老後の住宅ローン返済で破産を防ぐために必ず知っておきたい対応策!
【この記事を読んでわかる事】
- 住宅ローンが老後破産原因の一つになる理由
- 老後破産回避のために住宅購入後にできること、やるべきこと
- 持家のある高齢者のための「リバースモーゲージ」について
近年、高齢者を取り巻く環境が厳しくなり、「老後破産」という言葉をよく耳にするようになりました。
実際、「定年まで必死で働いて、老後はマイホームでゆっくり過ごす」という理想を許さない現実問題があります。
その問題の1つが住宅ローンです。
住宅ローンは、長期にわたり返済を余儀なくされる借金です。返済期間中に予想しなかった出来事で返済が滞ることがあり、結果として老後も返済を続ける事態となってしまうのです。
では、住宅ローンの返済が滞ってしまい、老後も住宅ローン支払いに追われてしまう場合、どのように対処するべきなのでしょうか?
法的措置や破産を避けるための防衛策のほか、利用できる可能性のある制度(リバースモーゲージなど)もについても解説します。
1.老後に住宅ローン返済が滞る理由
ここ何年か、高齢者の就業率は毎年増加している傾向があります。
統計局によると、2020年の高齢者の就業率は25.1%となり、9年連続で前年に比べ上昇しています。
年齢別に見ると、65~69歳は49.6%、70歳以上は17.7%となっています。
こう聞くと、高齢者でも収入がある方が多く、「老後破産をする高齢者は実は少ないのでは?」と思うかもしれません。
しかし、実際はその逆で、近年「老後の破産」が社会問題化しています。
(1) 高齢に伴う収入の減少
実は、過去9年連続で上昇しているという就業率にも、高齢者が住宅ローンなどを支払えずに破産まで陥ってしまう兆候が表れています。
統計を見ると、高齢者の4人に3人は非正規の職員・従業員です(高齢者の非正規の職員・従業員は、ここ10年で約2.5倍に増加しています)。
実は、平成25年度に改正高年齢者雇用安定法が開始され、65歳までの高齢者に対して雇用延長が推進されました。
そして多くの場合、企業は、60歳以上の雇用者に対して再雇用契約を結びます。その際、賃金が定年前の50~60%にダウンすることも少なくありません。
よって、高齢者の就業率が高くても、就労している高齢者が十分な賃金をもらっているかというと、決してそうではないのです。
(2) 退職金の減少・廃止
退職金をあてにして住宅ローンを組んだが、その額が予想より少ない、もしくは退職金制度が廃止になってしまったというケースもあるようです。
時代が変わり、終身雇用制の維持が難しく、転職が珍しくない昨今、退職金の制度を見直す企業が多くなっています。
退職金は就業規則、労働契約などに根拠がなければ、法律上、支払い義務がないのです。
事実、厚生労働省の調査によると「最終学歴が大学」の定年退職者の退職金平均額は、1998年〜2018年までの20年間で1,080万円減少しているそうです。
また、少し古いデータですが、従業員数30人以上で退職金制度を導入している企業は2013年は75.5%に留まっています。
(3) 医療費
加齢に伴い、医療による出費はどうしても増加していきます。
厚生労働省の患者調査によれば、60~64歳では、7,000人以上の人が入院または外来受療を受けており、同「国民医療費」によると、65歳以上の国民1人あたりの医療費は70万円程度となっています。
また、65歳以上からかかる医療費は、生涯の医療費の半分近くになるという統計もあります(厚生労働省「生涯医療費」)。
また、今後の高齢者の医療費自己負担も、少子高齢化など社会環境の大きな変化に伴い見直しを迫られています。
介護保険も例外ではありません。介護保険の自己負担は、一定以上の所得のある場合は2割〜3割となっています。
[参考記事]
入院費・治療費・医療費が払えない場合の対応策
2.住宅ローン契約時に気を付けるべきこと
では、老後に返済が滞ることを避けるためにできることを考えていきます。
まず、住宅ローンを組むときには何に気を付けるべきなのでしょうか。
(1) 返済期間をできるだけ短くする
単純な話ですが、返済期間は短くした方がより利息が少なくなるので負担は抑えられます。
もちろん、返済期間が短いと、その分月々の支払額は大きくなります。よって、無理な返済計画は禁物です。
実際、住宅金融支援機構の調査によると、当初の貸出期間で一番多い割合は「30年以下」の40.6%となっており、35年以上のローンを組んでいる方は僅か13.1%となっています。
ちなみに、25年以下のローンを組んでいる方は46.3%となっています。
そして、意外かもしれませんが、15年以下で返済した方が全体の6割を超えています。
15年で完済できれば、40歳でローンを組んでも50歳半ばでローンは終了することになります。
50代と言わずとも、理想としては定年退職までに住宅ローンを支払い終えるように計画をするべきでしょう。
(2) 金融機関・住宅業者のアドバイスに盲従しない
金融機関は、利ザヤを稼ぐために限度の範囲でできるだけ多額の貸付をしようとしますし、住宅業者もできるだけ高額の物件を売ろうとするものです。
これに騙されず、自分の身の丈に合ったローン・物件選びを心掛けることが大切です。
FPや住宅ローンアドバイザーなどの専門家に相談することも、無理なくローンを組むための賢い選択でしょう。
3.住宅購入後にできること
では、住宅購入後から老後に向けて何かできることはないのでしょうか。
(1) 繰り上げ返済
「今のままの返済ペースでは定年退職後も住宅ローンを支払うことになる!」という場合は、繰り上げ返済をすることを考えましょう。
繰り上げ返済手数料は取られますが、何かあった場合のリスクを減らし、ローンからより早く解放されるというメリットを得られます。多少の頑張りで、老後の安心が保証されるのです。
また、退職金の額を確認することによって、退職と同時に住宅ローンを完済できる可能性もあります。
(2) 年金額を確認する
退職後の大切な収入源である年金ですが、住宅ローンの返済に充てることを余儀なくされるケースもあります。
そこで、日本年金機構に問い合わせることで、自分が「何歳から」「いくら」の年金を支給されるのかを確認することが可能です。
退職金の額と年金額が確認できたら、住宅ローンの完済計画を考えましょう。
60歳以降になると、会社との再雇用契約などで減収になるケースが多いです。将来の自分の収入を考えて、ローンがどのくらい残るのかを計算し、65歳くらいを目途に(年金生活に入る前までに)住宅ローンを完済できるよう計画を練ってみましょう。
(3) 借り換えローン
借り換えローンは、利息が高いローンを完済する際に有効になるケースがあります。
しかし、住宅ローンはそもそも利息が低いローンですので、借り換えローンが有効打にならないケースも多いでしょう。
さらに、退職後に新たにローン契約を締結するのは、収入などの審査面においても困難と言わざるを得ません。
(完済時の年齢が80歳以下であること、現在の住宅ローンを3年以上正常に支払っていることなども条件となってきます。)
そこで、高齢者が住宅ローンを借り換えためのローンの1つとしておすすめできるのが「リバースモーゲージ」です。
4.リバースモーゲージの有効利用
(1) リバースモーゲージとは?
リバースモーゲージという制度をお聞きになったことはあるでしょうか?
リバースモーゲージとは、持家のある高齢者が、マイホームを担保に金融機関から一時金の形式で借入ができる制度です。
近年、このリバースモーゲージを取り扱う金融機関が急増しています。
リバースモーゲージでは、契約時には自宅を担保に借入を行い、住宅ローンを返済してしまいます。
借り入れたお金は契約者死亡時もしくは契約満期時に一括返済しなければならず、現金での返済ができない場合には、金融機関が抵当権を行使して、担保物件を競売し、返済に充てることになります。
リバースモーゲージを上手に活用すれば、マイホームを手放すことなく金融機関からお金を借りることができるのです。
なお、リバースは「逆」、モーゲージとは「抵当」を意味する英語です。
通常のローンでは融資を受け一定期間内に分割で返済をしていきますが、リバースモーゲージの場合は「分割で借り受け、一括で返済する」という形を取ります。
(2) リバースモーゲージのメリット
- 現金収入が可能
高齢者であっても、借入金で現金を入手することができます。これは、収入源が年金のみになってしまった場合に大変貴重な収入となります(一括で借り受ける場合と、年金のように毎月受け取る場合があります)。借入可能額は担保評価額の40%~70%です。 - 元金の返済不要
借主が死亡後、担保不動産の売却益で清算する方式なので、年金収入しかない高齢者であっても、毎月の生活費を圧迫せずに融資を受けることができます。本人生存中は、返済義務がありません。
また、借主が契約満期時以降も長生きした場合や、評価額が下落し売却益が借金の完済に足りないような場合を除いては、家族に借金が残りません。 - 生活資金以外にも利用可能
借入金の使途については、自由型と限定型があり、金融機関によって異なります。自由型であれば、原則として使途に制限はありません。 - 契約時の収入要件が比較的緩い
契約を締結する際の収入要件が住宅ローンほど厳しくありません。
(3) リバースモーゲージのデメリット
- 長生きすることにより住宅を失うリスクがある
皮肉なことですが、契約期間を超えて長生きした場合に返済ができないと、マイホームを担保に取られて失ってしまう可能性があります。 - 金利・資産評価額変動のリスク
リバースモーゲージの場合、基本的に変動金利を採用しているため、金利が上昇してしまうと契約期間中でも貸付金額の上限に達してしまうこともあり得ます。
また、地価下落など資産評価額が下がり、自宅売却代金が借金の完済に足りなくなってしまった場合、法定相続人が負債を負うことになります。 - 法定相続人の事前承認が必要
上記3つのリスクがあるので、法定相続人の事前承認が必要となります。また、リバースモーゲージをすることで子どもは自宅を相続することができなくなるので、相続問題が発生しないように事前に納得がいくまで話し合っておく必要があります。
なお、契約者が亡くなった後、担保不動産の売却処分を進めることが難しくなるため、子どもが同居している場合はリバースモーゲージを利用できません。 - 利用できるのが都市部に限られている
対象エリア内であっても、立地により資産評価額が低く、担保条件を満たさない場合もあります。また、最近ではマンションも対象にする金融機関も増えましたが、売却時に資産価値がある場合のみ対象となります。 - 配偶者へ契約が引き継げない場合がある
配偶者に契約が引き継げないということは、例えば夫の死亡後、妻が自宅を失ってしまうということになります。このようなリスクを避けられる場合にのみ利用するべきです。
5.住宅ローンや借金の返済が困難になったら弁護士へ相談を
住宅ローンは、長期にわたり返済計画を立てなければならず、予測不能な変数によって思いもよらない問題が発生することもあるでしょう。
大事なのは、できるだけ短期間で(少なくとも現役なみの収入が期待できる60歳前後までに)返済を済ませてしまうことです。
もし、住宅ローンの返済が重く負担になってきた場合には、独断でリバースモーゲージなどに踏み切る前に、一度泉総合法律事務所の弁護士に相談してみてください。
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相談は何度でも無料ですので、お気軽にご相談いただけたらと思います。