任意売却 [公開日]2021年2月16日[更新日]2021年2月16日

任意売却後に多額の債務が残った場合の対処法

住宅ローンの支払いができなくなった場合、「任意売却」という方法で解決をすることができます。
任意売却は「住宅を売ったお金で住宅ローンを返済する」というものです。

これだけを聞くと、多くの人は疑問が湧くと思います。
「住宅ローンの支払い中でも、家って売れるの?」
「住宅が売れても債務が残ったらどうなるの?」

ここでは住宅ローンの支払いに困っている人に向けて、このような任意売却の疑問・任意売却後に残った債務の処理について解説していきます。

1.任意売却について

通常、住宅ローンが残っている住宅を売りに出そうとしても、住宅ローンの債権者が認めてくれません。
具体的には「債権者が抵当権を外してくれない」のです。

住宅ローン支払い中の住宅には抵当権が設定されています。抵当権の設定された住宅を売りに出しても、なかなか買い手が見つかりません。
購入後に抵当権を実行されてしまうと、せっかく買った住宅が競売に出されてしまうからです。

このため事実上、住宅ローンが残っている住宅を売却することはできません。

しかし、債権者に抵当権を外してもらえれば、住宅を売却できます。

もちろん債権者が何の見返りもなく抵当権を外すことはありません。
「住宅を売却して得たお金を住宅ローンの返済に充てます」という約束をして、その代わりに抵当権を外してもらうのです。

この提案は、債権者にとっても債務者にとってもメリットがあります。

というのも、債権者は競売を経ずに住宅を売った方が市場価格に近い額で売れるため、より多くの債権を回収することができるからです。

債務者は住宅を売却したお金で住宅ローンを返済でき、債権者は債権を回収することができるという利害の一致があるため、任意売却が成立します。

任意売却は法律に基づく制度ではなく、あくまで「お互いの合意の基に抵当権を外し、住宅を売って、そのお金で住宅ローンを払う」という一連の契約だと理解してください。

2.任意売却で売れる値段

では、任意売却ではどのようにして値段が決まり、売却されるのでしょうか。

任意売却をする場合は、専門の業者を利用することになります。

業者は住宅を査定して査定書を作成し、住宅ローンの残債と売却予想額を比較します。

売却予想額の方が住宅ローンの残債より高ければ、住宅ローンの債権者はかなりの確率で任意売却に合意して抵当権を外してくれるでしょう。

しかし、売却予想額よりも住宅ローンの残債が高く、家を売ってもローンの完済ができない状態であれば、より深い交渉が必要となります。
(この交渉は業者に任せることができます。)

債権者の合意が取れれば抵当権を外して住宅を売ることが可能になります。
任意売却を担当する業者が買い手を探してくれるでしょう。

しかし、販売価格の決定権を握っているのは債権者側です。
販売価格が高すぎて買い手が見つからない場合は、債権者に値下げの交渉をする必要があるかもしれません。

無事に買い手が見つかれば、通常の住宅販売と同じ形で住宅を引き渡します。

3.任意売却で返済しきれなかった債務の対処法

任意売却では、引き渡しと同時にお金を受け取り、その現金で住宅ローンの残債を支払えば任意売却の手続きは終了・住宅ローンの支払いからも解放されます。

しかし、例えば住宅ローンの残債務が2000万円だったにも関わらず、住宅が1500万円でしか売れなかった場合、債務者は差額の500万円をローンの債権者に支払わなければなりません。

差額がそれほど多くなければ自己資金で完済できるかもしれませんが、任意売却をしても多額の債務が残った場合はどうすれば良いのでしょうか?

(1) 債権者と交渉して分割払いをする

現実的にはこの方法が取られることが多いかもしれません。

差額分を一括払いできない以上、分割払いに合意してもらい、合意内容に沿って返済していくことになります。

実際には任意売却の交渉の時点で「住宅の売却価格だけではローンの完済ができない」とわかっているケースが多いため、将来の分割払いの合意も取り付けてから任意売却に臨むことが多いです。

住宅の売却額と住宅ローンの残債務の差が大きければ大きいほど交渉が難しくなるため、場合によっては交渉に入る時点で下記に述べる方法(債務整理)も検討しておく必要があります。

(2) 債務整理をする

任意売却後に残った債務の支払いが厳しいようであれば、債務整理を検討してください。

有効な方法は以下の2つです(任意整理という債務整理手段もありますが、減額効果が薄いのでここでは割愛します)。

個人再生

個人再生は裁判所に申立てをして行う債務整理です。
借金を平均5分の1、最大で10分の1にまで減額してもらい、その債務を原則3年(例外的な事情がある場合は最長で5年まで延長してもらえる可能性があります)かけて分割払いしていきます。

減額効果が高いので、うまく使えば無理なく借金を返済できるでしょう。

自己破産

自己破産も裁判所に申立てをして行う債務整理ですが、こちらは全ての借金を0にできるという、極めて強力な借金解決方法となっています。

残債の残る任意売却や個人再生を選ぶと手続き終了後に返済が必須となりますが、自己破産を利用すれば返済は必要ありません。

ただし、自己破産をすると自分の財産の一部が裁判所によって処分されるというデメリットがあります。
家具家電などの生活必需品や当面の生活費などは処分されませんが、99万円を超える現金、総額20万円を超える預貯金、不動産や高価な車は原則として手元に残すことができません。

処分される財産の内容は人によって違うので、前もって弁護士に相談して自己破産をすべきかどうか考えてください。

[参考記事]

自由財産とは|自己破産しても財産が残せる!拡張は可能か?

4.任意売却しても債務が残るなら弁護士へ

住宅ローンを支払えなくなっても、任意売却をすることで解決できることがあります。
しかし、住宅を売っても住宅ローンの完済に届かない場合は、何らかの方法で解決しなければなりません。

自己資金で返済できればいいのですが、無理な場合は分割払いの交渉が必要です。
分割払いでも支払いが難しい場合、債務整理が現実的な解決方法です。

任意売却後の債務整理は弁護士にお任せください。もちろん、任意売却前の債務整理のご相談も承っております。

最も効率的に借金を解決する方法をご提案し、債務整理などの手続きも代行いたしますので、借金のお悩みはぜひ泉総合法律事務所にご相談ください。

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