任意売却をするべきケースとタイミング
住宅ローンの支払いが難しくなってきたら、マイホームの売却を検討すべきかもしれません。
そのまま滞納し続けていると、最終的には競売で安い価格で売られてしまい、多額のローンだけが残ってしまいます。
このような事態を避けるための解決方法の一つに「任意売却」があります。
今回は、この任意売却のタイミング(任意売却ができる時期)についてご説明します。
1.任意売却が可能となる時期
(1) 任意売却とは
任意売却とは、住宅ローンの返済ができない場合に、金融機関の同意を得て不動産を売却し、ローン返済する方法のことです。
任意売却をすれば競売よりも高く売却できる可能性が高く、引越し費用も捻出できる場合もあるなどのメリットがあります。
住宅ローンを滞納し続けていると、数ヶ月後には期限の利益を失います。期限の利益とは、簡単に言えば分割で支払う権利のことです。
つまり、滞納を数ヶ月続けると、一括返済が求められてしまう結果となります。
[参考記事]
「期限の利益喪失通知」が届いた後にするべきこと
住宅ローンは数千万円に及ぶものがほとんどですので、残債が多ければ多いほど一括で支払うのは難しくなります。
一括返済の要求に対し債務者が支払うことができない場合、金融機関はマイホームを競売にかけ、売却代金を返済されなかった住宅ローンに充てることになります。
競売になってしまうと、ほとんどのケースで市場価格より安く取引されてしまい、残債を返済できないなど債務者にとって不利益が大きくなります。
任意売却は、競売の不利益を避けるために、債務者が自身の意思でマイホームを売却するという1つの選択肢なのです。
ちなみに、競売になってしまうと裁判所が強制的にオークション形式で売却を進めていく形となりますので、売却価格はかなり下がってしまいます。
(2) 任意売却はいつからできるか
現在、住宅ローンの返済に苦しんでいる方で、「将来的に家を手放しても良い」と考えている方は、今すぐにでも任意売却を検討したいと思う方もいらっしゃるでしょう。
しかし実際のところ、任意売却ができるのは保証会社が代位弁済をした後となります。
住宅ローンを組む際、多くのケースでは保証料を支払っています。これは債務者が返済できなくなるリスクに備えて、ローンを組む債務者に対し銀行が要求しているものです。
仮に債務者が滞納して支払えなくなった場合には、保証会社がローンを一括で支払う仕組みです。
任意売却の際は債権者の同意が必要となるのですが、きちんと返済している間は交渉にも応じてもらえません。金融機関にとっては、返済が滞りないのですから任意売却に応じるメリットもないからです。
また、滞納が出始めても、先にご説明した保証会社が支払ってくれます。最終的にリスクを負うのは保証会社であるため、代位弁済後でないと話が進まないということです。
また住宅ローンの多くでは、保証会社名義で抵当権を設定しています。代位弁済後は、抵当権者である保証会社が債権者・抵当権者でもあるため、任意売却の交渉が進めやすいという理由もあります。
2.任意売却のタイミング
上記の通り、実際に任意売却ができるのは、滞納が続き代位弁済通知が届いた後となります。
では、実際に任意売却を「検討」すべきタイミングはいつなのでしょうか?
(1) 住宅ローン滞納〜滞納6ヶ月程度に相談
任意売却ができるのは「保証会社が代位弁済をした後」とお話ししましたが、これよりも前に準備を始めることはできます。
任意売却の「相談」をするなら、住宅ローンの滞納が始まり将来的に返済できる見込みがなくなったときが現実的なタイミングです。住宅ローンの滞納が始まったということは、今後支払えなくなる可能性が高くなっていますので、この段階で専門業者に相談すべきです。
早めに相談すれば、任意売却開始までの準備も十分にできますので、まだ迷っているという方でも一度専門業者または弁護士に相談されることをおすすめします。
滞納3ヶ月〜6ヶ月くらいになると、いよいよ期限の利益が喪失し、一括払いを求められます。
これは保証会社の代位弁済の1、2ヶ月前となりますが、このタイミングで相談されても遅くはありません。実際に競売が始まるまでに半年程度の猶予があるため、この間に不動産調査や物件の宣伝、内覧、売買契約等を行う十分な時間があるでしょう。
(2) 最終期限|競売が開始されると任意売却は不可
本来的には、「競売で不動産を買った人が代金を払うまで」は、競売を取り下げることができます。とはいっても、競売当日や落札日になって「任意売却をしたい」と申し出ても、債権者や買い主の同意は得られません。
よって、任意売却の最終期限は、競売が開始されるときです。競売の「開札日」の前日までに任意売却が「終わっている」必要があります。
そのため、滞納から約9ヶ月までに届く「競売開始決定通知書」が事実上の最終期限となるでしょう。
この段階であれば実際に開札されるまでに3-4ヶ月程度あるので、なんとか準備して買い手を見つけられる見込みはあります。
[参考記事]
「競売開始決定通知」が届いたらどう対処する?
任意売却は広告を開始してすぐに買い手がつくわけではありません。多くのケースでは買い手候補が現れるまで1〜2ヶ月程度かかります。そのため、期限の利益喪失の通知が来て以降はできるだけ早めに任意売却の準備に動き出す方が良いでしょう。
返済ができないことが現実的になった段階で相談することがお勧めです。
3.任意売却も弁護士へ相談を
競売になると、マイホームに住めなくなるだけでなく、売却後も大きなローンが残ってしまいます。
一方の任意売却なら、残債を大幅に減らすことができます。
住宅ローンを返済できなくなったら、任意売却をご検討ください。
泉総合法律事務所にご相談いただければ、任意売却からその後の借金問題解決のための総合的なプランを提案し、手続きを行うこともできますので、ぜひお気軽にご相談ください。