国民健康保険の滞納で差し押さえ!?督促状が届いたら早めに対応を
日本では「国民皆保険制度」が採用されています。つまり、国民全員が何らかの健康保険に加入しなければなりません。
社会保険に加入していない、自営業やフリーランス、無職などの方は、市町村の運営する「国民健康保険」に加入することになります。
国民健康保険に加入すると、毎年国民健康保険料がかかります。金額は所得や市町村によって大きく変わりますが、最低で年額5万程度、最高額は年額80万円程度にもなります。
この国民健康保険料を滞納し続けていると、いずれ市町村から督促状が届きます。
督促状が来ても放置していると、預貯金や給料などを差し押さえられてしまうリスクが高くなります。
今回は、国民健康保険料を滞納し続けた際のリスクの中でも「差し押さえ」に焦点を当て、差し押さえられるまでの流れ、差し押さえられた場合に財産はどうなるのか、どう対応したら良いのかなど、正しい対処方法を解説します。
国民健康保険料の督促状が届き、どうしたら良いかお悩みの方は、ぜひご覧ください。
1.保険料滞納から差し押さえまでの流れ
国民健康保険料を支払わずに放置していると、医療保険制度を利用できなくなって医療費が全額自費負担となってしまったり、財産を差し押さえられたりするリスクが発生します。
では、国民健康保険料を滞納すると、その後の「差し押さえ」までは具体的にどのような流れになるのでしょうか?
(1) 市町村から督促を受ける
国民健康保険料は、1年にわたって分割払いをすることができますが、分割金のそれぞれに「納期」が定められています。
納期までに支払いをしなければ、市町村から督促されます。
納期に送れると、まずは督促状が届くケースが多数です。
督促状が届いても無視していると、電話がかかってきたり、市町村の担当者が自宅を訪ねてきたりするようです。
なお、国民健康保険料の場合、督促状が発送されてから10日が経過すると、市町村は滞納者の財産をいつでも差し押さえることができることになっています。
つまり、実際に差し押さえられることは稀ですが、法律上は督促状が届いたらいつ差し押さえを受けてもおかしくない状態になるのです。
(2) 短期被保険者証が交付される
国民健康保険料を滞納して半年が経過すると、今まで交付されていた健康保険証を使えなくなって「短期被保険者証」が交付されます。
これは通常よりも有効期限が短い健康保険証です。
1~6か月などの短期で期限が切れるので、そのたびに市町村役場で更新が必要です。
(3) 資格証明書が交付される
滞納してから1年が経過すると、短期被保険者証も交付されなくなり、代わりに「資格証明書」が交付されます。
資格証明書は健康保険証ではないので、医療機関で提示しても医療費が減額されず、窓口では10割負担となります。
後に市町村に申請をして、市町村の負担分(通常は7割)を返金してもらう必要があります。
(4) 保険資格を喪失する
滞納してから1年半が経過すると、資格証明書すら交付されなくなって完全に保険資格を喪失します。健康保険に加入していない状態なので、医療機関では常に全額自費負担しなければなりません。
また、市町村からは「催告書」といって強く支払いを請求する最終通告書のような書面が届きます。
催告書には「支払いが無い場合には財産を差し押さえます」などと書かれているケースが多数です。
(5) 差し押さえを受ける
催告書が届いたら、現実に差し押さえが行われる可能性が高くなります。
差し押さえの対象になるのは、以下のような財産や債権です。
なお、家族名義の財産は差し押さえされません。差し押さえの対象となるのはあくまで滞納者本人の名義の財産のみになります。
- 給料
- 預貯金
- 不動産
- 保険(解約返戻金のあるもの)、個人年金
- 車などの動産類
この他、健康保険滞納のデメリット・リスクについて、詳しくは以下のコラムをご覧ください。
[参考記事]
国民健康保険料(国保)を滞納した場合のデメリット
2.財産や給料を差し押さえられるとどうなるのか
実際に、給料や預貯金、不動産などを差し押さえられたら、どのような影響があるのでしょうか?
(1) 給料
給料を差し押さえられると、毎月の給料やボーナスから生活に必要な最低限の分を除いた部分が市町村に払われてしまうため、手取り額が大きく減る可能性があります。
具体的に、源泉徴収の所得税と特別徴収の住民税、社会保険料等と「生活保障費(最低生活維持費)」「体面維持費」という費用を引いた金額が差し押さえ対象です。
健康保険料滞納による給与差し押さえの場合、一般の債権者が民事執行によって差し押さえをするときとは計算方法が異なります。
一定の控除額があるため、給与額の多い人は多額のお金を差し押さえられますが、給与額の低い人の場合には差し押さえ不能となる可能性もあります。
(2) 預貯金
預貯金を差し押さえられると、まず該当の銀行口座が凍結されます。
預金者は出金や振込などを一切できなくなり、口座引き落としも不能となります。クレジットカード代金や光熱費なども落ちないので、知らないうちに滞納状態になってしまうかもしれません。
その後、滞納分を上限とした預貯金が全額市町村に払われるので、滞納額>預金残高の場合、預金残高は0円になってしまうでしょう。
[参考記事]
銀行口座が差し押さえられた!どうすれば良い?
(3) 不動産・動産(車など)
不動産が差し押さえられると、「差押」や「仮差押」などの登記が行われて、その後は債務者が自由に不動産の処分をできなくなります。
具体的には、売却や抵当権設定などが一切できない状態にされます。
[参考記事]
不動産の差し押さえを受けるケースとは?
また不動産や車、宝飾品や時計などの動産類が差し押さえられると、その後「公売」という手続きにかけられます。
これは、一般から入札を募ってもっとも高い価額で入札した人に財産を売却する手続きです。
手続きが進んで落札されると財産は滞納者の手元から失われます。自宅を公売にかけられたら、家が失われるので賃貸住宅などを探して引っ越しをしなければなりません。
[参考記事]
動産執行が行なわれそうな場合、どう対応すべきか?
3.督促状が届いた場合の対処方法
国民健康保険料を滞納してしまったとき、差し押さえを回避して解決するにはどうしたら良いのでしょうか?
(1) 分割払いの相談をする
まずは、国民健康保険料の分割払いを検討しましょう。
市町村側も、なるべくなら差し押さえよりも任意で国民健康保険料の支払いをしてもらえた方が良いと考えているものです。
滞納者に真摯な支払い意思があり、現実的な支払い計画もある場合には、分割払いの相談に応じてくれるケースが多数です。
滞納しそうという前段階ではもちろんのこと、国民健康保険料を滞納して督促状が届いたり電話がかかってきたりしているなら、一度役所に連絡を入れて分割払いの相談をしてみてください。
(2) 減免措置などの検討
失業などによって著しい減収があった場合や災害に遭った場合などには、健康保険料の減免を受けられる可能性があります。
困ったときには放置せず、一度役所に相談に行きましょう。
病気やけがなどでどうしても働けない場合には、生活保護を受給できる可能性があります。 生活保護受給者となった場合には健康保険料も免除され、生活保護受給中は健康保険料の納付義務もありません。福祉事務所などに相談に行きましょう。
(3) 他の借金問題を解決
国民健康保険料以外にも借金を抱えている方は、他の借金問題を解決すると国民健康保険料を払える余裕が出てくる可能性があります。
借金や滞納家賃、滞納光熱費や電話代などは「債務整理」で解決できます。
中でも、「自己破産」をすれば、ほとんどの負債を0にすることも可能です。
国民健康保険料は債務整理の対象になりませんが、他の借金を抱えているなら、家計全体の問題を債務整理で解決できる可能性があるので、是非とも一度弁護士までご相談ください。
[参考記事]
国民健康保険が払えない時はどうすればいい?
4.保険料滞納でお悩みの方はお早めに弁護士へ
泉総合法律事務所では、督促状が届いて慌てて相談に来られる方はもちろん、既に差し押さえを受けてしまったという方についても、多く借金問題を解決して参りました。
早めに対応すればその分選択肢が多くなります。どうか諦めずに、借金問題の解決実績豊富な弁護士へご相談ください。