債務整理 [公開日]2017年10月12日[更新日]2023年11月27日

債務整理をしても年金は受け取れる!税金の滞納には要注意

債務整理と年金差し押さえ

若い時から十分な年金をかけていれば老後は悠々自適な生活かと思いきや、現在は何らかのアクシデントで経済的に破たんし、「老後破産」してしまう人が増えています。
理由はさまざまですが、病気や介護、住宅ローンの支払い、投資の失敗などがきっかけで借金をしてしまい、その返済に行き詰るケースが多いようです。

自己破産をしたら、手元にある価値ある財産は処分され、債権者に配当されてしまいます。
しかし、高齢者の方の生活は「年金」が頼りです。高齢になると労働収入を増やすことができないので、頼みの綱である年金まで差し押えになっては生活ができません。

はたして、借金や税金が払えずに破産した場合、年金は差し押さえられてしまうのでしょうか。

今回は、借金・税金の滞納と年金差し押えの関係、年金が差し押えられそうになったときの対処法を解説します。

1.老後破産をしても年金は差し押さえられない

(1) 年金は差押禁止

結論から言えば、消費者金融や銀行などからの借金が払えずに自己破産しても、年金が差し押さえられることはありません。
自己破産は債務整理の一種で、他に任意整理・個人再生といった制度もあります。いずれも年金差し押えすることは禁じられています。

年金は「差押禁止財産」になっているので、借金のかたに年金をとることはできないのです。

自己破産で退職金が差し押さえ対象になることはありますが、年金に関しては受給年齢になれば全額受け取ることが可能です。

(2) 年金が振り込まれる口座は差し押え対象になる

借金滞納や債務整理で年金を差し押さえすることは法律で禁じられていますが、口座の預金については差し押さえ可能です。
正確には、差し押え禁止をされているのは「年金受給権」であり、預金残高については差し押さえができてしまうのです。

通常、年金は口座に入金されるので、口座を差し押さえられたら実質年金を差し押さえられてしまうのと同じです。
実際、年金が振り込まれたすぐあとに預金の差し押さえが行われ、結果として年金の引き出しができなくなることは多々あります

これは言ってみれば法律の抜け穴のようなもので、後で年金であることを証明して差し押えを解除してもらわなければなりません。
この場合に一番有効なのは、年金振り込み専用口座を作っておくことです。年金収入であることを分かるようにしておけば、差し押さえられた年金が返ってくることがあります。

(3) 自己破産すると個人年金は解約される

差し押え禁止対象とされるのは公的年金で、保険商品の個人年金は対象に該当しません。

個人年金は大抵積み立て型なので、解約すると解約返戻金を受け取ることができます。
自己破産をする場合は、保険の解約返戻金が20万円以上の場合は解約しなければなりません。そのため、公的年金以外の年金商品については処分の対象となると考えておきましょう。

2.税金滞納をすると年金差し押さえの可能性

借金滞納で年金を差し押えすることは法律で禁じられていますが、税金滞納については年金差し押えがあるので要注意です。
また、税金は自己破産で免責されないのでその後も支払わなければなりません。

近年、国民健康保険料や住民税を払えなくなった高齢者が、年金を差し押さえられる事例が全国で相次いでいます。

年金差し押えは強制的に天引きで行われます。生活できないほどの僅かな年金でも容赦ありません。

全国一斉「税金・国保料 滞納・差押ホットライン」には「ある日突然、年金口座を見たら○万円しか入金がなかった…」と、悲痛な相談が数多く寄せられています。

ただし、税金滞納に対して自治体による差し押さえは許されていますが、国税徴収法による「生活を圧迫してはいけない」という制限もあります。

税金滞納は納税者に問題があるケースもありますが、突発的なアクシデントで払えるはずの税金が払えなくなってしまうことはよくあることで、ましてや高齢者であれば尚更です。

生活者の実態に寄り添わない行政のやり方は、各地で問題になっており、専門家からも経済状況に応じた対応や、生活再建に寄り添うべきであるという声が上がっています。

現在年金を受給している方で、税金がどうしても払えない時は、すぐに市役所に相談に行くことをおすすめします。
税金は滞納すると延滞金がつき、自己破産しても納税義務は消えません。見て見ぬふりをせずにすぐに対処しましょう。

事情を話せば市役所の方で分割納入を提案してくれます。また、生活が著しく困窮する恐れがあるときは「滞納処分の執行の停止」が認められることもあり、その期間が3年を超えた場合は、納税義務は消滅=支払いを免除されるという規定もあります。

税金は基本的に支払うべきものですが、どうしても生活できないほど困っている場合は、市役所できちんと事情を話せば減免の可能性はあります。

それでも差し押さえの恐れがある場合には、弁護士に相談をしてください。

3.年金担保貸付では年金も差し押さえられる

高齢者向けの公的融資制度「年金担保貸付制度」が理由で生活破綻・破産となるケースもありましたが、この制度は令和4年3月末に申込受付終了となりました。
しかし、現在返済中の方もいらっしゃるかと思いますので、年金担保貸付制度についても簡単に解説します。

独立行政法人「福祉医療機構」では、年金受給権を担保に高齢者に貸付を行っていました。
同法人の年金担保貸付の特徴は、毎月の返済を年金から天引きする形で徴収している点です。

実はこの年金担保貸付については、債務整理をしても年金からの天引きが続くので注意が必要です。
つまり、事実上、自己破産をしても年金担保貸付の支払負担はなくなりません。

もし、生活困窮の原因が年金担保貸付制度の借金返済にある場合は、弁護士に相談をすることをおすすめします。

[参考記事]

年金担保貸付制度のリスク|自己破産しても免責されない

4.まとめ

年金は基本的に差し押え禁止財産なので、借金滞納を理由に差し押えになることはありません。また、年金は債務整理をしても差し押さえはできません。
ただし、口座預金については差し押さえが可能なので、口座を見たら年金が差し押えられているということはあります。

また、税金については滞納すると年金差し押えとなる可能性があるので、滞納する前に市役所に相談をしましょう。

借金を滞納しそうな時や、税金滞納で年金が差し押さえられそうなときは、お早めに弁護士に相談してください。

泉総合法律事務所は、年金・税金に関する借金問題についても豊富な実績がございます。それぞれの方の生活を再建するためにベストの解決を目指しますので、お困りのことがあればどうぞお気軽にお越しください。

相談は何度でも無料ですので、専門家と一緒に解決をしていきましょう。

相談は何度でも無料です。借金の悩みや不安についてお気軽に弁護士へご相談ください。
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