名義貸しの違法性と被害に遭ったときの対処法
親しい人から「絶対に迷惑をかけないから名前だけ貸してほしい」と言われたことはありませんか?
当選したい懸賞やチケットの申し込み程度であれば頼まれたことがある方も多いと思いますが、中には借金や商品購入目的で依頼してくる人もいます。
親切心から「名前だけなら…」とつい応じてしまいそうになりますが、そもそも「名義貸し」は違法な行為になります。
また、借金や口座の開設・携帯契約などで名義を貸すと、その後トラブルに巻き込まれてしまう可能性もあります。
ここでは、名義貸しの実態、リスク、断り方、被害に遭ったときの対処法を解説します。
1. 名義貸しについて
「名義貸し」とは、その名の通り、お金を借りたり商品を購入したりするときに名義を貸すことを意味します。
配偶者や親、親しい友人、恋人などから「限度額が一杯になってしまったから」「ブラックリスト入りしていて借りられないから」「ローンを組みたいから」などと頼まれると、状況によっては断りにくいときもあると思います。
相手が困っているときは力になりたいと思うのが人情ですが、「名前だけなら実害がない」と思うのは大間違いです。
名義貸しは非常にリスクの高い行為で、れっきとした法律違反・犯罪(詐欺行為)なのです。
また、親族や親しい友人以外の場合は、謝礼金で誘ってくるというケースが多いです。数万円の謝礼の代わりに名前を貸して欲しいと持ちかけられます。
社会経験の乏しい学生などがターゲットとなり、消費者金融の借入実態調査を装ったアルバイトでローンなどの申し込みをさせられるケースもあります。
また、闇金などが貸付の条件として名義貸しを依頼することもあるようです。
どのようなケースでも、トラブルがあったときにペナルティを課されるのは名義人である自分であることを忘れてはいけません。
2.名義貸しの種類と違法性
では、名義貸しには具体的にどのような例があり、それぞれどのような違法行為になる可能性があるのでしょうか
(1) カード(クレジットカード・キャッシングカード)
カード作成の際に名前を貸すのは「あくまで便宜上のことであり、それほど大したことはない」と思いがちです。
しかし、他人の名を語って借金をするのは、クレジット会社や消費者金融を騙す「詐欺行為」で「詐欺罪」に当たります。
詐欺罪の刑罰は「10年以下の懲役」で、罰金刑がない非常に重い罪です。
また、自分の名義のローンカードを他人に貸すことも名義貸しに相当します。
規約ではカードの貸与、譲渡は禁じられているので、親しい間柄であっても気軽にカードを貸すのは厳禁です。
(2) 携帯電話
携帯名義貸しは、非常に問題の多い行為です。
販売ノルマがあるなどの理由をつけて、「謝礼を払うから名義を貸して欲しい」と言われ、すぐに解約することを前提に契約をもちかけられることがあります。
しかし、その後携帯は犯罪組織に転売され、オレオレ詐欺や振り込め詐欺の連絡に使われることもあります。
実際に携帯を詐欺に使われ、名義貸しした人が警察に勾留されたという例もあるので、安易な気持ちで応じるのは危険です。
(3) 銀行口座
銀行口座の名義貸し・口座貸しも違法です。
銀行口座の名義貸しの話は闇金から持ちかけられることが多く、本人名義の口座を新たに作って、その情報とカード、通帳を渡すことを条件にお金を貸すと言われます。
貸した口座は、闇金の振り込み口座や振り込め詐欺に使用されます。
(4) FX口座
最近では、FX口座の名義貸しも問題視されています。
第三者のFX口座はマネーロンダリング、脱税に使われることが多く、貸すだけで犯罪に巻き込まれる可能性があります。
FX口座の名義貸しは、いくらかの報酬と引き換えに交渉を持ちかけられますが、目先のお金に惑わされるのは非常に危険です。
3.名義を貸すことのリスク・デメリット
次に、犯罪になるなどの違法性とは別に名義貸しをしてしまった場合のリスクについて考えてみましょう。
(1) 返済義務があるのは名義人
借入で名義貸しをした場合、基本的に返済義務があるのは名前を貸した人です。
もし、借りた相手が返済できなくなった場合には、督促が自分のところにくるので、名義人が代わりに支払いをしなければなりません。
(2) 総量規制に影響がでる
借金で名義貸しをした場合、契約上借りているのは名義人なので、いざ自分が借入をするときに総量規制(消費者金融の場合、年収の3分の1を超えて貸し付けをすることは法律上禁じられています)にひっかかる可能性があります。
キャッシングやローンは全て貸金業法の影響を受けるので、名義貸しによって自分が借りたいときに借りられなくなる可能性があるのです。
(3) 知らない間にブラックリスト入りする
借金で名義貸しをして、相手が滞納したり返済できなかったりした場合は、自分がブラックリストに入れられます。
1度ブラック入りすると、以後5~7年は借入や新たにクレジットカードを作ることができなくなるので、社会生活にも大きな影響を与えます。
ブラックリストについては以下のコラムをご覧ください。
[参考記事]
信用情報機関とは?|信用情報機関の違い(CIC・JICC・KSC)とブラックリスト
(4) 回収できる保証がない
他人が支払うべき債務を肩代わりしたときには、本来支払うはずだった人に請求することが可能で、その権利を「求償権」と言います。
名義貸しをして借金の督促が自分のところにきた場合、自分が肩代わりして返した分は求償権が生じます。
しかし、これは権利があるというだけで、必ず回収できるわけではありません。
肩代わりした分を強制的に支払わせるには、裁判を起こして強制執行することになります。
しかし、名義貸しを頼んできて、その支払いもしない人に、肩代わり分の請求をしても回収できない可能性は高く、きちんと支払わせるのは難しいのが現実です。
4.名義貸しを頼まれたときの対処法
名義貸しはリスクの高い違法行為であることは分かりましたが、実際に頼まれたときはどう対処したら良いのでしょうか?
(1) 一切無視する
名義貸しを頼んできた人が、それほど親しくない人や怪しい業者であれば一切無視しましょう。
借金はもちろん、各種契約で個人情報を渡すと犯罪に利用されたり、同業者に情報を横流しされたりする可能性もあるので、名義貸しの話がでたら、一切コンタクトをとらないようにしましょう。
(2) 現金を貸す
家族や親しい友人など、どうしても断れない間柄の人から頼まれた場合は、名義ではなく現金を貸しましょう。
現金を貸すリスクは、お金は戻ってこないかもしれないということだけです。
仮に返してもらえなかったとしても、法律違反になることもなければ、ブラックリスト入りの心配もありません。
しかし、貸したお金を返してもらえないのも困るので、貸す場合は契約書を作成したり、万が一返ってこなかったとしても支障がない額にしましょう。
(3) 債務整理を勧める
もし、借金を抱えている人が名義貸しを頼んできた場合は、名前やお金を貸すのではなく、債務整理を提案するのも一案です。
債務整理をすれば合法的に借金を減らすことが可能です。弁護士事務所に行って相談することをやんわりと促してみましょう。
5.名義貸しをしてしまった場合の解決法
では、もし既に名義貸しをしてしまった場合はどうしたら良いのでしょうか?
(1) 借入金を返済する
名義貸しをして負債が生じたものの、相手に支払ってもらう目途が立たない場合は、自分で返済をするのが現実的です。
相手に支払ってもらいたいのはやまやまだと思いますが、名義人は自分なので、契約上借りているのはあくまでも自分です。滞納が続いてしまうとブラックリスト入りしてしまう可能性が高いです。
督促がきたら自分で返済をして、できるだけ早く借金をなくすのが手っ取り早い方法です。そして、契約を解除し、以後は絶対に名義貸しに応じない様にしましょう。
(2) カード発行会社に連絡する
名義貸しが借金や商品購入目的の場合、キャッシングカードやクレジットカードの発行会社に連絡し、名義貸しをしてしまったことを正直に申告し、カードの利用をストップしてもらうようにしましょう。
名義貸しは規約違反ですので、正直に申告するのは抵抗があるかも知れませんが、これ以上のカードの利用はストップさせるべきです。
(3) 警察に相談する
口座開設や携帯の契約などで名義貸しをして、犯罪に巻き込まれたときは警察に相談しましょう。
6.借金で困ったら弁護士へ相談を
「名前だけならいいかな?」と気軽に名義貸しに応じてしまうと、とんでもないリスクを抱えることがお分かり頂けたと思います。
誰かに名義貸しを頼まれても応じないようにしましょう。
また、既に名義を貸してしまい、その後踏み倒されて返せなくなってしまった場合などは、弁護士にご相談ください。
泉総合法律事務所は、債務整理の実績が豊富にございますので、名義貸しのトラブルについてもご相談くだされば、ご相談者一人ひとりに合った解決方法をご提案させて頂きます。
借金問題でお悩みの方は、どうぞお早めにご連絡ください。