任意売却 [公開日]2018年2月20日[更新日]2021年2月16日

任意売却とリースバックの違い

住宅ローンを返済できない場合、債権者が住宅についた抵当権を実行して、家を売りに出してしまいます。

つまり、「競売」により持ち家を失ってしまうのです。

競売を防ぐには、「任意売却」が考えられますが、任意売却をするとその家からは引っ越さなければならない可能性が高いです。
マイホームに住み続けるには、住宅ローンを一括払いするためのまとまったお金が必要です。

マイホームから立ち退かないまま、まとまったお金を用意する方法の1つとして「リースバック」という手段があることをご存知でしょうか?

この記事では、住宅ローンを支払えない場合や、何らかの事情で現金が欲しい場合に使える「リースバック」について説明していきます。

1.リースバックの概要

リースバックを端的に表現すると「住宅を売却し、同じ住宅を賃貸借して住み続けること」になります。

例えば持ち家を保有している人が、何らかの事情があってできるだけ早く現金が必要になったとします。

しかし、この人には持ち家以外にめぼしい財産がありません。
家を売れば現金が手に入りますが、できれば同じ家に住み続けたいと希望しています。

こういった場合、リースバックを扱っている業者に依頼すると、家を現金化して、なおかつ「買主からその家を賃貸借して」同じ家に住み続けることができます。

住宅の売主は所有権を失うものの、同じ家を借りて住み続けることができるというのがリースバック最大の特徴です。
「現金が欲しい」「同じ家に住み続けたい」という2つの希望が叶えたい人にはピッタリのシステムなのです。

(なお、本記事は借金がある人を主な対象としているので、以後は借金、その中でも住宅ローンの返済資金を確保する手段としてのリースバックについて紹介していきます。)

2.リースバックと任意売却との違い

リースバックは任意売却と比べられることが多くありますが、実際には全く違う制度です。

(1) 任意売却とは

任意売却は、住宅ローンの返済が滞ったときに利用するものです。

住宅ローンの滞納を続けると、ローンの債権者が住宅に設定した抵当権を実行して、債務者の住宅を競売に出してしまいます。

競売になると市場価格よりも低い金額で住宅が売られてしまいます。
住宅の売却価格が住宅ローンの残債に届かない場合、債務者は差額を支払わなければなりません。

このため、住宅はできるだけ高く売れた方が、債務者の負担が少なくなります。

そこで登場するのが任意売却です。

任意売却はローンの債権者と相談して合意を取り、ローンが残った家を売却し、売却によって得たお金をローンの支払いに充てるものです。

競売よりも市場価格に近い価格で住宅を売ることができるため、債務者にとっては競売よりも有利に働きます。

(2) 任意売却とリースバックの関係

任意売却の主目的は「住宅ローンの返済」と「競売の回避」です。
一方リースバックの目的は「住宅の現金化」です。

どちらか一方しか選べないというわけではないので、「任意売却で売った住宅にリースバックで住み続ける」ということも不可能ではありません。

現実に、「住宅ローンが支払えなくなった場合に住宅を任意売却し、売却で得たお金でローンを返済し、元の住宅をリースバックして居住する」という手段が取られることがあります。

住宅ローンが払えなくなった場合は、上記の方法を検討するのもいいでしょう。

任意売却とリースバックの比較表

種類 任意売却 リースバック
目的 住宅ローンの返済 資金調達
売却代金の使途 住宅ローンの返済 自由
引っ越しの必要性 あり(引き続きリースバックできるならなし) なし

3.リースバックのメリット

リースバックには主に以下のような利点があります。

(1) 住宅を売ったことがバレず、引っ越しの必要がない

同じ家に住み続けられるので、引っ越しの手間がなくなります

子供がいる場合は学区が変わらないので転校させずに済みます。

傍目からは住宅の名義が変わったこともわからないため、近所から詮索されることもありません。

(2) まとまったお金が手に入る

リースバックは家を売るため、まとまったお金が入手できます。

任意売却とリースバックを絡めた場合はお金の使い途が限定されますが、リースバックを単体で行った場合は得たお金を自由に使えます。

教育費、介護費、治療費、事業費などを捻出したい人にとっては魅力的な制度です。

(3) 買い戻しができる

お金を貯めて物件を買い戻せるのもリースバックの特徴です。
住み慣れた家を再び自分名義のものにできるチャンスがあります。

しかし、買い戻しをする場合、売却したときの価格より1~3割程度高額になるケースが多いようです。

(4) 固定資産税などを支払わずに済む

固定資産税を支払うのは住宅の持ち主です。

リースバックは住宅を借りている状態であり、賃借人には固定資産税を支払う義務がありません。

結果として家賃以外の出費を抑えられます。

4.リースバックのデメリット

メリットがある一方で、リースバックには不利な点もあります。

(1) 持ち主が変わる

リースバックした物件の名義は買主のものに変更されます。
売主からすれば、同じ家に住んではいるものの、ただの賃借人という立場になります。

賃借人である以上、例えば借りた家を勝手にリフォームする権利はありません。
リフォームの必要がある場合は買主に相談し、許可を得る必要があります。

(2) 売却価格が安くなることもある

普通に家を売ったときに比べて、売却価格が安くなる可能性があります。

「リースバックを利用しない場合はいくらで住宅が売れそうなのか」を事前にシミュレーションしなければ、知らずに損をするかもしれません。

(3) 家賃が高くなる可能性

周辺の同じような賃貸物件よりも、リースバックしている物件の家賃の方が高めに設定される可能性があります。

(4) 住み続けられない場合もある

契約の内容が「定期借家契約」の場合、契約期間が終わると再契約を断られることがあります。
下手をすると売却から数年で引っ越しを余儀なくされるかもしれません。

長期間住み続けたい場合は、普通借家契約を締結する必要があるので、これに対応してくれるリースバック業者を選択しましょう。

5.リースバックできない場合はどうすればいい?

「住宅ローンを返済できないため、住宅を任意売却してリースバックで住みたい」と考えたとします。

しかし、任意売却には債権者の許可が要るので、そもそも任意売却ができない可能性があります。

また、任意売却の売却価格を決定するのは債権者側なので、物件を購入してくれるリースバック業者が現れないおそれもあります。

住宅ローンが払えない状態でリースバックも利用できない場合、どうすれば住宅を守ることができるのでしょうか?

(1) 任意整理

任意整理は債権者と個別に交渉して利息などをカットしてもらう債務整理です。
もし住宅ローン以外の借金を整理することで住宅ローンの支払いを継続する余裕が生まれるのであれば、任意整理を行ってみましょう。

ただし、任意整理の減額効果は高くないので、既に住宅ローンの一括返済を求められているような段階だと焼け石に水となることが少なくありません。

(2) 個人再生

個人再生は裁判所に申立てをして、借金を大幅に減額してもらう手続きです。

個人再生には通称「住宅ローン特則」という制度があり、これを利用すれば住宅ローン以外を除く借金を減額することができます。

住宅ローン特則を使うと住宅ローンは従来通り支払う必要があるのですが、裏を返せば住宅ローンを支払うことさえできれば競売を避けられます。
結果として住宅を守りながら借金を減額することが可能です。

また、個人再生に成功すれば一括返済を求められている住宅ローンを分割払いに戻すこともできます。

リースバックと違って住宅の名義も変わらないので、借金問題に詳しい弁護士と相談してぜひ個人再生をご検討ください。

[参考記事]

住宅資金特別条項(住宅ローン特則)の利用要件

なお、もう一つの債務整理方法として「自己破産」がありますが、自己破産を行うとマイホームはほとんどのケースで手放さなければなりません。

[参考記事]

自己破産をすると住宅ローンはどうなる?自宅を残す方法は?

6.返済不能な住宅ローンは任意売却からのリースバックで解決

リースバックを利用すれば引っ越しをしなくて済むうえに、まとまったお金が手に入ります。
うまくいけば住宅の買い戻しも可能なので、お金を貯める目標もできるでしょう。

仮にリースバックができない場合でも、個人再生をして住宅ローン特則を利用すれば家を手放さずに済みます。

借金を解決する方法は1つではありません。借金で困っているのであれば、専門家である弁護士にご相談ください。

あなたの希望にできるだけ沿った解決策をご提案します。

相談は何度でも無料です。借金の悩みや不安についてお気軽に弁護士へご相談ください。
電話番号

受付時間: 平日9:3021:00/土日祝9:3018:30

債務整理コラム一覧に戻る