ADHDなど「大人の発達障害」で借金をしたら
近年、大人の発達障害により日常的に生きにくさを感じる人が増えているといわれています。
ADHD等の発達障害があると、周囲と同様の行動が取れないという悩みだけでなく、自己管理や金銭管理が難しいという問題に直面します。発達障害が原因で借金をしてしまうことがあるのです。
そこで今回は、ADHD等の発達障害と借金について解説します。
1.ADHD(発達障害)と借金の関係
上手にお金を管理したいのに衝動的に物を購入する癖や、ギャンブルに走る癖が治らず借金を繰り返してしまう方は、ADHD等の発達障害の可能性があります。
発達障害とは、脳機能の発達上の個性があることにより、日常生活や社会生活で生きにくさを感じている状態を指します。
発達障害には、主に自閉症スペクトラム障害、学習障害、チック障害、ADHD(注意欠陥多動障害)があり、この中でも最近よく取り上げられるのがADHDです。
大人になって社会生活に馴染めないことに気づき、精神科等を受診するケースが増加しています。
大人のADHDの場合には、鍵を忘れる、時間に遅れる、時間やお金の管理ができない(金銭感覚がおかしい)などの不注意の傾向が強く出るケースが多いようです。
また、路上販売や訪問販売に騙されやすいこともあるようです。
多額の借金を抱えているケースやギャンブル依存症の人を診察してみると、実はADHDが隠れていたというケースも少なくありません。
ADHDの場合、不注意、多動性、衝動性のいずれかの症状またはその混合した症状を抱えています。
中でも「衝動性」では、欲しいと思ったらすぐに物を購入してしまうという行動例が挙げられます。
無計画にお金を使い無駄に出費してしまう、ダメだと分かっていても購入を控えられないなどは、ADHDの特徴なのです。
[参考記事]
買い物依存症になる人の特徴は?その原因・心理と対策・治し方
2. ADHDや発達障害による借金癖を治す方法
ADHDや発達障害の方に借金癖がある場合は、症状に合わせて対策を取る必要があります。
(1) 病院で診断を受ける
「自分はADHDや発達障害かもしれない」と考えても、病院を受診するのはハードルが高く、なかなか治療に進めないという方も多いでしょう。
また、傾向はあるものの、自分はADHDではないと結論づけてしまう人がいます。
しかし、現状として借金癖があるなどの問題を抱えており、他にも発達障害の傾向に当てはまる場合は病院を受診してください。
仮にADHDであった場合には、診断を受け適切な対処法を知ることで楽になるでしょう。
また、別の精神疾患や病気にかかっているケースもあるため、医師による診断が不可欠です。
(2) クレジットカードを利用しない
お金の管理に問題があると分かっている場合は、クレジットカードの利用を控えてください。
というのも、ADHDの人は、数字が苦手である可能性が高いということが明らかになっているためです。
例えば、「3万円支払った」といわれても、自分にとってどれほどの額なのかがうまくイメージできません。「あとどれくらいお金を使って良いのかわからない」ということです。
クレジットカードだと、レシートの数字だけでお金を管理してしまうため、お金を管理しにくくなります。
一方、現金なら「今月はいくら」と決めれば、現金がなくなっていく段階でお金がなくなる感覚を得られます。
(3) 周囲のサポートを得る
ADHDや発達障害の方は、周囲からは「怠けている」「お金にルーズだ」という印象を持たれがちですが、実際はその逆で、本人は一生懸命に努力し物事に取り組んでいることが多いのです。
悩んでいる段階で専門家のサポートを得られれば、問題が大きくなる前に対処することもできます。
しかし、誰にも打ち明けられずストレスを抱えながら毎日生活しているという方も少なくありません。
この場合は、うつ病を発症してしまう、ストレス解消のためにギャンブルやお酒、ショッピングに依存してしまうという人もたくさんいます。
これを解消するためには、周囲のサポートが必要不可欠です。
まずは病院で診断を受けることが重要ですが、その後は周囲に自分の状態を打ち明けましょう。
発達障害の影響でできないこと、難しいことを伝えれば、職場でのストレスも軽減できます。
人に話すことを躊躇する気持ちは当然です。しかし、家族や友人、職場の上司、自助グループなどに話すことで解決の一歩に踏み出すことができるため、勇気を出して相談してみてください。
発達障害の方は、自立支援医療制度で医療費の負担額を軽減できる可能性もあります。また、心身障害者医療費助成制度を利用する方法も考えられます。
発達障害が原因でうつ病となり、就労が難しい場合には生活福祉資金貸付制度も利用できるでしょう。
3.返済できない借金を解決する方法
発達障害が原因で多額の借金を抱え、返済できなくなってしまった場合には「債務整理」を検討しましょう。
直接的な理由がギャンブルや浪費であったとしても、債務整理で借金問題を解決することは可能です。
債務整理には、任意整理、個人再生、自己破産等があります。
浪費やギャンブルが借金の理由である場合には、自己破産は難しいケースもありますが、発達障害が原因であればきちんと医師の治療を受ける、経済的更生の意思を示すことで、自己破産が認められるケースがほとんどです。
[参考記事]
ギャンブルで作った借金でも自己破産できる!
借金の額や安定した収入があるか等によってどの債務整理が適切かは変わります。
まずは、債務整理をすべき状態かどうかを弁護士に相談してみるべきでしょう。
4.発達障害が原因の借金は、弁護士に相談を
借金問題を人に話したくないという方もいらっしゃるでしょう。ADHD等の発達障害が原因であることも、他人に知られたくないと考えるのは当然のことです。
しかし、現在借金問題を抱えている場合には、これを解決することが先決です。
ADHDなどの発達障害が原因で借金をしてしまった場合には、医師と弁護士の両方の支援が必要です。
まずは医師の診断を受け治療を進めましょう。
そして、借金の滞納がある場合には、弁護士に債務整理の相談をすることをお勧めします。