処分し、または債権者に不利益な債務を債務者が負担する行為
なお、債権者一覧表に借金の内容を記載しなかったことが意図的である場合にも、やはり上記の各行為に該当しないので、詐欺破産罪は成立しません。
ただし前述のとおり、債務者自身が借金の免責が認められなくなる不利益を被るだけなので、このような行為を意図的に行うことは避けましょう。
4.後から発覚した借金の返済を求められたら
前述のとおり、自己破産の免責確定後に新たな借金が発覚した場合でも、その借金の存在自体を債務者が知らなかった場合には免責が認められます。
免責が認められた借金は、これ以上返済する必要はありません。
この点は、免責確定後に発覚した借金についても同様です。
もし新たに発覚した債権者によって借金の返済を請求された場合には、破産免責を得たことを示すため、債権者に対して免責決定書を提示しましょう。
債権者に法的な知識がある場合には(金融機関や貸金業者など)、もはや法的に請求ができないことを理解し、取り立てが止む可能性が高いでしょう。
一方、個人から借金をしたような場合には、免責決定書を提示しても、構わず取り立てを続けてくる可能性があります。
また、「意図的に債権者一覧表に記載しなかったのではないか」などと、非免責債権への該当性を主張される可能性もあるでしょう。
このような場合には、法的な観点から適切に反論を行うため、弁護士にご相談ください。
5.自己破産手続きは漏れがないように弁護士へ相談を
自己破産を申し立てる場合、債権者一覧表は正確に作成しなければ、後から借金が発覚してトラブルになるおそれがあります。
そのため、申立て前の段階で十分に債権調査を行い、存在する借金をすべて債権者一覧表に記載することが大切です。
債務者自身で自己破産の申立てを行う場合、債権者一覧表の作成を含めて、事務的な手続きの面でミスが生じてしまうおそれがあります。
これに対して、弁護士にご依頼いただいた場合、重要なチェックポイントについては再三確認を行うため、手続き上のミスが発生するリスクを最小限に抑えることが可能です。
トラブルなくスムーズに自己破産手続きを利用したい方は、ぜひ一度泉総合法律事務所の弁護士までご相談ください。