仕事を続けながら債務整理する方法
債務整理をする場合には「資格制限がある」と聞いたことがある方もいらっしゃるでしょう。
実は、任意整理や個人再生の場合は資格制限がないので、これらを選ばれる場合には何ら心配する必要はありません。
債務整理の中でも注意すべきなのが、自己破産です。自己破産の場合、手続きを開始すると一定の資格制限があります。
ここでは、自己破産を始めとした債務整理と現在従事している仕事の関係性(解雇されるのか、バレる可能性はあるのか)についてご説明します。
1.自己破産の資格制限について
自己破産をする場合、一定の資格を登録することができなくなったり、現在従事している職業の資格を一時的に失ったりすることがあります。
これは、破産法自体には定めがありませんが、それぞれの免許や資格を定める法律に記載されています。
「どのような職業が規制されるのか」についてですが、公的資格に関するもの(士業)、私法上の地位に関するもの、お金に関わるお仕事を扱うものが多くなっています。
・免許・資格に関する職業
弁護士、司法書士、公認会計士、税理士、行政書士、宅地建物取引主任者、社労士、司法修習生、など・私法上の地位に関する職業
後見人・保佐人・遺言執行者、公証人、など・その他の職業
生命保険の外交員、取締役、警備員(警備業者)、卸売業者、貸金業者、旅行業務取扱主任者(旅行業者)、建設業、教育委員会委員、など
資格制限があるといっても、一生その職につけなくなってしまうわけではありません。
期間としては、自己破産の開始決定を受けてから免責決定を受けるまでの間です。
免責許可を受けることで資格が再び使えるようになることを「復権」といいます。
個別事情にもよりますが、自己破産は半年程度で終了することが多いため、この間のみ当該職に就くことができなくなると考えましょう。
[参考記事]
自己破産における破産者の復権とは?
資格を持って生計を立てている場合は、この期間中に仕事ができなくなってしまうため、生活が困窮する可能性があります。
借金が支払えなくなった場合に自己破産をするのですから、収入が入ってこないと日々の生活も困ることになってしまうでしょう。
自己破産の準備をする段階からその間に働ける場所(アルバイト)を探しておく、部署を異動させてもらう、家族に収入が途絶えることについて話しておく、なども対策は必要です。
[参考記事]
自己破産と仕事の関係|制限を受ける職業・資格一覧
2.債務整理をして解雇になることはあるのか
自己破産以外でも、債務整理をした場合にそれがバレると会社を解雇されることはあるのでしょうか?
これについて、債務整理をしたことにより会社を解雇されることは通常はないといえるでしょう。
というのも、借金を作ったことや債務整理をしたことは会社の懲戒理由にはならないと考えられるためです。
仮に解雇されたとしても不当解雇として訴えることが可能ですので、解雇されそうだという場合にはすぐに弁護士に相談してください。
解雇はありませんが、稀に就業規則や雇用契約の段階で債務整理が降格や減給事由となることが規定されていることがあります。
この場合は懲戒処分も考えられますが、通常はこのような契約は滅多にありませんので過度な心配の必要はないでしょう。
このようなケースで会社から処分を受ける可能性よりも、事実上会社に居づらくなることが多いようです。
すなわち、債務整理したことを周囲に知られてしまい、自分で会社を辞めてしまう方もいらっしゃるのです。
とはいえ、会社から借金をしていない・給与差し押さえを受けていない場合では、資格制限のある職種の会社でない限り、自ら申告しなければ会社に債務整理がバレるケースはほとんどないでしょう。
【会社に知られたくない場合は任意整理を選ぶ】
どうしても会社に知られたくない場合には、任意整理を選ぶのも1つの方法です。任意整理であれば、官報にも載らず整理したい借金の債権者との個別交渉により手続きを進めていきますので、仮に会社から借金をしていても債務整理の事実が会社に知られる可能性はありません(会社以外の債務を整理すれば良いので特に問題とならないでしょう)。自己破産や個人再生で必要な退職金証明書も必要ないので、必要な書類を収集するために債務整理を会社に告白する必要もないのです。
3.弁護士に依頼することでバレるリスクを軽減
どのような手続きを選ぶ場合でも、弁護士に依頼することによりバレるリスクを大幅に減少させることができます。
会社に債務整理がバレる主なケースとしては、会社に督促されたり、借金滞納による強制執行です。
強制執行をされると多くの場合で給与を差し押さえられてしまいますので、当然借金の存在自体を会社が知ることになってしまいます。
また、資格制限があるような職種では、官報を確認しているので、申立てて開始決定が出た段階で把握されてしまいます。
弁護士に依頼した場合には、受任通知を債権者に送付した段階で督促・取り立てはストップし、会社に連絡が行くこともありません。会社が借金を知ってしまうというリスクはかなり軽減されます。
もっとも、既に判決等を取られて、強制執行をされている場合は、法的整理を申立てて開始決定が出ない限り止まりません。したがって、督促され始めた段階で動き始めることが、会社に借金の存在を把握されたくない場合には重要です。
「会社にバレないようにしたい」「親族に内緒にしたい」などの希望があれば、早めに弁護士に相談してみてください。依頼人の希望通り、できる限りバレない方法をアドバイスして手続きを進めてくれるでしょう。