借金返済 [公開日]2018年5月18日[更新日]2024年3月4日

高齢出産による養育費の出費で生活が苦しい場合の借金解決策

嵩む養育費の出費で生活が苦しい…。高齢出産による借金の解決策

日本では、いわゆる晩婚化を背景に、30代後半で初産を迎える人が増えてきました。

子どもを授かる年齢が高くなれば、子どもが独立する前に親が定年退職を迎えるケースがあります。
そのため、子どもにかかる費用のために、「定年退職後の生活にゆとりがない」と感じている夫婦が増えているようです。

そこで今回は、高齢出産をした場合に子どものためにかかる費用で生活が苦しい場合、その対策について解説していきます。

1.高齢出産と子育て費用の実情

(1) 日本の初産平均年齢

出産年齢が高くなったことで、将来の子どもにかかる費用負担に不安を感じている人は少なくありません。
実際にも、収入の減少と子どもにかかる費用がかさむ時期が重なってしまい、生活が苦しいと感じている人は少なくないようです。

厚生労働省の令和4年(2022年)の調査によると、女性が第1子を出産する年齢は25~34歳が最も多く、全体の約68%を占めます。
しかし、35~44歳で第1子を出産する割合は約21%で、決して少ない数字ではありません。5人に1人は35歳以上で第1子を出産をしているということです。

子が就職して社会人になるまでを「子育て期間」であるとすれば、子育て期間も長くなる傾向にあります。
近年では、大学進学率も50%を超え、2人に1人以上の子が大学に進学しています。

こうなると、35歳以降に子どもを授かったときには、子育てが定年退職までに終わらない可能性があるでしょう。

(2) 子育て費用

次に、実際にかかる子育て費用について確認してみましょう。
子どもにかかる費用は、大きく分けて、教育費(学習費)と養育費(生活一般にかかる費用)があります。

高校・大学卒業までの教育費

日本政策金融公庫が、文部科学省の調査などを参考の上でまとめたデータによると、幼稚園から大学卒業まですべて公立に通う場合と、すべて私立に通う場合の平均額は以下の通りです。

  • すべて公立の場合:合計約822.5万円
  • すべて私立の場合:合計約2,307.5万円

現在では大学進学率も50%を超えていますが、高校まで全て公立であっても500万円以上の学習費用がかかります。
さらに、大学の4年間でかかる費用は、国立大学で約250万円、私立大学では約470万円となります(入学金・学費)。子どもの下宿代や授業で用いるテキスト代なども親が負担すれば、さらに必要な金額は増えることになるでしょう。

これには、塾や習い事などの費用は含まれていないので、実際にはより多くの費用が必要となります。

当然、子どもが2人、3人と増えれば、必要な費用も増えていきます。

養育費(普段の生活にかかる費用)

子どもにかかる費用は学校にかかる費用だけではありません。

出産にも費用はかかりますし、病気・風邪により医者に診せる機会は当然にあります。当然ですが、衣料費や食費、おもちゃ代、家族レジャー(旅行)代と、あらゆることにお金がかかります。

少し前のデータですが、「AIUの現代子育て経済考2005」によれば、出産から大学卒業(22歳)までにかかるこれらの費用の総額は1,640万円にものぼるとされています。
もちろん、子どもが学校を終え社会に出た後も家族のための出費がなくなるわけではありません。子ども結婚や孫の誕生といった出来事があれば、親として何かしらの支援をしたいと思うものでしょう。

教育費と合わせれば、出産から社会に出るまでに、少なく見積もっても2,000万円以上の費用が必要だということになります。

(3) 親の収入状況の変化

若いときの子どもであれば、子どもにかかる費用が増えるのに合わせて世帯収入も増えていきます。
しかし、高齢で出産した場合には、子どもにかかる費用が増える時期と、世帯収入が減っていく時期が重なることがあります。

一般的に、収入は50~54歳の頃がピークで、その後は減収していきます。
法定定年年齢は65歳ですが、実際には役職定年などで60歳前後に退職するケースも少なくありません。

これに対し、40歳で子どもを授かったときには、5年間で負担する教育費のピークは55~60歳のときに訪れます。

また、ご自身の両親の介護の問題が生じることもあります。
高齢出産で子どもを産んだときには、学費のピーク時期に両親の介護も必要となるというケースも珍しくありません。

2.子育てのための費用を工面する仕組み

30代後半以降に子どもが生まれたときには、「子どもにかかる費用負担が少ない」かつ「収入が増加傾向にある」40代までのうちに、どれだけの資産を蓄えられるかが重要といえるでしょう。
将来子どもにかかるお金を貯めるためには、子育てのための公的支援や学資保険などを活用することも大切です。

(1) 児童手当

児童手当は、児童手当法に基づく制度です。0歳から15歳になった年度の3月まで(中学校卒業まで)支給されます。
支給月は、毎年6月、10月、2月の3回で、それぞれ4ヶ月分ずつ支給されます。

支給額は対象児童の年齢や子の数によって異なります。現在の支給額は下記の表のとおりです。

支給対象児童 支給月額所得制限額未満
3歳未満 一律15,000円
3歳以上 小学校修了前 10,000円(第3子以降は15,000円)
中学生 一律10,000円

児童手当の受給には手続きが必要です。通常は出生届を出すタイミングで手続きを行います。
なお、転入転出の際にも手続きが必要となるので忘れないようにしましょう。

(2) 学資保険

将来こどもにかかる費用を貯蓄するのが難しいという方には、学資保険の利用がお勧めです。
学資保険では、学費の準備だけでなく、特約によって子どもの医療費の確保もできます。

学資保険に加入すると、毎月の保険料の支払いの代わりに、加入時に選択した時期に保険金を受け取ることができます。特に、30代後半以降に子どもを授かったときには、高校進学・大学進学といった多額の学費が必要な時期に保険金を受け取るよう設定しておくとよいかもしれません。

なお、学資保険は固定金利なので、途中解約がなければ、受け取れる保険金の総額は、支払った保険料総額よりも多いのが通常です。
ただし、固定金利なので大きな物価変動(インフレ)に弱い側面もあるので注意は必要です。

さらに、学資保険には子どもに入院・手術が必要となったときにも保険金が受け取れる特約があることが一般的です。
ただし、医療保障の特約を付加すると、満期時に受け取れる保険金は特約がない場合よりも少なくなります。

学資保険に加入する際には、目的・用途を明確に定めて慎重に契約することが大切でしょう。

(3) 奨学金

今では子どもの2人1人が大学に進学していますが、大学進学者の2人に1人は奨学金の支給を受けています。
特に、大学が遠く家から通学できないときには、その分の生活費も工面しなければならず、学費は奨学金に頼るしかない場合も少なくないようです。

日本学生支援機構の奨学金

高校・大学生向けの奨学金として最も有名なのは「日本学生支援機構」の奨学金です。
日本学生支援機構の奨学金には、給付型・貸与型の奨学金があり、さらに貸与型には、無利子奨学金(第1種)と有利子奨学金(第2種)とがあります。有利子奨学金の利率は、2023年7月現在、利率固定方式0.637%、利率見直し方式0.090%です。

奨学金の返済期間は、貸与を受けた総額と返済方法(所得連動返還・定額返還)によって定まります。
詳しくは以下の日本学生支援機構ウェブサイトをご確認ください。

【参考】返還期間と割賦金(日本学生支援機構ウェブサイト)

その他の奨学金

奨学金は、民間企業や大学が給付・貸与してくれるものを含めれば他にもたくさん存在します。
高校の担当窓口に問い合わせをしてみたり、それぞれの大学のウェブサイトなどで情報を集めた上で、希望大学を選択することも1つの方法です。

また、私立大学でも特待生制度を利用できれば、国立大学並(あるいはそれ以下)の学費で進学できる場合も少なくありません。

【奨学金は借金】
奨学金は「支援」の仕組みではありますが、形式的には「借金」です。最近では、「奨学金が返済できなくなった」ことを原因とする自己破産者も増加しています。
奨学金は、奨学生である子が就職後の収入から返済するのが原則です。当時の想定とは異なり、十分な収入が得られない場合や、就職後の事情によって返済が厳しくなることもあり得ます。また、貸与型の奨学金は、親権者などが連帯保証人となるのが一般的です。子が奨学金の返済に行き詰まったために、親も連鎖して自己破産するケースも増えています。
そのような事態を受けて、いまでは、日本学生支援機構の奨学金には、保証会社による保証を選択できるものも設けられています。

奨学金が原因の借金の返済については、以下のコラムもご覧ください。

[参考記事]

返済できない奨学金|自己破産をするとどうなる?

3.高齢出産後の生活苦は債務整理も検討を

子どものための教育費・養育費をコツコツと積み立てていても、想定外の出来事でお金が足りなくなることも起こりうるでしょう。
親族の急な病気や会社の業績不振、さらには両親の介護など、不測の事態についてはさまざまな可能性があります。

場合によっては、教育ローンの返済が苦しくなったり、子どもにかかる費用が家計を圧迫して住宅ローンの返済が苦しくなることもあるかもしれません。

そのようなときには、債務整理で解決することも選択肢の1つです。

債務整理をすると、「子どもの将来に悪影響がでる」ことを懸念する人は少なくないようです。
しかし、債務整理しても、住民票や戸籍などに記録が残ることはありません。また、子の就職の際に、親の信用情報などが確認されることもありません(信用情報は、融資の審査などの限られた場合にのみ調査することが認められているものです)。

債務整理や自己破産といわれると不安に感じる人は少なくありませんが、早期に着手すれば大きなデメリットを生じさせずに借金問題を解決することも不可能ではありません。
万が一のときには、できるだけ早めに弁護士に相談されることをおすすめします。

泉総合法律事務所には、債務整理の解決実績が豊富な弁護士が多数在籍しており、日々多くの借金問題を抱えたご相談者様が来所されています。
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