個人再生 [公開日]2021年1月13日

個人再生をしても養育費は減額されない(非減免債権)

個人再生をすれば、債務額を5分の1〜10分の1程度にまで減額してもらえる可能性があります。

しかし、個人再生で「全ての債務」を減額できるのかと言えば、そうではありません。
例えば、滞納した税金等は満額の支払義務が残ります。

離婚率が高くなっている昨今、養育費を払い続けている人も多いと思います。
中には払えずに滞納している人もいるでしょう。

実はこの「養育費」も、個人再生をしても減額されません。

ここでは、養育費と個人再生との関係を詳しく解説していきます。
養育費の滞納があり、個人再生を検討している人はぜひお読みください。

1.養育費は「非減免債権」で減額されない

冒頭でも述べましたが、個人再生をしても養育費は減額されません。

養育費は子供の成長に必要なお金であり、これを減らすことで子の成長に悪影響が出るかもしれません。
そういった理由から、個人再生をしても養育費は減額されず、全額を支払う義務が継続します。

こういった「個人再生をしても減額されない債権(再生計画には含まれる)」のことを「非減免債権」と言います。

他にも、非減免債権でわかりやすいものが、「再生債務者が故意または重過失により他人の身体や生命を侵害したことによる損害賠償金」でしょう。

例えば、故意に他人を襲って怪我をさせ、相手の治療費などを支払う義務を負ったとします。

この状態で加害者が個人再生をして支払額が減ってしまうと、被害者は自分のお金で治療をしなければなりません。

被害者にお金がない場合は適切な治療を受けられず、命に関わる事態に陥ってしまう可能性もあります。

こういったことを防ぐために「非減免債権」というものが設けられているのです。

2.個人再生における養育費の具体的な扱い

「では、養育費を抱えた状態で個人再生をしても意味はないの?」と思う人もいるでしょう。

もちろん、意味がないわけではありません。

滞納が養育費だけならばこの限りではありませんが、その他の借金も抱えている場合、個人再生によって養育費以外の債務が圧縮されれば生活に余裕ができ、養育費が払いやすくなるという効果が期待できます。

ただし、既に滞納している養育費と今後発生する養育費で扱いが変わるため、個人再生をする前に扱いの違いを理解しておく必要があります。

個人再生をすると養育費がどうなるのか、少し詳しく見ていきましょう。

(1) 滞納している養育費について

例えば債務総額が1,000万円として、そのうち45万円が滞納している養育費だったとします。
そして、毎月3万円の養育費を支払う約束だったと仮定します。

この状態で個人再生をした結果、債務総額が5分の1になったとします。
(つまり、返済部分は20%でよくなったということです。)

非免責債権は「再生計画には含まれる」ので、弁済期間が3年だった場合、滞納した養育費の20%部分を3年で支払うことになります。

よって45万円の20%である9万円を、36ヶ月の分割払いで支払います。
1ヶ月あたり2,500円の支払いを、3年間続けることになります。

しかし、45万円から9万円を引いた36万円の支払義務も残っています。

この36万円は個人再生の返済期間が終わった後に「一括払い」することになります。

そのため個人再生の返済期間中は、一括払いに備えて毎月お金を積み立てておく必要があります。

(2) 新しく発生する養育費について

前記の例で言えば、個人再生によって毎月2,500円を支払えばいいことになります。

しかしそれはあくまで「滞納分」の支払いです。
それとは別に、毎月3万円の養育費を支払う義務は当然生じます。

つまり上記のケースでは、支払総額は毎月3万2,500円になります。

3.非減免債権の支払いが苦しい場合

何度も述べたように、養育費は減免されません。最終的には全額を払うことになります。
月々の返済はできても、最後の一括返済が問題となる可能性があります。

現実的に支払えない場合は、一括払いのものを分割払いできないか、あるいは一定期間猶予してもらえないかを債権者に交渉してみましょう。

ただし、個人間で交渉をするとお互いに感情的になったり、書面を残さないことで後日トラブルに発展したりするおそれがあります。

弁護士を挟んで冷静に交渉し、結果を書面で残すことをおすすめします。

【個人再生がバレないように優先的に支払ってはだめ?】
「養育費を払っている相手に個人再生のことを秘密にしたい」「個人再生に反対しそうだから知られたくない」…こう考える人もいるでしょう。
しかし、個人再生のことを知られたくないからといって、個人再生で整理する債務から養育費を外す目的で滞納した養育費を先に支払うのは避けてください。
個人再生には「債権者平等の原則」といって、全債権者を平等に扱う原則があります。特定の債権者へ優先的に弁済を行うと、この原則に反してしまい、支払った分を個人再生後の返済額に上積みされてしまうことがあります。
養育費に限らず、個人再生の前に誰かに弁済をしたいと考える際には、必ず事前に弁護士と相談してください。

4.養育費などの非減免債権は弁護士に確認を

養育費などの非減免債権は個人再生をしても減額されないので、個人再生をするにあたり注意が必要です。

ご自身の債務が非減免債権に当たるかどうか、非減免債権がある場合に個人再生をするにあたりどのような点に気を付けるべきか等は、ご自身ではなかなか分からないことも多いと思われます。

減額できない債務(非減免債権)がある場合でも、どうぞ一度弁護士までご相談ください。

[解決事例]

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