国民健康保険料(国保)を滞納した場合のデメリット
皆さんは、国民健康保険料をしっかりと支払っていますか?
病院に通う必要がなければ、国民健康保険料を滞納しても、今すぐに困ることはないかもしれません。
しかし、明日健康である保証は誰にもありません。
「いずれ余裕が出たときに滞納を清算しよう」と考えて先送りにしていると、延滞金が加算され、あっという間に支払えない金額になってしまいます。
今回は、国民健康保険料の滞納によって生じる不利益と、その解決策を解説します。
1.保険料滞納の実態
後ほど説明するように、低所得の世帯などには軽減・減免措置がありますが、それでも生活事情によっては保険料の支払いが重荷になる場合もあるでしょう。
2019年4月の厚生労働省の調査によると、2018年6月1日の時点で、全国で約267万世帯が国民健康保険の保険料を滞納しています(年々減少傾向)。
「国民健康保険料など支払った記憶がない」と不安になった方がいるかもしれませんが、会社勤めで社会保険などに加入している場合は、国民健康保険に加入する必要はありません。
また、会社の社会保険に加入している場合、保険料は毎月の給与から天引きされているので、滞納の心配もありません。
この他にも、以下のような方は国民健康保険に加入する必要がありません。
- 勤務先で健康保険に加入している人とその扶養家族(任意継続の場合を含む)
- 船員保険に加入している人とその扶養家族
- 国民健康保険組合に加入している人とその世帯家族
- 75歳以上の人(後期高齢者医療制度の対象者)
- 生活保護を受けている人
2.保険料の滞納による不利益
保険料を滞納しておきながら、医療費の一部負担などのメリットを享受するのは不公平だと言えます。
そのため、保険料を滞納している場合には、滞納の状況に応じて一定のペナルティがあります。
それでは、保険料を滞納した場合に、どのような不利益が生じるか確認しておきましょう。
(※国民健康保険は市町村ごとに運営しているため、対応が異なる場合があります。)
「国民健康保険法」において、国民健康保険料の徴集権の時効は2年とされています。しかし、告知や催促があった場合には、時効が中断します。
原則、保険料の支払いの告知が忘れられることはないので、時効については期待するべきではないでしょう。
(1) 督促される
国民健康保険料の納期を過ぎても支払いをしない場合、役所から督促状が届きます。
無視していると電話がかかってきたり、職員が自宅を訪ねてきたりして、支払いを求められるケースもあるようです。
(2) 延滞金が発生する
国民健康保険料を納期までに支払わなかった場合には延滞金が発生し、もともとの金額よりも多くのお金を払わないといけない状態になります。
延滞金の年率は市町村によって異なりますが、納付期限から数か月までの期間とその後とで年率が変わるケースが多数です。
多くの自治体において、納付期限後間もない段階では延滞金の年率が低く設定されており、一定期間を経過すると年率が上がります。
たとえば、納付期限から1か月間は年率2.8%ですが、1か月を過ぎると年率9.1%に上がる場合などがあります。
長期にわたって国民健康保険料を延滞し続けると、その分どんどん支払い総額が増えてしまいます。
(3) 病院での治療費が自己負担となる
国民健康保険料を払わないと、いずれ健康保険を利用できなくなり、医療費を全額負担しなければならない状態に陥ります。
ただ、保険料を滞納しても、すぐに保険資格を停止されるわけではありません。
滞納期間が6ヶ月を超えた場合
納付期限後6か月が経過すると、今まで使えていた健康保険証を使えなくなり「短期被保険者証」が交付されます。
短期被保険者証は通常の健康保険証より有効期限が短く設定されているので、期限が切れるたびに市役所で更新しなければなりません(そのたびに国民健康保険料を払うよう促されます)。
「短期被保険者証」とは、有効期限が数ヶ月しかない保険証です。
有効期間は市町村によって異なりますが、1~6ヶ月程度です。この間に保険料の滞納を解消できないと、次のステップに進みます。
滞納期間が1年を超えた場合
また、滞納期間が1年を超えると短期被保険証すら交付されなくなり、代わりに「資格証明書」を渡されます。
資格証明書は健康保険証の代わりにならないので、資格証明書を医療機関に提示しても1割負担や3割負担に減額されません。ひとまず医療費を全額自己負担して、後に自己負担を超える金額を役所に請求すると払戻しを受けられる仕組みです。
完全に「保険資格がなくなる」わけではありませんが、いったん病院で立て替えるお金がなかったら、実質的に医療を受けるのが難しくなってしまうでしょう。
滞納期間が1年6ヶ月を超えた場合
さらに、国民健康保険料を滞納して1年半の期間が経過したら、資格証明書の交付すらなくなります。この場合、医療費は全額自己負担です。
もちろん、高額療養費の還付も受けられませんし出産一時金や傷病手当金などの給付もありません。
(4) 財産が差し押さえられる
長期にわたって国民健康保険料を滞納し続けると、自治体が回収に向けて動き出します。
自治体から督促状や催告書などの書類が届き、最終的には滞納者の預貯金や不動産、車や給料などが差し押さえられます。
自治体が国民健康保険料の取り立てのために差し押さえるときには、一般の債権と違って「裁判」をする必要がありません。
滞納状態を続けていると、ある日突然財産や給料を差し押さえられる可能性があるのです。
[参考記事]
国民健康保険の滞納で差し押さえ!?督促状が届いたら早めに対応を
3.滞納者のすべきこと
援助してくれる親族などがいれば、その援助を受けて滞納している保険料を清算することも可能でしょう。
また、職場の健康保険などに加入している家族の扶養に入って国民健康保険から脱退し、保険料の支払い義務自体をなくしてしまうといった対処も考えられます。
しかし、現実にはこうした援助が受けられるケースや、脱退による対処方法が可能なケースは少ないはずです。
そこで、保険料を滞納している場合には次のような方法を検討してください。
(1) 市町村に分割払いの相談をする
保険料の滞納については、まずは市町村に相談すべきです。
何とかして滞納を解消したいと相談すれば、ちゃんと相談に乗ってくれます。
現在の生活状況などを説明し、一括納付が難しい事情がある場合には、分割納付(分割払い)にも応じてもらえる場合もあります。
(2) 軽減・減免措置を受ける
経済的・身体的な理由により保険料を納付できない方のために、下記のような保険料の軽減・減免措置も用意されています。
- 所得が一定金額以下になった場合
市区町村によって減額の方法や割合は異なりますが、一般的には、前年の世帯所得と世帯内の加入者数によって7割、5割、2割の段階で保険料が軽減されます。 - 倒産などで解雇された場合
倒産など、会社都合で解雇された場合などは、保険料が約7割減額される措置があります。
納付できない事情によって、さまざまな軽減措置や減免措置があるので、まずは市町村に相談してください。
ただし、軽減・減免措置は、申請してから審査があるため、誰でも軽減・減免措置が受けられるわけではありません。
[参考記事]
国民健康保険が払えない時はどうすればいい?
4.借金解決は泉総合法律事務所へ
このように、国民健康保険料の滞納を続けると、滞納の程度に応じてさまざまな不利益が生じます。
しかし、保険証が取り上げられると困るからといって、借金をして滞納保険料を清算しようなどとは考えてはいけません。
また、すでに多額の借金があり、借金の返済のために保険料の支払いに困っている方もいるでしょう。
このような場合には、債務整理なども視野に入れ、借金の解決実績が豊富な弁護士に相談することをおすすめします。
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