自己破産の予納金とは?|自己破産にかかる費用
自己破産は裁判所で行われる公的な手続きですが、利用する際には裁判所へ手数料などを納付する必要があります(=予納金)。
自己破産は、当然ながら経済的に困窮している方が行う手続きであるため、この予納金の工面が自己破産申立ての障害となるケースが多いです。
では、裁判所費用は具体的にいくら必要となり、また、仮に費用が準備できない場合はどのように対応すれば良いのでしょうか。
今回は、自己破産においてかかる費用について、東京地裁を例にとってご説明します。
なお、この記事に記載されている費用は、2021年6月現在のものとなります。
1.自己破産にかかる裁判所費用
自己破産をするときに裁判所に納める必要のある費用などは、次のとおりです。
- 申立手数料(収入印紙)
- 予納郵便切手
- 裁判所予納金(官報掲載費用)
- 引継予納金(破産管財人報酬)
(1) 申立手数料
裁判所の手続きを利用するときには、申立手数料を納付しなければなりません。
自己破産の場合の申立手数料は、自己破産申立分(1,000円)と免責手続申立分(500円)の合計1,500円です。
申立手数料は、収入印紙を申立書に貼付する方法で納付します。
(2) 予納郵便切手
自己破産の手続きで用いる郵便切手も、自己破産申立ての際に納める必要があります。
納める郵便切手の金額(種類×枚数)は、裁判所によって異なります。
東京地方裁判所での予納郵券は、合計4,200円分(210円切手8枚、84円切手29枚、10円切手6枚、2円切手10枚、1円切手4枚)です。
(3) 官報公告費用(破産予納金)
申し立てられた破産手続きの債権者が誰かは、まずは申立人が提出する「債権者一覧表」で裁判所が把握し、記載された債権者に対して、破産手続が始まったことや裁判所へ債権を届け出る期間などを通知して、その権利行使を促します。
しかし、債権者一覧表への記載漏れや、申立人が認知していない債権者がいる可能性も否定できませんから、それらの者に権利行使の機会を与える必要があります。
また、第三者が、債務者の破産手続が始まったことを知らずに、これと取引関係に入ってしまい、不測の損害を被る事態を防止する必要もあります。
そこで、破産者に対する破産手続き開始決定がなされたことを広く社会にアナウンスするために、「官報」による公告が行われます。
この官報掲載費用も申立人(破産者)の負担となります。
東京地方裁判所の場合、官報掲載費用は、自己破産の手続きが、「同時廃止事件」となるか、「管財事件」となるかで異なります。
同時廃止の場合:11,859円
管財事件の場合:18,543円
[参考記事]
自己破産・個人再生で官報に載るとどうなる?
(4) 引継予納金(破産管財人報酬)
引継予納金(破産管財人報酬)は、裁判所に支払う自己破産費用で最も高額なものです。管財事件において選任される「破産管財人」の報酬に充てられます。
なお、同時廃止となったときには、破産管財人が選任されないため引継予納金は不要です。
引継予納金の金額は、管財事件の運用の仕方(少額管財か、通常の管財事件か)によって異なります。
自己破産手続きが「管財事件」と「同時廃止事件」のどちらで行われるかは、主に以下の要素を検討した上で決められます。
・破産申立人の所有している財産
・免責不許可事由の有無
破産者が多くの財産を所持している場合は、それを換金して債権者に平等に分配する必要があります。また、免責不許可事由(ギャンブルによる借金や財産隠しなど、借金をゼロにする=免責するのが相応しいかどうかが問題となる事由)がある場合も、免責の可否を検討する必要があります。
これらの業務のために破産管財人を選任する必要があるため、破産申立人の財産が多かったり、免責不許可事由があったりする場合は、管財事件となることが原則です。
①少額管財の場合
東京地方裁判所をはじめとする多くの裁判所では、弁護士代理人による自己破産申立て事件に限って、実務上「少額管財」とよばれる管財事件の運用が採用されています。
少額管財という呼称の「少額」は、「予納金が少額」であることを意味しています。
弁護士が申立人(破産者)の代理人となっている破産事件では、破産管財人が行うべき業務(破産者の資産・負債の調査など)の多くを代理人が自己破産申立て前に行うことが期待されます。
そのため、弁護士代理人がいない破産事件よりも、破産管財人の報酬額を少なくすることが可能となります。
いわゆる「少額管財」の場合の引継予納金は、「最低」20万円となっています。本人申立て場合の予納金は最低50万円なので、30万円も安くなります。
なお、近年では、個人の自己破産事件のほとんどが「少額管財」の運用で取り扱われています。
そのため、東京地方裁判所では、「予納金が最低20万円」の管財事件のことを「管財事件」と呼び、予納金の最低額が50万円の事件を「特定管財」と呼んでいます(他の裁判所でも呼称が異なる場合もあります)。
②通常の管財事件(本人申立事件)の場合
弁護士代理人のいない本人申立事件では、申立人代理人弁護士による破産管財業務の処理が期待できません。
そのため、破産管財人の負担が大きくなり、必要な報酬(予納金)も高くなります。
つまり、東京地方裁判所では自己破産手続きを弁護士に依頼をした方が、裁判所費用が安く済むのです。
通常の管財事件(本人申立事件)の場合の破産管財人報酬の額は下の表のとおりです。
負債総額 | 引継予納金 |
---|---|
5,000万円未満 | 50万円 |
5,000万円以上1億円未満 | 80万円 |
1億円以上5億円未満 | 150万円 |
5億円以上10億円未満 | 250万円 |
10億円以上50億円未満 | 400万円 |
50億円以上100億円未満 | 500万円 |
100億円以上 | 700万円 |
2.自己破産の費用を工面できない場合
自己破産する際に裁判所に納める費用(東京地方裁判所本庁の場合)をまとめると、下の表のとおりになります(2019年10月現在)。
費用の種類 | 同時廃止事件 | (少額)管財事件 |
---|---|---|
申立手数料(印紙代) | 1,000円+500円 | |
予納郵便切手代 | 4,200円 | |
官報掲載費用 | 11,859円 | 18,543円 |
破産管財人報酬 | なし | 最低20万円 |
裁判所に納める費用合計 | 17,559円 | 224,243円 |
同時廃止であれば、裁判所に納める費用は2万円弱で済みますが、管財事件となれば20万円以上の費用を工面する必要があります。
この高額な費用のため、「自己破産したくても破産費用が捻出できない」というケースは珍しくありません。
(1) 引継予納金の分納
東京地方裁判所は、「20万円の引継予納金の納付」に限って、破産手続き開始決定後の分納(5万円×4回)を認めています。
この場合には、自由財産(破産者が自由に処分することが許された財産。例えば、破産手続開始決定後の給与収入など)から引継予納金を分納することになります。
(2) 4回での分納が難しい場合
上記のような毎月5万円の分納も難しいときには、自己破産申立ての前から破産手続きの費用を自主的に積み立てるほかありません。
弁護士に自己破産(債務整理)の依頼をすると、その時点で消費者金融や銀行といった債権者への借金返済が停止されます。
そのため、借金返済に行き詰まっていた人であっても、時間をかければ、破産費用や弁護士費用を自力で工面することは不可能ではありません。
破産手続きの費用を消費者金融などからの借金で工面することは絶対にいけません。破産手続きの費用を業者からの借金で用立てたときには、刑法上の詐欺罪や破産法上の詐欺破産罪が疑われる可能性があるからです。最悪の場合、刑事処分を受けたり、免責決定を受けることができなくなる危険もあります。
破産費用の工面に不安があるときには、必ず弁護士に相談の上、指示に従うようにしましょう。
なお、法テラスでは弁護士費用は立替えが可能ですが、生活保護を受給している方を除いて、裁判所に納める予納金については立替えの対象とはなりません。
[参考記事]
生活保護と借金・自己破産の関係〜法テラスの利用について
3.まとめ
自己破産にも多額な費用が必要であることは、案外知られていないようです。
泉総合法律事務所では、裁判所に納める費用の工面の方法についても、ご相談者様に必要なアドバイスを差し上げています。
また、予納金の工面が難しい方は、弁護士費用の支払いにも不安があることが多いと思います。
泉総合法律事務所は、弁護士費用の分割払いにも対応しています。また、債務整理の相談は何度でも無料です。
借金問題は、泉総合法律事務所に安心してご相談いただければと思います。