借金返済 [公開日]2020年3月12日[更新日]2020年6月25日

給料ファクタリングによる破産も弁護士へ相談できる?

近年、給料ファクタリングによる破産やトラブルが続発・深刻化しており、弁護士会が注意を呼びかけています。

この記事では「給料ファクタリング」の概要や危険性などについて紹介していきます。

給料ファクタリングを利用してトラブルになる理由に加え、既に給料ファクタリングを利用して現在トラブルの真っ只中にいる人のために、具体的な解決方法などを述べていきます。

まだ給料ファクタリングを利用したことがない人は、転ばぬ先の杖として。
既に給料ファクタリングを利用している人は、トラブルを予防するために。
そしてトラブルの渦中にいる人は、そこから抜け出すために、本記事の内容をぜひ参考にしてください。

1.「ファクタリング」とは?

本来の「ファクタリング」とは、中小企業等が売掛金債権をできるだけ早く現金化するための方法です。

商取引では、いつも現金払いというわけではなく、物やサービスを提供してから少し経った後に支払日が来ることが多くあります。商慣習上「掛け取り引き」と言われている支払い方です。

例えば、米屋AがレストランBに毎日お米を納品している場合、毎回現金払いでやりとりをするのではなく、毎月末までにAが納品したお米の代金を、Bが翌月末にまとめて払う、などという方法で取引が行われることがあります。

つまり米屋Aは、お米を提供してから実際に入金されるまでの間にタイムラグがあるのです。

このタイムラグの間に資金繰りが悪化することがあるため、経営基盤が強くない中小の事業者にとっては頭の痛い問題となっています。

そこで登場するのがファクタリング業者です。

物やサービスを提供したことで発生した債権を「売掛債権」「売掛金債権」などと言いますが、ファクタリング業者は事業者から売掛債権を買い取って現金を渡します。

事業者はその現金を運転資金にして、営業を続けられるというわけです。

その後、売掛債権の弁済期が来たら、ファクタリング業者は事業者から回収するか(「二者間契約」と言います)、事業者がファクタリング業者に売掛債権を譲渡して、ファクタリング業者が売掛先から直接売掛金を回収して(「三者間契約」と言います)、現金を受け取ります。

ファクタリング業者は売掛債権を買い取るときに手数料を徴収しているので、その分が利益となります。

2.給料ファクタリングとは?

給料ファクタリングは、個人が勤務先に対して持つ給与債権を利用したファクタリングです。

一般的な労働契約では、「毎月何日締め、翌月何日払い」というように働いてから実際に給与が支払われるまでにしばらく時間がかかります。

その間、労働した側は勤務先から給与をもらえるという債権を持っていますし、勤務先は労働者に給与を支払わなければならない債務を負っています。

この給与債権をファクタリング業者に買い取ってもらって現金化できるのが、給料ファクタリングの特徴です。

事業者が利用していたファクタリングを、会社員が利用できる形に落とし込んだものが、給料ファクタリングだと考えてください。

3.給料ファクタリングの問題点

「手数料が必要とは言え、現金が必要な人にとって給料ファクタリングは良いシステムなんじゃないの?」と思う人もいるかもしれません。
しかし実際には、給料ファクタリングのせいで経済的に破綻している人が多くいるのです。

これは、手数料が高額であることが主な原因です。
業者によっては「すぐに10万円渡す代わりに、給料日になったら15万円支払ってください」と請求するところもあるようです。

そして利用者が支払えない場合、「給与債権の譲渡を会社にバラしますよ」と脅す業者も存在します。

労働基準法では、「給与は労働者に直接支払う」ことになっています。
給与債権を譲渡された人に給与を支払うのは禁じられており、雇用契約書に給与債権の譲渡禁止条項が明記されていることもあります。

従いまして、給料ファクタリングの場合は理論上,二者間契約しかないのですが、もし給与債権を譲渡した場合、この条項に違反してしまうため、会社が労働基準法違反となってしまう可能性があります。

労働基準法違反のキッカケを作った従業員に、会社側から何らかのペナルティを課せられてもおかしくありません。
業者はこれを見越して脅してくることがあるのです。

誰にも相談できないままファクタリング業者に無理な支払いを続け、結果的に経済破綻をする例が後を絶ちません。

4.給料ファクタリングは貸金業に該当する?

給料ファクタリングは債権譲渡の形をとっているため、貸金業法や利息制限法、出資法などの法律の適用外であり、業者が高額な手数料を設定しても野放し状態となっていました。

しかし、様々な問題点が浮き彫りになったため、給料ファクタリングを取り巻く環境は変化を見せています。

給料ファクタリングは実質的に、「給料ファクタリング業者が利用者にお金を貸し、一定期間経過後に利用者が給料ファクタリング業者に利息をつけて返済する契約」という見方ができます。

そのため「給料ファクタリングは貸金業に該当するのでは?」という論争がありました。

そして2020年3月5日、金融庁が「給料ファクタリングは貸金業に該当する」という見解を示しました。

この影響のためか、同年3月24日に東京地裁が、給料ファクタリングの事案2件について金融庁と同じ判断を下しました。

[参考記事]

違法な給料ファクタリングに注意|最新の金融庁見解や裁判例を紹介

給料ファクタリング業者が貸金業に該当する場合、以下のような規制を受けることになります。

(1) 貸金業者として登録しなければならない

貸金業法に則って、給料ファクタリング業者は正式に「貸金業者として」登録を受けなければなりません。

貸金業法の適用を受けるため、より行政や司法の監視の目が届きやすくなります。

(2) 出資法が適用される

給料ファクタリングが債権譲渡ではなくお金の貸し借りであると判断されれば、出資法の対象にもなります。

出資法の上限金利は年20%であるため、手数料と称した高額な料金にも規制がかかると考えられます。

「給料ファクタリング業者は貸金業に該当する」と確定した場合、貸金業者の登録を受けていないファクタリング業者や、手数料が計算上年20%を超える金利を要求している業者は、違法に営業をしていることになります。

刑事処罰の対象にもなり、懲役10年以下または3000万円以下の罰金、あるいはその両方が課されるケースがあります。

5.既に給料ファクタリングで生活が苦しくなっている場合

では、過去に給料ファクタリングを利用したことがあり、現在支払いで苦しんでいる場合はどうすればいいのでしょうか?

(1) 過払い金返還請求

一般的な貸金業者との契約では、利息を多く払いすぎていた場合、超過分を貸金業者から返してもらえます。
いわゆる「過払い金返還請求」です。

もし給料ファクタリング業者が貸金業者に該当するのであれば、支払った手数料は利息に相当すると考えられます。

その利息が実質的に年20%を超える場合、理論的には超過した分を返してもらえるはずです。

既に金融庁や裁判所が「給料ファクタリング業者は貸金業者である」という見解を出しているので、この理論が認められる可能性は高いと思われます。

このため、弁護士を通じて給料ファクタリング業者に請求すれば、過払い金を返してもらえる可能性があります。
まずは弁護士に確認を取ることをおすすめします。

(2) 給料ファクタリング契約の無効を主張

ファクタリング業が貸金業に該当するにも関わらず、業者が貸金業者として登録を受けていないなどの場合は、違法な契約であるとして、契約自体を無効にできるかもしれません。

この場合は下記の「不法原因給付」も合わせて主張することになるでしょう。

(3) 不法原因給付を主張して債権譲渡で得た代金の返還を拒否

契約を無効にした場合、契約前の状態に戻すために受け取った品物やお金などを返還する必要があります。

しかしそれが不法な原因に基づいて行われたものであれば、「不法原因給付」にあたるため、返還しなくてもいいことになっています。

不法原因給付の例には、愛人契約がよく用いられます。

例えば、仮に男性が愛人契約を結ぼうと女性にお金を渡し、女性がお金を受け取った後で一方的に契約を破棄して交際を断ったとします。
この場合、怒った男性が「契約違反だ!お金を返せ!」と裁判所に訴えても、男性のしたことがそもそも公序良俗違反であり不法なため、女性は受け取ったお金を返さなくても問題ありません。

(「公序良俗違反」とは、社会常識に極めて反するようなことを言います。)

これと同じで、給料ファクタリング契約が不法と認められれば、給与債権を譲渡したときにファクタリング業者から受け取ったお金は「不法な給付」と扱われるため、返還する必要がなくなるのです。

(4) 自己破産

給料ファクタリングのせいで生活が苦しくなり、貸金業者などからお金を借りて生活費に充てている人もいるかも知れません。

もし銀行のカードローンや消費者金融からの借金、クレジットカードの支払いなどで多重債務状態に陥っているのであれば、自己破産をするのも一つの案です。

自己破産に成功すれば借金が帳消しになります。
自己破産をすると一定以上の自分の財産はお金に換えられて債権者への弁済に充てられてしまいますが、特に財産がなければ一切財産を処分しないで借金を帳消しにすることができます。

実際に全く財産を処分しないまま自己破産に成功している人も数多く存在します。

6.給料ファクタリングで困ったら弁護士へ

給料ファクタリングを給与の前借り感覚で使う人もいますが、手数料が高額な業者を使うなどして経済的な破滅を迎えてしまうケースが多く見られます。

給料ファクタリングを取り巻く状況は大きく変わってきており、今後は過払い金の請求などが認められる可能性が増しています。

もし現在給料ファクタリングのせいで生活が苦しいのであれば、弁護士に相談してください。
過払い金の請求など、最適な方法を考えてくれます。

特に過払い金については、既存の借金と相殺して余った部分が手元に返ってくるため、経済状況が一気に好転する可能性もあります。

弁護士に相談することで解決できるケースは非常に多いです。まずは泉総合法律事務所までご相談ください。

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