住民税の滞納を続けて「差押予告書」が届いたらどうすればいい?
住民税(市民税・都民税・県民税)を滞納し続けていると、そのうち市役所や区役所などから督促状が届きます。
その督促状も放っておくと、次に「催告書」が送られ、これも無視していると「差押予告書」が届き、最終的に給料・預貯金などの資産を差し押さえられる危険性があります。
上記のように、住民税を滞納したときに送られてくる書類には「督促状」「催告書」「差押予告書」などいくつかの種類があります。
今回は、住民税を滞納し続けてしまった場合の督促・催告・差し押さえの流れと、それらに対する対処方法を解説します。
なお、「住民税を払えない場合の対処法」につきましては、以下のコラムをご覧ください。
[参考記事]
住民税を払えない!滞納リスクを避けるための対処法
1.住民税を滞納した場合の差し押さえまでの流れ
早速ですが、住民税を支払わずに放置していたら、どのような流れになるのでしょうか?
役所からの督促通知書類が「いつ届く」のかも合わせてみていきましょう。
(1) 督促状が届く
住民税を滞納すると、比較的早期の段階で「督促状」が届きます。滞納後20日以内に最初の督促状が届くケースが多数のようです。
督促状が来た段階できちんと支払いをすれば、それ以上の追及はありません。
督促状には、以下のように法律上も重要な意味があるので、放置しておくと重大な事態に陥る可能性が高まります。
地方税法331条1項
市町村民税に係る滞納者が次の各号の一に該当するときは、市町村の徴税吏員は、当該市町村民税に係る地方団体の徴収金につき、滞納者の財産を差し押えなければならない。
一 滞納者が督促を受け、その督促状を発した日から起算して十日を経過した日までにその督促に係る市町村民税に係る地方団体の徴収金を完納しないとき。
つまり、自治体から督促状が届いた場合、役所が通知書を発送した日から10日以内に滞納税を全額支払わない限り「いつなんどき差し押さえをされてもおかしくない状態」になってしまうのです。
とはいえ、実際には督促状が来た後すぐに財産などが差し押さえられるケースは少数です。実務上はその後も自発的な住民税の納付を促されます。
(2) 催告書が届く
催告書は、督促状とは異なり、送られてくるときは「赤い封筒」に入っていて、督促状よりも目立つ外観になっているケースもあります。
自治体としては、本来は督促状さえ送ったら滞納者の財産を差し押さえられるのですが、できれば納税者から任意に支払わせたいので、催告書などでさらなる督促を行います。
また、市区町村の職員から電話をかけられて口頭で支払うよう説得されたり、職員が実際に家にやってきて支払いの約束をさせられたりする例もあるようです。
このような請求方法は、一般的に、滞納後1~3か月程度続きます。
ただし、滞納後、数年が経過し、忘れた頃になって催告書が突然届く場合もあるようです。
(3) 差押予告書が届く
督促状も催告書も無視し続けていると、ついには「差押予告書」が届きます。
差押予告書が届くのは、住民税を滞納してから早ければ3か月程度ですが、遅い場合には滞納から1年あるいはそれ以上の期間が経過してから送られてくる例もあります。
この差押予告書が届いたとしても、住民税をここまで滞納し続けた人が、いきなり請求通りに支払いをすることは困難でしょう。
本人の意思に拘らず、何も出来ずに放置するしかないケースも多いのが実情です。
そうなると役所は、滞納者の財産調査や身辺調査を行なった上で、本当に滞納者の財産や給料を差し押さえてきます。
しかも、この差し押さえは、一般的な差し押さえとは異なり、前提として債務名義(判決、支払督促、裁判上の和解調書など)を取得しておく必要がありません。
2.差し押さえの対象となる財産
差し押さえの対象となるのは、主に、以下のような財産です。
- 毎月の給料の一部
- 銀行口座の預貯金
- 有価証券や債券
- 車
- 不動産
- 動産類
最も多いのが給与差し押さえです。税金債権者は勤務先等を把握しています。給料が差し押さえられると、毎月の給与から一定額が天引きされてしまうだけでなく、勤務先に税金の滞納がバレてしまいます。
預貯金が差し押さえられたら、預けてあるお金を返済に足るまで持って行かれてしまうでしょう。
不動産や車が差し押さえられたら、公売にかけられ、第三者へと転売されます。
[参考記事]
借金滞納で給与差し押さえ!解除・回避のために必ず知っておくべき事
なお、延滞期間が長くなれば、それに応じて高額な延滞税も加算されます(納付すべき税額の14.6%[年率])。
「たかが住民税」と軽く考えていると、大切な資産や給料を差し押さえられて大変な目に遭うので、なるべくなら滞納しないこと、もし滞納してしまったときは、早期に完納に向けて役所と話し合うことが重要です。
3.差押予告書が届いた場合の対応方法
では、住民税を滞納した結果、役所から督促状・催告書・差押予告書などの書類が届いた場合、そこからどう対応すれば良いのでしょうか?
もちろん、請求通りに一括払いするのがもっとも望ましいのですが、現実的にそれが出来ないケースも多いでしょう。
一括で支払えない場合には、役所に連絡をして分割払いの相談をすべきです。
役所は「支払い意思があり実際に支払える人」には、分割払いや支払いの猶予を認めてくれるケースが多いです。その場で支払える数千円だけでも支払って実績を作り、残りを分割払いするなどの方法で誠意を見せることもできます。
(逆に、支払う意思がないと感じられたり、対応に誠実さを感じられなかったりすると、分納自体を断られてしまうこともあるでしょう。)
分割払いの約束ができれば、少なくとも約束通りに支払っている限りは、差し押さえを受けることはありません。
以下のような条件に当てはまる場合、住民税を減免してもらえる可能性が高いです。
・生活保護を受給している
・失業、失職、休業などにより収入がなくなった、あるいは著しく減少している
・病気や障害で医療費がかかり、生活が困難な状態
・災害に遭って生活が困難となっている
上記のようなときには役所に相談に行って事情を話せば、差し押さえを回避できる可能性が高くなります。心当たりのある方は、役所に連絡して相談に行きましょう。
また、もし滞納税以外の借金があって、そのせいで税金を含めた全体の支払いが苦しい状況ならば、まずは「債務整理」により借金を整理して原資に余裕を作り、そこから住民税を分割で支払うという解決方法があります。
[参考記事]
債務整理とは?わかりやすく解説!|方法・種類・メリット
4.住民税を支払えない原因が借金なら弁護士へ相談を
一般の借金の場合は、「債務整理」をすれば、負債が減免されます。
任意整理や個人再生であれば支払額の減額を受けられますし、自己破産したら借金は全額免除されます。
しかし、住民税などの税金や健康保険料、年金保険料については債務整理の対象になりません。
その場合でも、税金以外の借金を債務整理することで、税金を支払う余裕が出る可能性はあるでしょう。
また、実際に車や不動産などの差し押さえを受けてしまっても、今後確実に分割払いが履行出来るならば、差し押さえを解除してもらえる可能性もあります。
具体的にどのように対応するのが最適かは、専門家である弁護士が事情を聞いて判断するのが確実です。
住民税、固定資産税、所得税などの税金支払いが困難でお困りの方で、借金問題にもお困りの方は、どうぞお気軽に弁護士までご相談ください。