再生計画案とは|記載例や提出後について解説
個人再生の目的は「借金を減額してもらうこと」ですが、これを裁判所に認めてもらうには様々な課題をクリアする必要があります
中でも難関かつ重要と言えるのが「再生計画案」の認可です。この再生計画案を認可してもらわなければ、借金を減額してもらえません。
しかし、再生計画案を作るのは難しく、素人目で作成すると失敗してしまうことがほとんどでしょう。
この記事では、再生計画案の重要性や記載例、提出後にするべきことなどについて紹介します。
1.再生計画案の役割と重要性
再生計画とは「民事再生法の定めに従って作成された具体的な返済等の計画」のことです。
個人再生に成功すると、元本から大幅に減額された借金の残務を返済していくことになります。この返済方法の計画が再生計画です。
再生計画は、債務者が提出した再生計画の案、即ち「再生計画案」を裁判所が認可してようやく「再生計画」となります。
個人再生に成功したにもかかわらず、再生計画通りの返済できなくなってしまうと、債権者に多大な迷惑がかかってしまいます。
個人再生は債権者が本来回収できるはずだった債権を大幅に減らす制度です。既に債権者の権利を侵害しているのに、そのうえ「やっぱり支払いができませんでした」となると、債権者の損害は多大なものになります。
そのため個人再生では、再生計画が債務者の資力で本当に実行可能なものかどうかを裁判所が確認するステップが設けられています。
裁判所は債務者から提出された再生計画案を精査して、債権者が無事に弁済を受けられる内容であるか見極めます。
債権者の権利をこれ以上侵害しないように慎重に審査されるため、問題点があると再生計画案は「案」の段階で弾かれてしまいます。
2.再生計画案の書き方
個人再生は手続きが煩雑なことで有名ですが、中でも「再生計画案」の書き方には注意が必要です。
書式(テンプレート)や実際の書き方などについて解説します。
(1) 書式(テンプレート)について
再生計画案の書式は裁判所に用意されています。
インターネット上に書式を公開している裁判所もあるので、お住まいの住所を管轄する地方裁判所に問い合わせてください。
【参考】千葉地裁
その他、各地の弁護士会なども書式を公開していることがあります。弁護士に相談したときに確認してみるといいでしょう。
他の裁判所が用意した書式を流用できる場合があるかもしれませんが、裁判所によっては専用の書式を必須としているところもあるようです。必ず弁護士や裁判所に確認をとってください。
(2) 書き方
ここからは先に挙げた千葉地裁の書式を例にして、再生計画案の書き方を説明します。
多くの裁判所の書式に応用できると思いますが、先の通り、失敗しやすいものですので、実際に作成するときは弁護士に作成してもらうことを強くお勧めします。
当事者の名前
「再生債務者」とは、個人再生をする本人のことです。個人再生をする人の名前を記入します。
「再生債務者代理人」には、個人再生をする人が依頼した弁護士の名前を記載してください。
再生債権に対する権利の変更
この項目から書式による差異が激しくなります。
「再生債権に対する権利の変更」の項目では、個人再生後に支払うことになる債務の額を確定させます。
注意しなければならないのは、千葉地裁の書式のように「免除を受ける額」を書く書式と、「支払いをする額」を書く書式があることです。
免除を受ける額を書く場合、例えば「80パーセントに相当する額」など免除される部分を書きます。実際に記載するのは数字のみです。
支払う額を書く書式では、「債務額の20パーセントに相当する額」など、免除された後に支払う部分を書きます。こちらも実際に記載するのは数字のみです。
[参考記事]
個人再生の最低弁済額|月々の支払いはいくらになるの?
別除権付債権に関する定め
個人再生では別除権はほぼ認められないので省略します。
別除権が認められるケースでは、弁護士の指示に従って書いてください。
共益債権及び一般優先債権の弁済方法
税金、養育費や損害賠償金などの「個人再生をしても減免されない債務」を支払う方法を記載します。
基本的には欄を埋めていけば問題ありませんが、書式によってはわかりづらいこともあります。弁護士に聞きながら埋めていきましょう。
返済計画(弁済方法)
個人再生後の毎回の支払額や、支払いの頻度などを書きます。
個人再生は原則3年で完済できるように支払いを行います。支払期間は原則3年となるように記載してください。
支払いの頻度については「3ヶ月に1回以上」であれば良いとされています。毎月払う人も多いですが、3ヶ月に1回の頻度で完済が可能であれば、3ヶ月に1回、つまり年に4回の支払いでも問題ありません。
端数に関しては初回か最後の支払いでまとめて支払うことが多いため、その旨を欄に従って書いてください。
支払いの方法については、振込、持参、その他などを選べます。支払った証拠が通帳に残る振込払いを選択するのが無難でしょう。
ただしその場合、振込手数料は債務者の負担となります。
住宅資金特別条項を利用する場合
書式には住宅資金特別条項、通称「住宅ローン特則」を利用する人に向けた項目もあります。
設定された項目に従って書けば大きな問題はありませんが、主に2つの注意点があります。
- 契約書の内容を正確に記載する:再生計画案には、住宅ローンの契約書に記載された「契約書のタイトル」や「契約日時」およびその他の情報を間違いのないように記載してください。必要に応じて契約書のコピーを添付する必要があります。
- 物件の情報や債権(債務)の額も正確に記載する:住宅ローン特則の対象である住宅の詳細な情報も書く必要があります。家屋番号や床面積、地目や地積の情報まで必要です。抵当権についての情報を書くこともあるため、不動産登記簿は必須です。法務局で取得してください。
3.提出期限はいつまで?過ぎるとどうなる?
再生計画案の提出期限は、再生手続開始決定の際に裁判所によって決定されます。
具体的な時期は裁判所やケースによって異なりますが、再生手続開始決定から3~4ヶ月程度後になることが多いようです。
民事再生法第163条には、申立てまたは裁判所の職権で、この期限を伸長できる規定があります。
しかし申立てをすれば必ず伸ばせるわけではありません。伸長が認められるのは住宅ローン特則を使うときに債権者との協議が整っていないなど、正当な事情がある場合に限られます。
「いざとなったら伸ばせばいい」などと考えず、期限内に提出することを最優先に考えましょう。
なお、提出期限をすぎると再生手続が廃止されてしまいます。
廃止とはつまり、再生手続が終了するということで、早い話が個人再生に失敗したということです。
借金はそのまま残り、以前のような苦しい生活に戻ることになります。再生計画案は必ず期限内に提出してください。
4.再生計画案の作成は弁護士に作成してもらう
書式があるとはいえ、再生計画案には正確な情報や数字を記載しなければなりません。
間違いがあると補正を求められるなどして時間がかかってしまうので、弁護士に書類を作成してもらうべきです。
個人再生を成功させるならば、弁護士のサポートを受けることが重要です。個人再生をする際は、ぜひお早めに泉総合法律事務所の弁護士までご相談ください。