給料ファクタリングによる破産も弁護士へ相談できる?
近年、給料ファクタリング(給与ファクタリング)による破産やトラブルが続発・深刻化しており、弁護士会が注意を呼びかけています。
すぐに現金が必要な場合に便利な「給与ファクタリング」ですが、これの利用により本来受け取る賃金よりも少ない金額しか受け取れなくなるため、経済的生活がかえって悪化し、生活が破綻するおそれもあります。
まだ給与ファクタリングを利用したことがない人は、転ばぬ先の杖として。
既に給与ファクタリングを利用している人は、トラブルを予防するために。
そしてトラブルの渦中にいる人は、そこから抜け出すために、本記事の内容をぜひ参考にしてください。
1.給料ファクタリングの仕組み
本来の「ファクタリング」とは、中小企業等が売掛金債権をできるだけ早く現金化するための方法です。
商取引では、いつも現金払いというわけではなく、物やサービスを提供してから少し経った後に支払日が来ることが多くあります。「掛け取り引き」と言われている支払い方です。
例えば、米屋AがレストランBに毎日お米を納品している場合、毎回現金払いでやりとりをするのではなく、毎月末までにAが納品したお米の代金を、Bが翌月末にまとめて払う、などという方法で取引が行われることがあります。
つまり米屋Aは、お米を提供してから実際に入金されるまでの間にタイムラグがあるのです。このタイムラグの間に資金繰りが悪化することがあるため、経営基盤が強くない中小の事業者にとっては頭の痛い問題となっています。
そこで登場するのがファクタリング業者です。ファクタリング業者は事業者から売掛債権を買い取って現金を渡します。事業者はその現金を運転資金にして、営業を続けられるというわけです。
ファクタリング業者は売掛債権を買い取るときに手数料を徴収しているので、その分が利益となります。
給料ファクタリング(給与ファクタリング)は、個人が勤務先に対して持つ給与債権を利用したファクタリングです。
一般的な労働契約では、「毎月何日締め、翌月何日払い」というように働いてから実際に給与が支払われるまでにしばらく時間がかかります。
その間、労働した側は勤務先から給与をもらえるという債権を持っていますし、勤務先は労働者に給与を支払わなければならない債務を負っています。
この給与債権をファクタリング業者に買い取ってもらって現金化できるのが、給与ファクタリングの特徴です。
例えば、給料を毎月25日に受け取るサラリーマンが15日に緊急でお金が必要になった場合、給与ファクタリング業者に将来の給与債権を譲渡することで、給与ファクタリング業者から現金(給料額から手数料を引いた金額)を受け取ることができます。
サラリーマンは、実際に会社から給料を受け取った25日以降、その給料を弁済額として給与ファクタリングに支払うのです。
2.給与ファクタリングの問題点・違法性
「手数料が必要とはいえ、給料日前に現金が必要な人にとって給与ファクタリングはおすすめなシステムなのでは?」と思う方もいるかもしれません。
しかし実際には、給与ファクタリングのせいで経済的に破綻している人が多くいるのです。
(1) 給与ファクタリングは貸金業に該当する
経済的に破綻してしまうのは、、手数料が高額であることが主な原因です。
悪質な業者によっては「すぐに10万円渡す代わりに、10日後の給料日になったら15万円支払ってください」と請求するところもあるようです。
給与ファクタリングは債権譲渡の形をとっているため、過去は貸金業法や利息制限法、出資法などの法律の適用外であり、業者が高額な手数料を設定しても野放し状態となっていました。
しかし給与ファクタリングは実質的に、「給与ファクタリング業者が利用者にお金を貸し、一定期間経過後に利用者が給与ファクタリング業者に利息をつけて返済する契約」という見方ができます。
そのため「給与ファクタリングは貸金業に該当するのでは?」という論争があり、2020年3月5日には、金融庁が「給与ファクタリングは貸金業に該当する」という見解を示しました。
この影響のためか、同年3月24日に東京地裁が、給与ファクタリングの事案2件について金融庁と同じ判断を下しました。
[参考記事]
違法な給料ファクタリングに注意|最新の金融庁見解や裁判例を紹介
給与ファクタリング業者が貸金業に該当するという論調が主となっているため、給与ファクタリング業者は以下のような制限を受けます。
これに違反する場合、違法に営業をしている「闇金」ということになります。契約が無効となるケースがあるほか、刑事処罰の対象にもなり、懲役10年以下または3000万円以下の罰金、あるいはその両方が課される場合があります。
貸金業者として登録しなければならない
貸金業法に則って、給与ファクタリング業者は正式に「貸金業者として」登録を受けなければなりません。
貸金業法の適用を受けるため、より行政や司法の監視の目が届きやすくなります。
出資法が適用される
給与ファクタリングが債権譲渡ではなくお金の貸し借りであると判断されれば、出資法の対象にもなります。
出資法の上限金利は年20%であるため、手数料と称した高額な料金にも規制がかかると考えられます。
(2) 返済ができないと業者に脅される
そして利用者が支払えない場合、「給与債権の譲渡を会社にバラしますよ」と脅す業者も存在します。
労働基準法では、「給与は労働者に直接支払う」ことになっています。
給与債権を譲渡された人に給与を支払うのは禁じられており、雇用契約書に給与債権の譲渡禁止条項が明記されていることもあります。
もし給与債権を譲渡した場合、この条項に違反してしまうため、会社が労働基準法違反となってしまう可能性があります。労働基準法違反のきっかけを作った従業員に、会社側から何らかのペナルティを課せられてもおかしくありません。
業者はこれを見越して脅してくることがあるのです。
誰にも相談できないままファクタリング業者に無理な支払いを続け、結果的に経済破綻をする例が後を絶ちません。
3.給与ファクタリングで生活が苦しい場合の対策
上記のような危険性があるため、給与ファクタリング業者の利用は避けるに越したことはありません。
では、過去に給与ファクタリングを利用したことがあり、現在支払いで苦しんでいる場合はどうすれば良いのでしょうか?
(1) 過払い金返還請求
一般的な貸金業者との契約では、利息を多く払い過ぎていた場合、超過分を貸金業者から返してもらえます。いわゆる「過払い金返還請求」です。
給与ファクタリング業者が貸金業者に該当するのであれば、支払った手数料は利息に相当すると考えられます。
その利息が実質的に年20%を超える場合、理論的には超過した分を返してもらえるのです。
既に金融庁や裁判所が「給与ファクタリング業者は貸金業者である」という見解を出しているので、この理論が認められる可能性は高いと思われます。
このため、弁護士を通じて給与ファクタリング業者に請求すれば、過払い金を返してもらえる可能性があります。
まずは弁護士に確認を取ることをおすすめします。
(2) 給与ファクタリング契約の無効を主張
ファクタリング業が貸金業に該当するにも関わらず、業者が貸金業者として登録を受けていないなどの場合は、違法な契約であるとして契約自体を無効にできるかもしれません。
この場合は下記の「不法原因給付」も合わせて主張することになるでしょう。
(3) 不法原因給付を主張して代金の返還を拒否
契約が無効になった場合、契約前の状態に戻すために受け取った品物やお金などを返還する必要があります。
しかし、それが不法な原因に基づいて行われたものであれば、「不法原因給付」にあたるため、返還しなくてもいいことになっています。
不法原因給付の例には、愛人契約がよく用いられます。
例えば、仮に男性が愛人契約(不倫関係)を結ぼうと女性にお金を渡し、女性がお金を受け取った後で一方的に契約を破棄して交際を断ったとします。
この場合、怒った男性が「契約違反だ!お金を返せ!」と裁判所に訴えても、男性のしたことがそもそも公序良俗違反であり不法なため、女性は受け取ったお金を返さなくても問題ありません(「公序良俗違反」とは、社会常識に極めて反するようなことを言います)。
これと同じで、給与ファクタリング契約が不法と認められれば、給与債権を譲渡したときにファクタリング業者から受け取ったお金は「不法な給付」と扱われるため、返還する必要がなくなるのです。
(4) 自己破産などで借金を整理する
給与ファクタリングのせいで生活が苦しくなり、他の貸金業者などからお金を借りて生活費に充てている人もいるかもしれません。
もし、銀行のカードローンや消費者金融からの借金、クレジットカードの支払いなどで多重債務状態に陥っているのであれば、自己破産などの債務整理をするのも一つの案です。
自己破産に成功すれば、税金などの公租公課を除くほとんど全ての借金が帳消しになります。
不動産や高価な車など一定以上の財産はお金に換えられて債権者への弁済に充てられてしまいますが、特に目ぼしい財産がなければ一切財産を処分しないで借金を帳消しにすることができるでしょう。実際に、全く財産を処分しないまま自己破産に成功している人も数多く存在します。
自己破産に不安があるならば、個人再生や任意整理などで借金を減額して返済を楽にする債務整理方法も考えられます。
弁護士ならばあなたにぴったりの債務整理方法をアドバイスしてくれますので、借金問題のお悩みは早めにご相談ください。
4.給与ファクタリングの支払いで困ったら弁護士へ
給与ファクタリングを「給与の前借り」感覚で使う人もいますが、手数料が高額な業者を使うなどして経済的な破滅を迎えてしまうケースが多く見られます。
給与ファクタリングを取り巻く状況は大きく変わってきており、今後は過払い金の請求などが認められる可能性が増しています。
もし現在給与ファクタリングのせいで生活が苦しいのであれば、弁護士に相談してください。
過払い金の請求や債務整理など、最適な解決方法を検討してくれます。
特に過払い金については、既存の借金と相殺して余った部分が手元に返ってくるため、経済状況が一気に好転する可能性もあります。
弁護士に相談することで借金問題を解決できるケースは非常に多いです。まずは泉総合法律事務所までご相談ください。