日本でギャンブル依存症が増える!?カジノ法案成立による影響とは
通称「カジノ法案」と呼ばれる「特定複合観光施設区域整備法(IR実施法・IR整備法)」が、2018年7月20日の参議院本会議で可決されました。
このカジノ法案成立によって、日本でも「管理委員会の許可を受けた民間事業者が、認められた地域でカジノを経営できるように」なります。
「①観光産業・地域経済の活性化」「②国の財政改善」を目的とした本法案ですが、ギャンブル依存者の増加を助長させてしまうのではないかとの懸念や、施設内及び周辺地域の治安悪化リスクも否めず、議論が続いています。
そんな中、2029年に大阪で日本初の統合型リゾート(IR)が開業することが決定しました。
このコラムでは、カジノ法案の概要とメリットやデメリットを考えていきます。
また、カジノのようなギャンブルで借金を負った場合でも、債務整理で解決が可能です。現在ギャンブル依存症やギャンブルによる借金でお悩みの方も、是非本コラムをご覧ください。
1.カジノ法案(IR法)とは?
「カジノ法案」と呼ばれている法律は、正式名称を「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案(特定複合観光施設区域整備法)」と言います。
長い名称なので「IR実施法・IR整備法」とも呼ばれますが、この「IR」とは「Integrated Resort(統合型リゾート)」の頭文字を取ったものです。
カジノ法案の内容は、「管理委員会の許可を受けた民間事業者が、認められた地域で特定複合観光施設を経営できるようにする」というものです。あくまで場所や施設の定めがあり、カジノを一般的に解禁することを認めた法案というわけではありません。
特定複合観光施設とは、「観光の進行に役立つ施設が一体となったもの」とされています。
具体的には、以下のような施設が複合され一体となったものが「特定複合観光施設」となります。
いわゆる「カジノリゾート」と聞いてイメージできる施設が特定複合観光施設だと考えても差し支えありません。
- カジノ施設
- 会議場施設
- レクリエーション施設(プール、レジャーランド、オートキャンプ場、スキー場等)
- 展示施設
- 宿泊施設(ホテル)
- 劇場、映画館
- ショッピングモール など
2.カジノ法案のメリット
カジノ法案は、民間事業者に特定複合観光施設を経営させることによって、以下のような目的を達成しようとしています。
よって、カジノ法案によるカジノ経営で、以下のようなメリットを得られる可能性があるでしょう。
- 観光産業の振興
- 地域経済の活性化
- 国の財政の改善
(1) 観光客増加による経済効果
特定複合観光施設ができれば、そこに観光客が集まり観光産業が盛んになります。
特に、海外からの観光客がカジノでお金を使えば外貨が流入することになり、その地域や日本の財政状況が改善する可能性があります。
(2) 雇用促進による経済効果
特定複合観光施設があれば、その地域に雇用が生まれます。
働く先がないという地域の人たちの悩みが解決できるのです。
(3) インフラ整備による地域活性化
特定複合観光施設には自ずと人が集まります。そして、人を輸送するためにはインフラが必要です。
インフラが整備されれば、その地域は活性化されて豊かになります。
大和総研が平成26年公表したレポートによると、横浜・大阪・沖縄の3カ所にカジノを含む統合型リゾートを誘致した場合、年間2兆1千億円もの経済効果があるとのことです。財政難に喘ぐ国と地方を救う手段として有効と考えられることも頷けるでしょう。
3.カジノ法案のデメリット
当然ながら、カジノ法案にはメリットだけではありません。寧ろデメリットの懸念点は多く、法案に反対する人の意見には以下のようなものがあります。
(1) 刑法との兼ね合い
現行法では、カジノは賭博として扱われるので法的に禁止されています(賭博罪)。
「賭博」とは、二人以上の者が偶然の勝敗によって財物等の得喪を争うことをいいます。
刑法185条
賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。 ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。
賭博を自由に認めてしまうと「労働による財産の取得という国民の健全な経済生活」が侵害される恐れがあります。
要するに、人々が真面目に働いてお金を稼ぐことをしなくなり堕落してしまうため、賭博行為は犯罪として処罰されるのです。
法の目を逃れるようにして闇カジノや地下カジノがあるのは、このように刑法で禁止されているためおおっぴらに運営できないからです。
「刑法で禁止されているものを認めるべきではない」という意見は、やはり多いのです。
なお、パチンコ・競馬・競輪・競艇等の公営ギャンブルは、特別法(風営法・競馬法・自転車競技法・モーターボート競走法)により適法化されています。
(2) ギャンブル依存症の増加
ギャンブルにハマって浪費を繰り返し、生活が破綻してしまってもなおギャンブルに勝つ快感を忘れられず、借金をしてでもギャンブルを繰り返してしまうのが「ギャンブル依存症」です。
実は、カジノがなくとも日本は既に事実上のギャンブル大国とされています。
これにカジノが加わると、ますますギャンブル依存症の人が増えたり、ギャンブルにのめり込んで経済破綻した人が犯罪に走ったりする可能性が増すことが懸念されています。
ギャンブル依存症になる人が増えると労働する人が減るため、連鎖的に経済に悪影響が出るかもしれないという意見もあります。
(3) 治安の悪化
カジノ施設に来る人はお金を持っています。こういった人のお金を狙って、スリ、置き引き、恐喝などが横行する可能性があるという意見があります。
カジノで有名なラスベガスは、アメリカの主な観光地の中では屈指の治安の良さを誇っているとされていますが、それでもスリや置き引きは多いようです。
また、カジノで負けて財産を失った人が、カジノの周りや自分の地元で窃盗や強盗を行い、全国的に治安が悪くなる可能性も指摘されています。
(4) マネーロンダリングに利用される可能性
マネーロンダリングとは、犯罪で得たお金の出処を分からなくし、犯罪以外で得たお金だと見せかけることです。
カジノがあれば、犯罪で得たお金をカジノのチップ(カジノ内で使えるお金のようなもの)に換え、そのチップをすぐに現金に戻せば、そのお金は「犯罪で得たお金」ではなく「カジノで遊んで得たお金」に変わります。
実は、既にマカオのカジノなどがマネーロンダリングに利用されており、問題になっています。
マネーロンダリングを防止する策を講じたところカジノの売上が激減したという話もあり、カジノがマネーロンダリングに使われていることを証明した形になっています。
4.カジノ法案が定めるギャンブル依存症への対応策
(1) 日本はギャンブル大国と言われる
「日本には公営ギャンブルしかないのに、どうしてギャンブル大国なの?」と思う人も多いかもしれません。
これは、実質的なギャンブルであるパチンコが原因です。政府はパチンコを公営ギャンブルだとして適法としていますが、ギャンブル依存症の原因の多くがパチンコだと言われています。
日本のパチンコの年間売上高は、年間約23.2兆円です。
一方、マカオのカジノの年間売上は約2兆6,000億円とされています。また、ラスベガスのカジノの年間売上は約5,000億円です。パチンコだけでマカオのカジノの9倍程度もの売上があり、この事実だけでも十分に日本がギャンブル大国だと言うことができます。
しかも、これに競馬、競輪、競艇が加わるわけですから、いかに日本にギャンブルが多いかがお分かりいただけるかと思います。
そして、このギャンブルの多さを証明するかのように、日本にはギャンブル依存症の人の割合が多いとも言われています。
アメリカでは成人の0.6%、マカオでは成人の1.78%がギャンブル依存症だとされていますが、日本の場合は成人の4.8%がギャンブル依存症という調査結果があるのです。
(2) カジノ法案に定められたギャンブル依存症への対策
日本人のギャンブル依存症増加を防ぐために、カジノ法案では以下のような規定があります。
- カジノ場に入る際は、日本人からのみ入場料を徴収する
- カジノ収入の30%を国、認定都道府県等に納付
- 依存防止のための入場規制を設定:7日間で3回、28日間で10回まで
- 本人確認に個人番号カード(マイナンバーカード)を使用
- 設置は全国で3か所まで
- 日本人はクレジットカードでカジノのチップを購入できない
しかし、これらの施策で本当にギャンブル依存症の対策になるのかどうかは分かりません。マイナンバーカードを偽造する業者が出てくるかもしれませんし、「お金を支払えば回数制限を取り外せる」などと甘い言葉で人を騙す詐欺が発生する可能性もあります。
入場料にしても、競馬などの公営ギャンブル場では既に入場料を取っていますが、それでもギャンブルで身を崩す人がいるのが現実です。
クレジットカードでチップを買えないとしても、クレジットカードのショッピング枠でブランド品を買い込み、それを買い取り業者に売却すれば現金は用意できると考える人はいるでしょう。
これらの問題にどのように対応した上で日本初の統合型リゾート(IR)が運営されるのか、今後の動きに注目したいところです。
5.まとめ
カジノ法案成立による一番の懸念点は、何と言ってもギャンブル依存症です。
近年改善傾向にあるとはいえ、日本におけるギャンブル依存症患者の割合はかなり高い状態が続いています。
こういった人のためには、医療機関やカウンセラーのバックアップが必要となります。
また、今後のカジノ運営により、ギャンブル依存症でお金がなくなり借金で苦しむ人は増えるかもしれません。
ギャンブルによる借金は自己破産の「免責不許可事由」に該当します。しかし、多くの場合、裁量免責によって自己破産する(借金をゼロにする)ことが可能です。
自己破産まではいかなくとも、他の手段で債務整理をする方法もあります。
任意整理や個人再生ならば、借金の理由(原因)に関係なく負債を減額することができる可能性があります。
あなたにとって最適な債務整理手続きを考えるため、借金問題にお困りの方は弁護士などの専門家に是非一度ご相談ください。
泉総合法律事務所では、免責不許可事由に該当するようなケースでも、裁量免責を認めてもらい無事に免責決定となった事例が多くあります。
また、「どの裁判所がどのようなケースで裁量免責を認めてくれるか?」などといった裁判所ごとの運用傾向についても詳しく把握しております。
ギャンブルによる借金でお悩みの方、ギャンブルが止められず借金が嵩んで困っている方は、どうぞお早めに当事務所の弁護士にご相談ください。