個人再生 [公開日]2018年3月5日[更新日]2021年9月6日

個人再生の「清算価値」|マイホームの価値はどう算出する?

個人再生は、住宅ローンを抱えた状態であっても、マイホームを手放すことなく多額の借金を減額できるのが大きなメリットです。

しかし、個人再生では「清算価値保障の原則」があるため、住宅ローンを完済しているケースや、住宅ローンの残債務がマイホームの資産価値よりも少ないケース(アンダーローン)のときには、個人再生自体が難しい・減額後の返済額が大きくなるというリスクがあります。

では、「清算価値保障の原則」とは一体何なのでしょうか?
また、個人再生の結果に影響を及ぼし得るマイホームの清算価値はどのように調べるのでしょうか?

1.個人再生の返済額の決まり方

個人再生は、「借金の一部を減免してもらえる」手続です。つまり、個人再生の手続き終了後も残務を返済していく必要があるのです。

そして、その減免額を決する基準には、予めルールが定められています。

個人再生の手続には、①小規模個人再生、②給与所得者等再生の2つの方法があり、それぞれの方法において、再生手続き後に返済すべき金額は次の基準で決まります。

  • 小規模個人再生の場合:「最低弁済額」「清算価値」のどちらか高い額
  • 給与所得者等再生:「最低弁済額」「清算価値」「法定可処分所得の2年分」のうち最も高い額

以下、3つの基準について簡単に説明します。
(今回問題となるのは「清算価値」ですので、これについては特に詳しく解説をします。)

3つの基準の計算方法について、更に詳しくは以下のコラムをご覧ください。

[参考記事]

個人再生の最低弁済額|月々の支払いはいくらになるの?

(1) 最低弁済額

最低弁済額は、民事再生法231条2項3号・4号であらかじめ決められています。

債務の額 最低弁済額
100万円未満 債務の全額
100万円以上500万円未満 100万円
500万円以上1,500万円未満 債務額の1/5の額
1,500万円以上3,000万円未満 300万円
3,000万円以上5,000万円以下 債務額の1/10の額

なお、個人再生は、手続の対象となる債務(再生計画に基づいて返済する債務)が5,000万円を超える場合には利用できません(民事再生法231条2項2号)。

(2) 清算価値

個人再生は、債権者(お金を貸している側)の権利を大きく制限する手続です。
そのため、債務の減免は慎重・公正に行われる必要があります。

例えば、個人再生よりも自己破産した方が債権者への配当が多くなるようであれば、「破産した方が多く配当を得られるのに…」という債権者に借金の減額を強いる正当性がありません。

そのため、個人再生では、「仮に個人再生を利用した時点で債務者が自己破産したならば、債権者に配当されるであろう金額」よりも多い金額を返済する再生計画案の提出が求められるのです。

この「個人再生のときに破産すれば債権者に配当されるであろう金額」のことを「清算価値」と言います。

例えば、個人再生をする人が有価証券90万円と50万円の価値がある車を持っている場合、清算すれば(売れば)140万円入手できるということですから、その人の資産の清算価値は140万円となり、個人再生をしても最低140万円は弁済しなければならなくなります。

(3) 法定可処分所得の2年分

給与所得者等再生の場合には、法律が定める計算方法にしたがって算出された「法定可処分所得の2年分」も返済額を決する基準の1つとなります。

可処分所得とは、債務者の手取り収入から税金や社会保険料等を引き、さらに「債務者およびその扶養を受けるべき者の最低限度の生活を維持するのに必要な費用(住んでいる地域や債務者の家族構成などによって異なります)」を引いた金額です。

実際には、法定可処分所得の2年分の金額が最も高額となるケースが多いため、給与所得者等再生ではなく小規模個人再生が選択されるケースがほとんどです(債権額の過半額の債権者が不同意にする意向を持っている場合を除く)。

2.不動産の清算価値が問題となる理由

冒頭に述べたとおり、住宅ローンを完済している場合や、住宅ローンの残りが少ない場合には、清算価値が高くなることがあります。

その場合には、「個人再生では借金が減額されない(個人再生ができない)」「返済額が増える」こともあります。

完済しているケースでは、不動産の査定額がそのまま清算価値として計上されます。
アンダーローンのケースでは「査定額からローン残債務を差し引いた額」が計上されます。

不動産は高価な資産ですので、この不動産の価値を含めることで清算価値が跳ね上がり、とても返済できる減額率にはならないケースが多いのです。
(仮に、800万円の借金がある人が、ローン完済済みで2000万円の清算価値があるマイホームを持っていた場合、個人再生をしても借金は1円も減りません。)

したがって、不動産を保有しているときには、清算価値の算出はとても重要な作業です。

なお、個人再生の場合、不動産の全部事項証明書と原則2社以上の不動産業者による査定書の他に、住宅ローン契約書、住宅ローン償還予定(返済計画)表、不動産の固定資産税評価証明書の提出が必要になります(裁判所によっても異なります)。

3.不動産の清算価値の算出方法

不動産の評価額(清算価値)には、「固定資産税評価額」「実勢価格」「路線価(土地のみの場合)」があります。

固定資産税評価額が最も低く、実勢価格が最も高いことが一般的です。
ただし、評価後に大幅な地価変動があった場合などでは、固定資産税評価額が最も高いというケースも有り得ます。

(1) 固定資産評価額証明書を取得する

固定資産税評価額証明書は、市区町村やその出張所、あるいは証明書発行コーナーで発行してもらえます。

固定資産税評価額証明書の発行には、所定事項が記載された固定資産証明等請求書のほか、本人確認書類(運転免許証や健康保険証)が必要です。
本人以外が請求するときには、委任状も必要となります。

手数料は市区町村によって異なりますが、1通400円程度です。

郵送で請求する場合には、固定資産証明等請求書、本人確認書類の写し、返信用封筒、手数料分の定額小為替を同封して市区町村に郵送します。

固定資産税評価額は、市区町村の役人が評価基準に基づいて決定します。
また、評価は3年に1度しか行われませんので、必ずしも個人再生を申立てる時点の実勢価格と合致しているわけではありません

(2) 専門業者に査定を依頼する

より正確に査定する(実勢価格を査定する)には、専門の業者に依頼する必要があります。

不動産業者には、「無料査定」を行ってくれる業者も多く存在しますので、何箇所かに依頼をしてみることをお勧めします。

原則から言えば、「実勢価格」に基づいて清算価値を算出することが、最も公平な算出方法です。

一般的には、実勢価格よりも固定資産税評価額の方が低いことの方が多いでしょう。

(3) 事案に応じて適切に選択する必要

「どちらの方法で査定するか」は、実際のケースによって判断が異なります。

たとえば、東京地方裁判所での個人再生では、不動産業者の査定書が2通必要となります。

しかし、個人再生が利用されるケースは、「オーバーローンが明らか」なケースがほとんどです。
そのため、不動産の査定は「固定資産税評価証明書だけでよい」という裁判所もあります。

その場合であっても、固定資産税評価額が高すぎるケースでは、不動産業者に査定を依頼することがあります。

また、査定結果によってはオーバーローンかアンダーローンに違いがでるような場合には、通常「固定資産税評価証明書だけでよい」裁判所であっても、「不動産業者の査定書」の提出が必要となることもあるでしょう。

なお、「知り合いの不動産業者に依頼して査定額を不正に操作する」というようなことが発覚すれば、個人再生が認められないこともあります。
したがって、不動産の査定は、必ず弁護士の助言を受けて行うべきでしょう。

4.個人再生なら泉総合法律事務所へ

マイホームの清算価値は、市区町村の固定資産税評価額等や不動産業者の査定等、第三者専門家による評価によって決まります。「買った金額はいくらだった」「私はこれくらいの金額だと思う」という金額を申告しても、まず認められません

また、価値の評価方法も、借金やマイホームの状況によって、固定資産税評価証明書による場合と不動産業者の査定による場合を適切に選択する必要があります。

個人再生の手続は、債務整理の中で最も複雑です。個人再生の利用に際して何かご不安な点がありましたら、泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。

当事務所には、個人再生による借金問題の解決実績が豊富にありますので、安心してお任せいただけます。

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