任意売却のメリット・デメリット
不動産売却方法には「任意売却」と「競売」があります。
マイホームを手放さなくてはならない場合、1円でも高い売却金額を得たいのが本音でしょうが、債務者としては「任意売却」選択するのが望ましいと言えます。
ここでは、任意売却を競売と比べた場合のメリット・デメリットについて説明していきます。
1.任意売却のメリット
(1) 競売より有利な条件で売却できる
競売手続きにおいては、裁判所が不動産を査定し評価額を決め、これを基礎として競売が行われます。
その結果、落札価格が市場の相場よりも低くなることがほとんどです。
市場価格の2~3割程度低い金額になることが多く、場合によっては市場価格の半額程度になってしまうこともあります。
任意売却であれば、不動産の所有者である売主、買主、担保権者の話し合い・同意により売却価格が決まります。
このため、市場価格に近い金額で売却できる可能性が高くなります。
(2) 残債務の負担が軽減する
先述の通り、任意売却は競売よりも高い金額で売却できるため、残債務をより減らすことができます。債務者に有利な返済計画を定めることも可能です。
場合によっては、持ち家を売却した後もその家に住み続ける(リースバック)ことも可能かもしれません。
[参考記事]
任意売却とリースバックの違い
(3) 引越しの時期・条件などの融通が利く
競売の場合は、落札後に強制的な立ち退きを迫られることが少なくありません。
これに対し、任意売却の場合は、話し合いにおいて、引越しの時期や条件についてある程度債務者の希望を考慮してもらえます。
(4) 費用がかからない
任意売却の場合、売却に必要な費用は基本的に不動産の売却代金の中から分配されることになりますから、債務者の持ち出しは基本的にありません。
(5) プライバシーが守られる
競売の場合は、裁判所の執行官や不動産鑑定士などが不動産内外の写真を撮影したり、調査をしたりしますし、落札目当ての不動産業者が周辺を調査するなどします。
このため、近隣の方に競売の事実が知られてしまう可能性があります。
任意売却の場合は、通常の不動産売買と同様に行われますので、近隣の方に事情を知られる可能性は低いといえます。
(6) 精神的な負担が少なくて済む
競売の場合は、債務者の意向にかかわらず、裁判所主導で手続が進んでいきますから、精神的負担はかなりのものになるでしょう。
これに対し、任意売却の場合は、自分の意思で売却を決められますし、今後の生活の見通しも立てやすいので、精神的に不安定になる状態を回避できます。
2.任意売却のデメリット
(1) 債権者との交渉など手間がかかる
任意売却には、担保権者との交渉や買取希望者との面談、物件の内覧の立会など、競売の場合にはない手間がかかります。
(2) 必ず成功するわけではない
任意売却は、担保権者の承諾を得て行うものですので、担保権者が任意売却を認めてくれなかったり、売却価格で折り合いがつかなかったりすれば、売却できません。
任意売却は、債務者がしたいと思っても必ずできるわけではないということにご留意ください。
(3) 売却可能期間に限りがある
任意売却は、競売の手続が完了するまでの間に行わなければなりません。
より具体的には、競売入札開始の2日前が任意売却のデッドラインです。この日までに、すべての債権者から任意売却の同意をえなければ、競売の取り下げができず、任意売却はできなくなってしまいます。
競売開始決定から開札日までは通常6ヶ月程度あります。任意売却するのに慌てる必要はありませんが、のんびりしている時間もないと言えるでしょう。
開札がされると、競売の取下げができなくなります。
任意売却を成功させるには、早い時期からしっかりと準備することが大切です。
できるだけ早い時期に、任意売却全般に強い泉総合法律事務所へご相談ください。