保証債務とは?保証人が抱えるリスクと請求回避の方法
保証債務という言葉を聞いたことはありますか?保証債務は保証人になっている人にとっては特に重要で、その内容を詳しく知っておく必要があります。
ここでは、保証債務の意味、保証人が抱えるリスク、保証人が請求を回避できる条件について解説します。
また、保証人として借金を抱えてしまったときの解決法もお伝えします。
1. 保証債務とは?
保証債務とは、債務者が債務を履行できない時に、保証人が債務者に代わって債務を履行することです。
分かりやすく言えば、借金をした本人が返済できなくなったとき、保証人がその支払いをすることを意味します。
自分が借金をしていなくても、家族や友人の保証人になっているという人は多いと思います。
保証債務の特徴は、ある日突然忘れた頃に莫大な請求がくることで、その支払ができない時は生活が破壊されます。
そのため、保証人になって欲しいと頼まれても、親切心だけで応じるのは絶対に避けなければなりません。
もし本人が返済できなくなったときに、どのような事態になるのか理解して、万が一のときには自分が責任を取れると思った場合のみ応じましょう。
ちなみに、借金は家などの財産を担保にすることがあり、これは物的担保と呼ばれます。
それに対し、保証人の財力を担保にする場合は人的担保と呼ばれ、保証債務は人的担保による債務履行を指しています。
2.保証債務の成立要件
保証債務には以下の成立要件があります。
(1) 主たる債務があること
保証債務が成立するには、保証を受ける債務=主たる債務があることが条件です。
主たる債務が返済されるなどして消滅した場合、保証債務も同時に消滅します。
(2) 契約が成立していること
保証債務が成立するには、債権者と保証人との間で保証契約が成立していることが条件です。
通常、保証人は債務者が依頼するので、保証人は債務者と契約をしていると思いがちですが、債務者と保証人の間で交わされるのは「保証委託契約」です。
実際に、保証人が保証債務の契約を交わす相手は債権者で債務者ではありません。その契約関係が成立していることが前提となります。
(3) 書面の記録が必要
保証債務は書面での記録が必要です。コンピューター上の電磁記録でもOKです。
書面にするのは、あとで言った、言わないとならないようにするためです。仮に保証契約が口頭でなされたとしたら、そうしたトラブルは不可避です。
また、保証人として借金を肩代わりするのは非常に大変なことです。
その結果の重大性を考えると、保証人は熟慮の末に名を連ねるべきということから、2004年の民法改正により書面記録が必須となりました。
その他、保証人となるには保証能力があることも条件です。保証能力とは財力のことで、無職の人、住所不定の人を保証人にすることはできません。
また、未成年は親の同意がないと保証人にはなれないので、一般的に業者が未成年者を保証人と認めることはありません。
3.保証人が債権者からの請求を回避するには?
債務者が支払い不能に陥ったとき、保証人は保証債務を支払わなければなりません。
しかし、保証人になっただけで、借金の尻ぬぐいを無条件でしなければならないのは、余りにも酷な話です。
そのため、保証人は一方的に弱い立場に置かれないよう、以下の権利が認められており、債権者からの請求に対抗することができます。
(1) 催告の抗弁権
催告の抗弁権とは、債権者が保証人に支払い請求をしてきたときに、「先に債務者に請求をして下さい」と主張できる権利のことです。
しかし、催告の抗弁権は催告をするだけでクリアできるので、債権者にとっては殆ど問題になりません。ただ、催告の抗弁権により保証人は一時的に責任を回避することが可能です。
また、債務者が行方不明になって連絡がつかない場合、破産手続きが開始している場合には、保証人は催告の抗弁権を主張することはできません。
(2) 検索の抗弁権
検索の抗弁権とは、債権者が保証人に請求をしたときに「債務者はまだ財産があるので、請求は債務者にして下さい」と主張できる権利です。
しかし、検索の抗弁権を行使するときには、保証人が債務者の財産を立証しなければなりません。
例えば、ある債務者Aが債権者Bに対して90万円の借金をしており、その支払いができなくなったとします。保証人は債務者Aの知り合いのCとします。
このとき、保証人Cが検索の抗弁権を主張し、債務者Aに50万円の預金があることを立証した場合は、債権者BはAに50万円を請求すべきであり、支払に応じない場合は、Aの銀行口座を差押えして債権の回収をします。
このとき保証人Cが負うべき保証債務は差額の40万円だけです。
また、債権者Bが取り立てを迅速に行わなかったことにより、債権者Dが銀行口座を差し押さえて50万円を回収した場合、その責任は債務者Bが負わなければなりません。
この場合も、保証人Cが負うべき保証債務は40万円だけで、それ以上請求されることはありません。
(3) 分別の利益
保証人が複数人いる場合は、保証債務は保証人の頭数で割った額になります。
90万円の債務に対し保証人が3人いる場合、仮に保証人に請求がいったとしても、各30万円ずつ負担すればよいことになります。
(4) 求償権
求償権は保証人が肩代わりした借金を、主債務者に請求できる権利です。
催告の抗弁権、検索の抗弁権、分別の利益は、債権者から保証人に請求をした時点で発生するのに対し、求償権は保証人が支払いをした後に発生します。
しかし、求償権があるからといって、肩代わりしたお金が戻ってくるとは限りません。
そもそも債務者は支払能力がないから保証人に迷惑をかけている訳で、保証人が請求をしても支払いして貰える可能性は低いと考えられます。
4.通常保証以外の特殊な保証
ここまで解説した保証債務はいわゆる「通常保証」の内容です。
しかし、保証契約は通常保証以外にもいくつかあり、特殊な契約については特に注意が必要です。
(1) 継続的保証
継続的保証は一定期間だけ保証するというもので、信用保証、身元保証などが該当します。
身元保証などは就職などのときに必要で、通常は親兄弟など親族がなりますが、同居親族以外の第三者と指定されることもあります。
保証期間は基本的に3年、長くても5年程度です。
身元保証に関しては債務保証でないことに加え、就職のお祝いムードもあり、気軽に引き受けるケースも多いのですが、本人が雇用先で損害を与えた場合は保証人が責任を負わされる可能性もあります。
サインをするときには、その点を十分承知をしておきましょう。
(2) 共同保証
共同保証は保証人が2人以上いるケースです。
仮に主債務者の借金が300万円だった場合、共同保証人が2人なら、それぞれ150万円ずつ保証することになります。
(3) 連帯保証
保証人になるときに、最も気を付けなければならないのは連帯保証です。連帯保証人は保証人に比べて重い責任を負うからです。
保証人には上述したように、債務者が支払をしないときにも抗弁権、求償権などで債権者に対抗することができます。
しかし、連帯保証人にはこうした権利は認められていません。現代では、債権者による保証人への請求が限定されないよう、連帯保証契約をするのが一般的です。
連帯保証人は基本的に債務者と同じ立場に立ち、債務者が払えないときは責任を負い、支払を求められた場合は一括払いをしなければなりません。
また、連帯保証人はやめることもできないので、債務者が個人再生や自己破産で返済義務がなくなったとしても、免責された分の借金は連帯保証人が支払義務を負います。
①連帯保証人と保証人の違いは?
・連帯保証人は抗弁権がない
連帯保証人には催告の抗弁権や検索の抗弁権がありません。
そのため、債権者から請求をされたら一切の反論ができず、いきなり請求されたとしても、無条件で保証債務の支払いに応じなければなりません。
・連帯保証人は分別の利益がない
連帯保証人には分別の利益もありません。
仮に100万円の負債に対し、保証人が2人いた場合は分別の利益により50万円ずつ負担すればOKですが、連帯保証人の場合は複数いても各100万円ずつ支払う義務を負います。
②連帯保証と債務整理
連帯保証人になると、債務者が支払い不能になった場合、保証債務の一括払いを求められます。
そのため、もし、連帯保証人として保証債務の支払いができない場合は、強制執行される前に債務整理することを検討しましょう。
債務整理には主に3種類あり、任意整理、個人再生、自己破産のうちのいずれかの制度を選びます。
・任意整理
任意整理は借金を減額する制度で、将来利息の支払いをカットする形で借金を減らし、手続き後は残りの元金を3~5年かけて返済します。
・個人再生
個人再生は借金を1/5程度まで減額できる制度で、比較的額の大きい借金を抱えている人に適しています。
安定的な収入はあり、家や車などの財産も手放したくないが、保証債務が莫大で支払えないという場合には個人再生で減額することをおすすめします。
個人再生後は3~5年かけて残債の支払いをしていきます。
・自己破産
自己破産は借金を全額免除してもらえる制度です。代わりに家や車など資産価値の大きい財産は没収されます。
連帯保証人になったことで自己破産までするのは、やりきれない思いですが、減額されても支払いの目途が立たない場合は自己破産せざるを得ません。
自己破産では財産は没収されますが、身の回り品や99万円までの財産は持っていることができます。
賃貸住宅に住んでいて、高価な車、多額の預貯金がないという場合は、実際にはそれほど持っていかれるものもないので、任意整理や個人再生より自己破産する方が、メリットが大きい場合もあります。
債務整理をすると手続き後5~7年間新たに借り入れはできません。保証人、連帯保証人になると場合によっては大きな損害を被ることがあります。
もし保証人として印鑑を押して欲しいと頼まれても、契約内容をよく見て、よくよく考えた上で結論を出すことをおすすめします。
5.まとめ
保証人は債権者からの請求に対抗することができますが、連帯保証人にはその権利がありません。保証人になる際は契約内容をよく確認し、サインをするかどうか慎重に判断しましょう。
もし、すでに保証債務の請求がきて、どうしても支払えない場合はすぐに対処する必要があります。
泉総合法律事務所は保証人の方の債務整理の実績も豊富です。現在、保証債務のことで困っている方は、どうぞご一報ください。それぞれの方の状況に合わせて、ベストの解決方法を提示させて頂きます。
相談は何度でも無料ですので、お気軽にご連絡ください。