過払い金返還請求をするとカードローンや住宅ローンが組めない?
【この記事を読んでわかる事】
- 過払い金返還請求をするとブラックリストに載ってしまうというのは本当か?
- どのような場合にブラックリストに掲載されてしまうのか?
- 過払い金返還請求をする場合に注意するべきこととは?
過払い金返還請求をすると住宅ローンやカードローンなどローンが組めなくなるのではないかという不安で、諦めてしまっている方が結構いらっしゃるようです。
請求をするとブラックリストに登録されてしまうのではないかというのがその理由です。
今回は、過払い金返還請求とブラックリスト、ローンの関係について解説します。
1.過去には過払い金請求でブラックリスト入り
現在、過払い金返還請求をしても、請求後、借金が残ってしまう場合を除きブラックリストに登録される心配はまったくありません。
しかし、過去には実際に過払い金請求でブラックリストに登録されていたことがあります。
(1) 放置された「過払い金返還請求」のブラックリスト問題
実は、利息制限法と出資法の上限金利の間で生まれたグレーゾーン金利が撤廃され、過払い金請求ができるようになってからも、ブラックリストの問題は完全には解決しませんでした。
というのも、過払い金請求をすると「事故」や「債務整理」として登録され、ブラックリスト入りを余儀なくされていたのです。
そうしたことが問題視されたあとも、過払い金請求をすると「契約見直し=コード71」として登録され、新規の借入審査には影響を与えていたのです。
お金は返ってきても、ブラックリスト入りするのは一大事です。そのため、過払い金請求をしたくてもコード71の情報が登録されることを恐れて、手続をためらう人も少なくありませんでした。
(2) 「過払い金返還請求」登録の見直し
こうした状況を改善するために、2010年1月に金融庁から「過払い金請求は個人情報に当たらない」という見解が出され、同年4月19日以降には、完済した借金については、過払い金請求をしてもブラックリストに登録されないことになりました。
過去の過払い金返還請求は、個人の支払い能力とは直接的な関係がないと判断されたのです。
これにより、過去の過払い金返還請求の情報についても削除され、信用情報に影響しないことになりました。
しかし、中にはブラックリストに登録されてしまうケースもあります。どんな場合に登録されてしまうのでしょうか。
2.ブラックリストに登録されてしまうケース
過払い金返還請求をしたからと言って、直ちに信用情報機関に事故情報として登録されることがないことはご紹介した通りですはされません。
しかし以下の2つのケースではブラックリストに登録されます。
(1) 過払いにはなっていなかった
過払い金を請求したときに、引き直し計算をした結果、債務は減少したものの債務が残った場合には、債務整理扱いとなりブラックリスト入りします。
過払い金とは、消費者金融・カード会社などに払い過ぎた金銭ということですから、そもそも過払いにはなっていないということです。
この場合は「債務整理=コード32」として、5年間信用情報機関に情報が残り、以後の新たな借入はできなくなります。
(2) 一時的に信用情報機関に登録される
過払い金請求の際に、完済をしていない状態で手続をすると、引き直し計算の結果、過払いになっていたとしても、一時的に「債務整理=コード32」として登録されブラックリスト入りします。
というのも、借金が残っている状態で過払い金請求をすると、任意整理と同じ扱いになるため債務整理情報が登録されます。
しかし、過払い金返還請求の手続が終わり、債務がなくなり、過払い金が返還されると「完済」情報となり「債務整理」情報は抹消されます。
ただし、債務が残っている状態で、過払い金請求をすると必ず「債務整理=コード32」がつくという訳ではなく、実際には会社によって対応が異なります。
また、一時的であっても債務整理情報がついている間は、新たに借入をしたり、クレジットカードを作ったり、ローンの申し込みなどはできないので、手続のタイミングには注意してください。
3.ブラックリストに登録されないケース
過払い金返還請求をした後、借金が残らなければ、ブラックリストに載ってしまうことはありません。具体的には以下の場合です。
(1) 借金を完済している場合
借金を完済した状態で過払い請求をすれば、債務が残ることはないので、ブラックになることはありません。
(2) 過払い金の返還で借金が0
また、借金の返済中であっても過払い金の返還によって借金が0になる場合は、過払い金の請求をしてもブラックリストに登録されることはありません。
したがって、これらの場合、過払い金返還請求をしただけでは、現在の住宅ローンやカードローンにはまったく影響がありません。信用情報機関に登録がないのですから、金融機関は知る由もありません。
4.注意すべきケース
注意すべきは以下のケースです。
請求後に借金が残ってしまうので、手続きとしては、任意整理として扱われるために、ブラックリストに載ってしまうことになります。
(1) カードのキャッシング枠とショッピング枠
たとえば、キャッシング枠で過払い金が発生しており、返還請求をしたが、ショッピング枠にそれ以上の支払いが残っている場合、発生している過払い金は、ショッピング枠に充当され、それでも支払いの足りない部分は任意整理として扱われることになってしまいます。
(2) 消費者金融の合併など
また、消費者金融の会社合併にも注意が必要です。貸金業法・出資法の改正以来、過払い金請求による経営悪化の影響で、貸金業者が倒産や吸収合併されるケースが相次ぎました。
業者が他社と合併しても過払い金の請求はできます。しかし、消費者金融A社が信販会社B社を吸収合併した場合、B社の債務はA社が引き継ぐことになります。
仮にある人がA社の借金は完済しているが、B社の債務は残っているという場合、A社に対して過払い金請求をすると、B社の債務があるため、債務がある状態での請求となります。
この場合、過払い金請求を行うかについて、慎重に判断した方がよいと言えます。
また、同じグループ会社内の複数の会社に借金がある場合や、保証会社と被保証会社の関係にある両社に借金がある場合に過払い金返還請求をすると同様に、過払い金による相殺後、借金が残ってしまうことがあるので注意が必要です。
5.ブラックリストに登録がなくても審査に通らないケース
ブラックリストに登録がなくても住宅ローンの審査に通らない場合もあり得ます。ローンの審査には個人の「属性」が重要な要素となっているからです。
住宅ローンの審査は、その人の年収、借入歴、雇用形態、勤務先、年齢、家族構成、結婚歴、持家の有無などさまざまな情報を基に判断されると言われています(残念ながら審査基準は公表されていません)。
たとえば、カードも作らず、借金もしない人の信用情報には、何も問題がないでしょう。しかし、この人にローンの返済能力があるのかどうかというのはまた別の話です。
ブラックリストに登録されていないからといって、住宅ローンの審査に通るとは限らないのです。
6.まとめ
過払い金返還請求を行なっても、ブラックリストには載らない場合もあります。
特に完済をしているときにはブラックリストに載らない可能性が高いので、過払い金請求をしても住宅ローンやカードローンが組めないといったデメリットは発生しません。
しかし、完済している場合でも、ショッピングの支払いが残っていたり、会社合併で債務が残っていたりする場合もあります。そうしたケースの手続には細心の注意が必要です。
過払い金請求でブラックリストに登録されるのは嫌だ…と思っている方でも、実際にはブラックリスト入りしない可能性もあります。また、想定外の事態で登録されてしまうこともあります。
過払い金返還請求について少しでも不安がある方は、まずは泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。ご相談者様のケースに応じた最適な解決方法をご提案させていただきます。まずはお気軽にご連絡いただけたらと思います。