借金返済 [公開日]2020年4月30日[更新日]2021年11月11日

奨学金滞納で債権回収会社から連絡!差し押さえを受ける?

奨学金は、学校を卒業した後に、元学生である債務者本人が、毎月一定額を返還していくことになります。

しかし、仕事の都合や病気などで十分な収入が得られなくなってしまった場合、奨学金の返済を滞納してしまうこともあるでしょう。

この場合、奨学金の貸主より委託を受けた「債権回収会社」から督促の連絡が来る場合があります。
この債権回収会社からの督促も無視していると、最悪の場合、財産を差し押さえられてしまうでしょう。

債権回収会社からの差し押さえを回避するためには、一体どうすれば良いのでしょうか。
ここでは、主に日本学生支援機構(JASSO)からの奨学金借入について、債権回収会社からの差し押さえへの対応策をご紹介します。

1.奨学金を滞納した後の流れ

まず、奨学金を滞納するとどうなるのか、その流れと影響を見ていきましょう。

(1) 督促・取り立てが始まる

返還期限までに入金がないと、まずは本人に督促の電話がかかってきます。
最初の電話は「期限になりましたが入金がありません。どうしましたか?」といった物腰も柔らかな内容ですので、ここで次回の入金日を約束して支払えば、それ以上は何も問題ありません。

しかし、電話を無視したり、次回の返済も滞納したりすると、その後、督促状・催告書などの督促の書類が郵送で届くでしょう。

また、主債務者による滞納があると、連帯保証人などにも「主債務者が滞納しています」という旨の電話や通知書が行きます。

連帯保証人への影響について、詳しくは以下のコラムをご覧ください。

[参考記事]

奨学金滞納で連帯保証人や家族にどういう影響があるか

(2) 延滞金が加算・ブラックリストへ登録

入金しない状態が続くと、その間、約定の利息とは別の「延滞金」がどんどん加算されて、返済額が増えていってしまいます。
延滞金の額・計算方法については、以下の日本学生支援機構のページをご覧ください。

参考:延滞金|日本学生支援機構

また、滞納3ヶ月ほどで、信用情報機関に金融事故情報が登録されるでしょう(いわゆるブラックリストに登録)。
これにより、消費者金融から新たな借り入れをしたり、クレジットカードを作ったりすることができなくなってしまいます。

[参考記事]

ブラックリストとは|何年で消える?掲載のデメリットと確認方法

(3) 一括での支払を要求される

滞納が続くと、それまで分割払いだったものが、一括での支払いを請求されます。

奨学金に限らず、およそ借金というものは、決められた返済期限までに一括で返すのが原則です。
それを、借入の際に、貸主と借主の間で、「本来は一括で返すべきものだが、事情があり、借主が分割で支払うことを認める」という形で契約しているのです。

分割で支払うこと(借主による分割払いが認められていること)を、「期限の利益」と呼びます。
しかし、分割で支払えなくなった場合、借主はその「期限の利益」を剥奪され、貸主に一括で返済することを要求されるのです。

[参考記事]

「期限の利益喪失通知」が届いた後にするべきこと

ただでさえ支払いを滞納してしまっているのですから、期限の利益を損失しても債務者は一括で払えないのが通常でしょう。

(5) 債権回収会社への委託

4ヶ月ほど滞納が続くと、日本学生支援機構は、債権回収会社に対して、自身の債権の回収(取り立て)を委託するでしょう。

こうなると、ある日、突然見覚えのない債権回収会社から、督促の通知が届くことになります。

[参考記事]

債権回収会社(サービサー)からの督促は無視厳禁!突然の通知の対処法

2.債権回収会社とは?

債権回収会社とは、端的に言うと「債権の取り立てに特化した会社」のことで、「サービサー」とも呼ばれます。

サービサーとして活動するためには、法律に基づく許可が必要であり、誰でも自由に債権回収を代行できるわけではありません。

債権回収会社自体は沢山ありますが、奨学金関係で債権回収を請け負っている会社としては、以下の会社が出てくることが多いようです。

  • アルファ債権回収株式会社
  • 日立キャピタル債権回収株式会社
  • エム・ユー・フロンティア債権回収株式会社

[参考記事]

「アルファ債権回収株式会社」から連絡が来たら弁護士へご相談を

債権者が変わっても、債務の支払義務があることには変わりありません。
見知らぬ債権回収会社名からの連絡であっても、内容は必ず確認しましょう。

3.債権回収会社からの差し押さえの流れ

では、債権回収会社へ債権回収が委託された後は、どのような流れになるのでしょうか。

債権回収会社は読んで字のごとく、債権を回収することが目的の会社ですから、様々な方法で回収を試みてきます。

(1) 手紙などによる督促

まずは、債権回収会社から、回収業務の委託を受けた旨の連絡が来ます(受任通知)。

その後、督促状などの手紙・ハガキが債権回収会社から届きます。

(2) 法的手続への移行

督促状に反応しなかった場合(延滞の開始から約6ヶ月程度)、債権回収会社は法的手続に入るでしょう。

この場合に債権回収会社が選択する「法的手続」は、大きく分けて「裁判(訴訟)」もしくは「支払督促」の2種類です。
どちらも差出人が裁判所になっている郵便物で、決して放置してはいけません。

裁判を起こされる

裁判を起こされた場合、「特別送達」という郵送方法で、「訴状」が届きます。これを放っておくと、債務者が訴状の内容を全て自白した(認めた)ものとして扱われ、債権回収会社の主張どおりの判決が出てしまいます。

裁判所で発行された判決文は「債務名義」と呼ばれ、これに基づいて、債権者は、債務者の財産の差し押さえ等の強制執行が可能になります。

なお、民事訴訟では、最終的に和解で事件が終結することも多いですが、その場合の和解調書等も、同じく債務名義となります(この場合は、債務者が和解条件を守れずに期限の利益を失った時点で、債権者は強制執行が可能となります)。

支払督促

同じく裁判所からの特別送達で、「支払督促」という書類が届くこともあります。

これも裁判手続の一種です。簡易版の「訴状」ともいえるもので、放っておくと、最終的に、こちらも債権回収会社の主張どおりの債務名義(仮執行宣言付支払督促)が裁判所から発行されます。

支払督促が届いたら、まず同封されている書類(異議申立書)を使って「異議申立」を行なう必要があります。これを行なうと、手続が通常の訴訟に移行するため、債務名義(判決)の発行を後ろ倒しすることができます。

[参考記事]

裁判所から届く「特別送達」にはどう対応すればいい?

(3) 差し押さえ

何らかの方法で、債権回収会社が「債務名義」という種類の書類を取得したら、次は、その債務名義を使って、財産の差し押さえに進むことでしょう。

差し押さえの対象となる財産は様々ですが、給与・預貯金口座・不動産などが差し押さえられることが多いです。

給与の差し押さえ

給与の差し押さえが行なわれる場合、裁判所から勤務先に「この人の給与を差し押さえますから、本人に給与を支払わないでください。」という趣旨の通知(債権差押命令)が届きます。
そのため、まずこの時点で、(差押えをかけてきた債権者に対する)借金滞納の事実が、勤務先にばれてしまいます。

給与に関しては、一定の範囲までは、法律で差押が禁止されているので、その全額が差し押さえられるわけではありませんが、手取りの給与が減ると、生活に直結した影響が出るでしょう。

[参考記事]

給料差し押さえのリスク|会社にバレる?無視するとどうなる?

なお、会社役員の役員報酬や、自営・個人事業主の請負報酬などに関しては、給与のような法律上の保護(差押え範囲の法律上の制限)がなく、全額が差押えされてしまう可能性がありますので、注意が必要です。

預貯金口座の差し押さえ

銀行等の金融機関の預貯金口座の差し押さえも、多く行なわれています。

給与と違い、預貯金口座の差し押さえに関しては、差押えの範囲について、限度額がありません。そのため、差し押さえの時点で(差押命令が金融機関に届いた時点で)口座に入っている金額が債権者の請求額よりも低い場合には、口座残高の全額が差し押さえられてしまいます。

また、「給与」と「給与が振り込まれた後の口座の預貯金残高」は、財産としては明確に区別されるため、もし、給与が口座に振り込まれた直後に、その振込先の口座が差し押さえられた場合には、振り込まれた給与の全額が差し押さえられてしまい、その月の給与を本人が一円も使えない、などという事態になる可能性もあります。

[参考記事]

銀行口座が差し押さえられた!どうすれば良い?

不動産の差し押さえ

奨学金関連の滞納では、不動産が差し押さえられるケースは余りありません。手続費用、及び手続にかかる時間や手間を考えると、債権者の側からすると、効率が良いとは言えないためです。

しかし、借金の滞納が原因で、自宅(マイホーム)を差し押さえられる可能性はあります。
(※もっとも、自宅に対して住宅ローン債権者等の担保権が既に設定されている場合は、それでもなお配当余剰金が出る見込みがない限り、他の債権者がコストをかけて差し押さえに着手することはないでしょう。)

持ち家以外にも所有する不動産がある人は、そちらが差し押さえ対象になることもあります。

[参考記事]

不動産の差し押さえを受けるケースとは?

4.奨学金滞納で差し押さえられそうな場合の対処法

奨学金が返済できず、「このままでは差し押さえられてしまう!」と感じた時、債務者としてはどう対処するべきなのでしょうか。

(1) JASSOの各制度を利用する

奨学金の月々の返還額を捻出する余裕がなくなったら、まずは、日本学生支援機構(JASSO)に「減額返還」や「返還期限猶予」などを願い出ることを検討しましょう。

減額返還は、一定期間、1回当たりの返還額を半分または三分の一に減額できる制度です。災害や病気、失業などにより、返還が困難な事情があれば利用できます(ただし、延滞していない状態で願い出ることが必要です)。
なお、返還総額そのものが減額されるわけではありません。

これに対し、返還期限猶予は、減額返還と同様、災害や病気、失業などが理由で支払ができないときに、一定期間、返還を猶予して先送りすることができる制度です。

経済的に厳しいときに返還する負担がなくなるので、さしあたっての生活再建のためには適していますが、あくまで「返済期限を猶予する」だけなので、これまた返還すべき金額自体が免除されるわけではない点には注意が必要です。

この他、JASSOの各制度については以下のコラムをご覧ください。

[参考記事]

奨学金の返還期限猶予が満了しても払えない場合の対処法

(2) 分割払いの交渉

債権回収会社の目的は「債権を回収すること」であって、差し押さえはそのための一手段です。
債権者側にとって、差し押さえの手続には、相応の手間もお金もかかるため、差し押さえが行なわれる前に、分割での支払について個別に交渉をすると、こちらの提案を受け入れて貰える可能性はあります。

ただし、分割払いといっても、毎月の返済額があまりに少ない場合や、現実的に不可能と見える返済計画では、債権者側に受け入れて貰えません。

現実的に完済できる金額や期間を定め、慎重に交渉することが必要です。

(3) 債務整理の検討(自己破産、個人再生)

「奨学金を含め、借金を支払うあてがない」という状態ならば、自己破産・個人再生など、裁判所を通した債務整理の手続を検討しましょう。

自己破産は、裁判所から免責の許可を得ることで、借金が原則としてゼロになる制度であり、個人再生は、裁判所から再生計画の認可を得ることで、借金を大幅に圧縮する制度です。

いずれも裁判所を通す手続であり、多くの書類を提出する必要があるなど、自力での申立は難しいといえますが、借金の根本的な解決により今後の生活の再建を目指せるでしょう。

[参考記事]

返済できない奨学金|自己破産をするとどうなる?

[参考記事]

個人再生で奨学金滞納を解決|保証人への影響は?

なお、奨学金を時効で踏み倒しはできないのか?と考える方がいらっしゃるかと思いますが、奨学金で時効の成立を狙うのは極めて難しいと言えます。
現実的には、上記の対処法の中から解決策を探すべきでしょう。

[参考記事]

借金の時効が成立する条件と、時効の援用ができないケース

5.奨学金の滞納で債権回収会社から連絡が来たら弁護士に相談を

奨学金の滞納が原因で差し押さえをされそう、という状態にまで至ってしまうと、自力で解決するのはなかなか難しいものです。

奨学金をはじめ、借金の滞納で困っている方は、是非一度弁護士へご相談ください。

「滞納が続いている」という段階の方はもちろん、「一括返済の請求がきた」「既に判決を取られ、財産を差し押さえられた」という段階でのご相談も承っております。
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