全保連から連絡!家賃滞納した時の対応・払えない場合はどうする?
家賃の支払いが遅れ、滞納していると「全保連(ぜんほれん)」を名乗る会社から電話や郵便で連絡されることがあります。
ただ、「全保連」という名前に聞き覚えがない人もいるはずです。
特殊詐欺が横行している昨今、知らない会社から連絡を受けたら「新手の詐欺?」と疑い、無視してしまう人が多いと考えられます。
しかし、全保連からの連絡をしつこいと思い無視すると、大変なことになる可能性があります。
ここでは、全保連から家賃滞納の連絡を受けた賃貸住宅入居者の皆様に向けて、全保連の概要や連絡に対する対策などを解説していきます。
1.全保連とは?
賃貸住宅を借りる場合、基本的に連帯保証人が必要です。
万が一賃借人が家賃を支払えなくなったときは、貸主は連帯保証人に請求して家賃を払ってもらうことになります。
しかし、中には事情があって連帯保証人を用意できない人もいます。また、連帯保証人は負担が重いものですので、連帯保証人を必須とするとなかなか借り手が見つからないこともあり得ます。
そういった人のために連帯保証人の代わりになってくれるのが「家賃保証会社」です。
もし家賃の支払い遅れが発生して滞納した場合、家賃保証会社が家賃を「代位弁済」してくれます。早い話が家賃の立て替え払いをしてくれるのです。
[参考記事]
代位弁済をされたら弁護士に相談を!|住宅ローン・カードローン
「全保連」は家賃保証会社の大手の1つであり、業界内では大きな知名度を誇っています。
「立て替え払いをしてくれるなら良い会社なのでは?」と思う方がいるかもしれませんが、立て替えてもらった分はもちろん返済しなければなりません。「退去したのに連絡が来た!」というケースもあるかもしれませんが、前の家賃を滞納しているなら支払い義務があるのは当然です。
全保連からの連絡は基本的に、「あなたが滞納した家賃を立て替え払いしたので、早く支払ってください」という督促です。
全保連は特殊詐欺の会社などではなく、立て替え払いをしたことによって得た正当な権利に基づいて連絡をしているのです。
「全保連」という名前に聞き覚えがなくても、賃貸契約書等には記載があるはずですので、書類が手元にある方はご確認ください。
2.全保連への支払い滞納の影響
では、家賃を滞納して全保連から連絡があった場合、具体的にどういった流れで取り立てが行われるのでしょうか?
(1) 書面や電話による督促(滞納期間1ヶ月程度)
家賃を滞納を続けた結果、全保連が代位弁済をすると、まずは郵便物や電話(050-3000-0531)による督促が開始されます。代位弁済は家賃滞納から1~2ヶ月程度で行われるケースが多いようです。
この時点では「全保連が代位弁済をしましたので、これからは全保連に支払いをしてください」「いつまでに支払えますか?」程度の「お伺い」レベルであることが多いようです。
しかし、連絡をする担当者や連絡を受ける側の心理状態によっては、厳しいと感じる言葉で取り立てをされるかもしれません。連絡の頻度は滞納期間が延びるほど多くなりますので、しつこいと感じて無視する方も多いです。
(2) 訪問による督促(滞納期間2ヶ月程度)
電話や郵便物を放置しているか、支払いの約束をしたのに支払わず滞納を続けていると、担当者が自宅を訪問して督促をすることがあります。
それと同時並行的に、強制退去へ踏み切る手続きを進めているという情報があります。
できればこの時点で家賃を一部でも支払うなど、適切な対処をした方がいいでしょう。
銀行や貸金業者からの借金の返済を滞納していると「信用情報」というものに滞納の事実が記されてしまいます。これを俗に「信用情報に傷がつく=ブラックリスト入り」などと言い、その後はローンやクレジットカードの審査に落ちてしまいます。
しかし、信用情報に関係することができるのは、貸金業者や金融機関などに限られます。全保連はどちらにも該当しないため、家賃を滞納しても信用情報に傷がつくことはないとされています。
ただし、信販系の保証会社の場合は信用情報にアクセスできるため、家賃を滞納すると信用情報に傷がつきます。
参考:賃貸保証会社の注意点!自己破産するとアパートは借りられないのか?
(3) 裁判・強制執行(滞納期間3ヶ月以降)
滞納から3ヶ月以上経過すると、内容証明郵便で「滞納した家賃を◯日までに支払えない場合は退去してください」という旨の書面が全保連から届くようになります。
それでも滞納を続けて賃貸に居座っていると、そのうち裁判所から訴状と共に出廷命令が届きます。
これは全保連が訴訟をしたということです。
出廷命令すら無視していると、知らないうちに「家賃滞納者を退去させても良いですよ」という判決が下されることになります。
全保連はこれに基づいて、強制執行への手続きを進めます。
判決から1ヶ月後には、強制執行が開始される可能性があります。
強制執行では裁判所から執行官がやってきて、部屋を退去するように言い渡されます。
滞納した家賃については、退去後でも請求されます。原状復帰費用などが上乗せされて請求される可能性があるので、退去すれば解決というわけではありません。
退去しても引き続き督促が行われ、無視していると財産の差し押さえなどに発展するかもしれません。滞納分を返済するか、返済できない場合は何らかの方法で債務を解決する必要があります。
3.滞納した家賃を解決する方法
ここからは、滞納した家賃をどうにかして解決する方法を模索していきます。
(1) 全保連に相談する
まずは、全保連から連絡があった時点で早めに返答をすることをお勧めします。
「◯◯日にまとまったお金が入るので、◯◯日に必ず支払います」と期限を明確にして頼み込めば、その日までは返済を待ってくれることがあるようです。また、条件によっては分割払いに応じてもらえることもあるようです。
家賃保証会社は立て替えたお金の回収を最優先します。短期的に一括払いするのは難しく、分割払いでなければ払えないということを訴えれば、応じてくれる可能性はあるでしょう。
ただし、月々少額ずつの返済では条件をのんでもらえないかもしれません。
このような条件については、滞納状態や担当者に左右される部分があるので一概には言えません。
毎月ある程度多めに支払い短期間で分割払いを終えるような条件や、待ってもらうことで一気に支払いができるような当てがある状態であれば、合意できる可能性があります。
(2) 住居確保給付金を申請する
住居確保給付金は、失業などで経済的に困窮している人に家賃を支給し、安定した住居を確保し再就職をしやすくする目的で給付されるお金です。給付金なので返済する必要はありません。
自治体ごとに定められた収入や財産に関する条件等複数の支給要件がありますが、それらの要件を全て満たせば給付金を受給できます(支給額はお住まいの自治体や世帯の人数によって異なります。)。
原則3ヶ月間、最長で9ヶ月の支給期間が設けられているので、条件に合う人は申請してみるといいでしょう。
(3) 弁護士に相談して債務整理をする
分割払いや猶予をもらっても家賃を支払える見込みがない場合、家賃以外の借金が嵩んでいる(多重債務の)ならば、弁護士に相談して債務整理をするのが良いでしょう。
消費者金融や銀行などからの借金の支払いが理由で困窮しているケースでは、債務整理によりほとんど全ての借金を減額・免除してもらえます。
例えば「自己破産」をすれば、ほとんど全ての借金について支払う義務がなくなります。
また、「個人再生」をした場合、借金を大幅に減額してもらい、残った部分を3年程度かけて分割払いします。
なお、自己破産や個人再生の減免は滞納家賃も対象となります。つまり、滞納している家賃についても支払い義務がなくなったり減額されたりするのです。
とは言え、「滞納した家賃を支払う義務がなくなる(減額される)」ことと「家賃を踏み倒して住み続けられる」ことは別です。大家さんや管理会社にとって、家賃を踏み倒してきた居住者を住み続けさせるメリットはありません。
そこで、家賃滞納をした状態で個人再生や自己破産をすると、賃貸契約を強制解約されて立ち退き請求をされる可能性が高いでしょう。
とはいえ、住居は生活をする上でなくてはならないものですので、特別に滞納分の家賃は支払うことを裁判所が認めてくれる場合があります。これまで借金返済に充てていたお金を家賃の支払いに使うことができるようになれば、借金問題は一挙に解決するでしょう。
もう一つの債務整理である「任意整理」をすると、遅延損害金をカットした後に、滞納分を分割払いすることで債権者と合意できる可能性があります。
対象とする債権者を選べる唯一の債務整理方法なので、多重債務の場合、滞納家賃だけ外して任意整理手続を行えば、立ち退きを迫られる可能性が低く、保証人に請求がいくこともありません(任意整理から外した滞納家賃は全額きちんと支払うことが前提です)。
4.全保連からの連絡は無視しない!困ったら弁護士に相談を
賃貸住宅に住んでいて家賃滞納をしてしまった人で、ある日突然「全保連(ぜんほれん)」を名乗る会社から連絡があったならば、滞納した家賃の立て替え払い分を請求されていると思うべきです。
全保連は家賃保証会社で、無視していると最悪の場合賃貸住宅から強制退去させられるおそれがあります。強制退去を避けるならば無視をしないで全保連と交渉し、支払いを少し待ってもらうか、分割払いを申し出るなどしましょう。
どうしても交渉がうまく行かない場合や、他の借金があるなどして家賃の支払いにまで首が回らないような状態ならば、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士は、様々な借金問題についての解決方法を熟知しています。
1人で悩んでいても解決は難しいので、お困りの際はぜひ弁護士を頼ってください。