夫が借金を残して失踪!残された家族の借金の返済義務
もし、夫が借金を残して失踪し、帰ってこなかったら、残された家族はどうしたら良いのでしょうか?
まさかそんなことが、と思われるかもしれませんが、これは決して有り得ない話ではありません。
果たしてこの場合、家族は借金の支払を肩代わりする義務があるのでしょうか?
また、家族にできることはあるのでしょうか?
今回は、借金を残された家族がするべき対応について解説します。
1.残された家族の返済義務
まずは、残された家族(配偶者・子供など)の借金の返済義務について見ていきます。
(1) 夫の借金は基本的に返済義務なし
まず、夫個人の借金について、基本的に家族に返済義務はありません。
そのため、督促がきても返済に応じる必要はありません。
しかし、日常家事債務と認定されるものは、妻も返済を求められることがあります。
日常家事債務とは、日常的な家事に関する債務のことで、これについては、 夫婦相互に契約の代理権があるため、夫婦に支払い義務が生じます。
具体的には食費、日用品、家賃、医療費、光熱費、養育費などに関連したものは日常家事債務とみなされ、契約者が夫の場合でも妻にも支払義務が発生します。
日用品かどうかの見分けは、その地域、家庭の生活水準から見て判断します。実際にどのようなものが日常家事債務に該当するかは、専門家に判断してもらう必要があります。
(2) 連帯保証人の場合は返済義務あり
夫個人の借金については妻が返す必要はありませんが、夫の借金の連帯保証人になっている場合は返済義務が生じます。
[参考記事]
連帯保証人が自己破産した場合の主債務者への影響
しかし、夫が無断で自分(妻)を連帯保証人にした場合はその限りではありません。
無断で行った保証契約は無効なので、妻が支払う必要はありません。
この場合で注意すべきは、連帯保証人であることを知らなかったのに、督促されるがまま慌てて返済に応じてしまうパターンです。
本来、無断の場合は保証契約が無効ですが、少しでも返済すると追認したことになり、保証義務が生じてしまいます。
そのため、もし業者から催促をされても、保証契約に身に覚えのない場合は決して支払いに応じないで下さい。
その上で、出来るだけ早く法律の専門家に相談すると良いでしょう。
2.借金の取り立てへの対処法
夫が借金を残して行方不明となった場合でも、債権者は夫の新たな行く先が分からない限り、妻や子供などの家族が暮らしている家へと引き続き督促をしてくるでしょう。
このような場合、家族はどのように対応すれば良いのでしょうか。
(1) 所轄の監督官庁や専門家へ相談
そもそも業者は債務者(夫)以外の人にみだりに督促をする事は法律で禁じられています。
もし、あなたに執拗な取り立てがきて困っている場合は、弁護士に相談するか、所轄の監督官庁に苦情の申し入れをしましょう。
苦情の宛先は、銀行は金融庁、消費者金融の場合は、大手は財務局、中小の貸金業者は都道府県庁の貸金業担当課です。
業者の督促が法律違反と認められた場合は、業務停止、登録取り消しなど行政処分が行われます。
ちなみに、夫名義の住宅ローンについては、その他の借金とは扱いが異なります。住宅ローンを組んだ場合は通常住宅に抵当権を設定しますから、滞納があると、住宅を競売にかけられる恐れがあるので要注意です。
[参考記事]
「競売開始決定通知」が届いたらどう対処する?
もし、住宅に住み続けたい場合は、先方に事情を話して名義変更を行い、返済期間を延長してもらうなどして、残された家族で返済をしていくことになるでしょう。
(ただし、名義変更に応じてもらうのはそう簡単ではありません。一度不動産の専門家に相談することをお勧めします。)
(2) 闇金に手を出していた場合
もし、夫が一般的な業者でなく「闇金」に手を出していた場合は一大事です。
夫が闇金に借金をしていた場合でも、妻に返済義務はありません。業者が「旦那の借金は奥さんが返すのが当然でしょ?」などと脅してきても、その言葉にのってはいけません。
そもそも闇金などの違法な業者に対しては、契約者本人の夫でも返済義務はありません。
ましてや妻や家族に返済義務が生じることは絶対にないので、法的に対処をして、後は連絡をしないに限ります。
大抵は弁護士が介入すれば請求がこなくなる可能性が高いので、闇金相手の場合は自分で連絡をとらず、法律の専門家に相談をして速やかに対処してもらうことをおすすめします。
[参考記事]
闇金被害は弁護士が解決できる!闇金からの借金でお困りならご相談を
3.夫が家に戻ってきた後の対応
もし、失踪した夫が家に戻ってきた場合は、借金についてよく話し合いをしましょう。
(1) 支払できる場合
借金の支払いができるようになっているのであれば、債権者に連絡をして、滞納分についての支払いについて話し合いをしましょう。
完済の目処が立っていること・支払う意思があることを示せば、分割払いに応じてもらえるかもしれません。
また、夫に浪費癖があり、今後も借入を繰り返す恐れがある場合は、日本貸金業協会の貸付自粛制度を利用することも検討しましょう。
貸付自粛申込できるのは本人のみです。夫婦でよく話し合い、本人が納得した場合は手続きに踏み切りましょう。
受理された場合、以後5年間は業者から貸付が自粛されます。
[参考記事]
借金依存症とは?原因・症状と借金問題の解決方法
(2) 支払ができない場合
どうしても支払ができない場合は債務整理することをおすすめします。
債務整理には主に以下の3つがあります。
- 任意整理…借金を減額する制度。将来利息分をカットして、その時点で残っている債務を分割(で返済する(借入期間や業者にもよるが3年から5年程度での返済になるケースが多い)。整理をする業者を選べるので連帯保証人に迷惑をかけずに手続きすることも可能。
- 個人再生…借金を大幅に減額できる制度。原則3年、最長5年かけて分割で返済する。財産は処分されないので、住宅を持っている人に適している。安定的かつ継続的な収入があることが条件。
- 自己破産…借金を全額免除してもらえる制度。その代わり、価値のある財産は処分される。しかし、生活必需品や当面の生活は手元に残せるので、当面の生活費までは持っていかれることはない。
もし、夫の失踪が長期に渡った場合、債務総額はかなり高額になっている可能性があるので、支払ができない場合は自己破産するのが現実的かもしれません。
ちなみに夫が失踪した際に、住宅ローンの名義を妻に変更していて、その後支払いを続けている場合は、夫の自己破産の際に住宅を処分されることはありません。
そうした意味でも、夫が家出をしたときに、できるだけのことをしておくのは意味のあることです。
このように、借金が返せないときは「債務整理」により法律的に債務を整理することが可能です。
しかし、債務整理できるのはあくまでも本人だけです。妻が代理で手続きをすることはできません。よって、夫がいつまでも帰ってこない場合であっても、妻が代理で債務整理をすることはできないのです。
4.まとめ
旦那さんが借金を抱えたままある日突然失踪をしてしまったら、残された家族に督促がくる可能性があります。
もし、家族の誰かが借金問題を抱えている場合は、ご本人とともにお早めに泉総合法律事務にご相談下さい。
また、夫の借金の連帯保証人となっている妻自身の債務整理のご相談も可能です。
ご相談頂ければ、今後に向けたベストの解決方法を弁護士がご提案させていただきます。
借金問題の相談は何度でも無料で行っておりますので、お困りのことがあれば、ぜひ一度お越し下さい。