奨学金滞納で連帯保証人や家族にどういう影響があるか
学費や生活費などに困難がある場合、奨学金を申し込む学生も多いでしょう。
しかし、奨学金を受け取るためには様々な条件をクリアする必要があります。「連帯保証人」をつけることもその条件としているところは多いでしょう。
今回は、奨学金の連帯保証人について、なれる人、なれない人の条件や、将来的な滞納による連帯保証人への影響・トラブル事例などを解説します。
1.奨学金における連帯保証人について
奨学金を受け取る際に、人的保証を選ぶ場合には必ず連帯保証人が必要です。
まずは、この連帯保証人についての概要を解説します。
(1) 奨学金の連帯保証人の条件
連帯保証人は誰でもなれるわけではなく、いくつかの条件があります。
まず、奨学金の連帯保証人は原則として親になってもらう必要があります。父親か母親のどちらかで、一定の収入がある人が連帯保証人となれます。
親がいない場合には、4等身内の親族(祖父母、おじ、おば、別生計で収入がある兄弟など)が連帯保証人になれます。
他にも、以下のようなケースでは連帯保証人になることはできません。
- 本人が未成年で、親権者が未成年後見人でない場合
- 連帯保証人が未成年、学生の場合
- 本人の配偶者の場合
- 債務整理中の場合
- 貸与終了する月の末日までに本人が45歳を迎える場合に、連帯保証人が60歳を超える場合
なお、人的保証を選択する場合には、連帯保証人だけでなく保証人も必要となります。
→保証人と連帯保証人の違い
(2) 連帯保証人がいない場合の機関保証
人的保証を選びたくても、年収や年齢などで条件に合う親族がいない場合もあります。この場合に備えて、奨学金制度では機関保証も用意しています。
機関保証とは、親族などが保証人になる代わりに保証機関が保証人になる制度のことを指します。
(なお、奨学金の種類によっては機関保証を選択する場合でも連帯保証人を必須とするケースもあるようです。)
機関保証の場合、奨学生本人が保証料を負担しなければいけません。奨学金で借りたお金から保証料が差し引かれるため、実際に受け取れる奨学金が少なくなります。
人的保証では保証料を支払う必要はありませんので、毎月入ってくる金額に差が出るでしょう。
勿論、人的保証・機関保証どちらの場合でも卒業後に返済が必要です。
2.本人と連帯保証人間のトラブル
本人と連帯保証人の間でトラブルとなるのは、奨学金の返済が滞った場合です。
奨学金は、月々の負担を軽くするため20年近くで返済計画を立てることもあり、将来的に返済できないリスクを背負う可能性もあります。
奨学金の返済が滞った場合の連帯保証人への影響にはどのようなものがあるのでしょうか。
なお、奨学金の返還ができない場合は、申請すれば返還猶予などの救済制度を受けることができます。詳しくは以下のコラムをご覧ください。
[参考記事]
奨学金の返還期限猶予が満了しても払えない場合の対処法
(1) 債務の一括請求
奨学金を借りた本人が学校を卒業してから返済を止めてしまった場合、一定の期間が経過すると連帯保証人に請求がいってしまいます。
連帯保証人は、本人が支払わない場合には、返済しなければいけない責任を負っています。
また、一括での支払いを要求されてしまいますので、数百万円という大金を一回で支払わなければいけない状況に追い込まれます。
連帯保証人をお願いした両親や親族に金銭面で多大なる迷惑をかけることになるのです。
特に、支払いができないことを連帯保証人に告げないままいきなり一括請求がいってしまうと、関係にもヒビが入ってしまう恐れがあります。
(2) 主債務者の自己破産等の効果は保証人に及ばない
奨学生本人が失業などにより生活が困窮し、借金の返済に追われるなどの状況に追い込まれると、自己破産などの債務整理を検討するケースも多いでしょう。
債務整理をすれば、奨学金を含む借金が減額・免除されることになるため、本人は返済に悩む生活を終わらせることができます。
しかし、気をつけなければいけないのは連帯保証人の債務です。自己破産などで奨学金の支払いが免除されたとしても、免除の効力は主債務者である奨学生本人と債権者の間でしか生じません。
つまり、自己破産をすれば連帯保証人が残債を支払うことになるのです。
連帯保証人に返済能力がない場合は、一緒に債務整理を検討するなどの対応が必要です。
そのため、自己破産・個人再生などの債務整理を選択するならば、連帯保証人には事前に相談しておく必要があります。
[参考記事]
個人再生で奨学金滞納を解決|保証人への影響は?
[参考記事]
返済できない奨学金|自己破産をするとどうなる?
なお、債務整理の中でも「任意整理」を選択できた場合は、連帯保証人への影響を0にできる可能性があります。債務に困り始めたら、にっちもさっちもいかなくなる前に、早めの対応が大切です。
3.本人や連帯保証人が死亡した場合
最後に、奨学生本人や連帯保証人が死亡した場合の奨学金の返済についてご説明します。
(1) 本人が死亡した場合
大学等の奨学金の場合、多くの方は「独立行政法人日本学生支援機構」、通称「JASSO」から奨学金を借りている方が多いでしょう。
本人が死亡した場合については、JASSOのホームページや奨学生のしおりなどで確認することができます。
本人が死亡した場合には、返還の全部または一部が免除されます。また「精神または身体の障害により、労働能力を喪失、または労働能力に高度の制限を有し、返還できなくなった場合」も同様です。
減免には手続きが必要ですので、連帯保証人の方は手続きを行いましょう。
(2) 連帯保証人が死亡した場合
返済期間中に連帯保証人となっているご家族が亡くなってしまうというケースもあります。
この場合、契約に重大な影響を及ぼす事項であるため、債権者に対し連絡すべきです。そして、連絡後に新たに連帯保証人を付ける、機関保証を付けるなどの手続きが必要でしょう。
もっとも、このような事態はよくあります。また、きちんと返済を続けていれば基本的には奨学金を貸した団体が連帯保証人の死亡を知ることはありません。
そのため、返済に問題がない場合はそのまま通告せずに支払いを続ける人も多いです。
ただし、返済が怠る可能性は誰にでもありますので、後々のトラブルを回避するためにも、債権者に連絡を入れるようにしましょう。
4.奨学金の債務整理は連帯保証人も一緒にご相談ください
奨学金を支払えない場合は、債務整理を行うことで借金問題を根本的に解決することができます。
このとき、連帯保証人にも迷惑がかかってしまうため、必要であれば連帯保証人と一緒に債務整理を検討することがおすすめです。
早めの対処で「任意整理で解決できる」「JASSOの制度で猶予を受けられる」など、解決の道筋も広がるため、奨学金の返済に関するお悩みがある場合はどうぞお早めに泉総合法律事務所の弁護士までご相談ください。