緊急小口資金とは何?|税金を滞納していても借りられるか
「収入がなくて生活が苦しい」「借金をしようにも誰もお金を貸してくれる人がいない」
そういった人のために、各都道府県の社会福祉協議会は、低所得世帯に生活費等を貸し出す「生活福祉資金貸付制度」を実施しています。
ここではその制度の中から、「緊急小口資金」について紹介していきます。
緊急小口資金は昔から存在していた制度ですが、2020年初頭に発生した新型コロナウィルス感染症の影響で収入が減った人でも利用しやすいように、貸付の条件や期間などが緩和されています。
どうしても生活が苦しい場合は、遠慮なくこういった支援策を頼るべきです。
はたして緊急小口資金とはどのようなものなのでしょうか?
なお、緊急小口資金を始めとした生活福祉資金を滞納してしまったという方は、以下のコラムをご覧ください。
[参考記事]
生活福祉資金を滞納!返済できない場合どうすれば良いか
1.緊急小口資金とは?
緊急小口資金は生活困窮者のための制度で、低所得者がお金を借りられる制度です。
市区町村社会福祉協議会・お住まいの都道府県内の労働金庫のどちらかに申込みを行います。
どのような人がどのくらい借りられるのか、返済の条件はどのようなものなのか、具体的に見ていきましょう、
(1) 対象者
- 低所得者世帯等
- 新型コロナウィルスの影響で休業等をして収入の減少があり、緊急かつ一時的な生計維持のための貸付を必要とする世帯
従来は前者の条件のみでしたが、コロナの影響で後者にまで対象が広がりました。
コロナの影響で収入が減っている人であれば、休業をしていなくても貸付を受けることができます。
(2) 貸付額
上限は20万円までです。
従来は10万円まででしたが、こちらもコロナの影響で上限額がアップされました。
以下の条件に当てはまる世帯であれば20万円まで借りることが可能です。
- 新型コロナウィルス感染症の患者等がいる
- 世帯員に要介護者がいる
- 世帯員が4人以上いる
- コロナ対策として臨時休校した学校等に通う子どもの世話を行う必要に迫られた労働者が世帯内にいる
- 世帯員に個人事業主等がいる等で収入が減少し、生活に要する費用が不足している
- 上記以外で休業等による収入の減少等で生活費用の貸付が必要な世帯
(3) 利息と保証人
無利子かつ保証人不要で借りることができます。
(4) 据置期間
据置期間とは「借り入れた後、利息のみを返済すればよい期間」です。
借り入れてすぐ元本の返済をしなければならない場合、返済のための収入が確保できない時期であっても返済を余儀なくされる可能性があります。
そういったことを防ぐために設けられたのが据置期間です。
前述の通り緊急小口資金には利息がないので、実質的には「返済を猶予される期間」と言い換えてもいいでしょう。
据置期間は1年以内です。
従来は2ヶ月以内でしたが、コロナの影響で大きく変更されました。
(5) 償還期限
元本を返済する期限で、2年以内となっています。
従来は12ヶ月以内でしたが、こちらもコロナの影響で倍の期間が設定されました。
生活保護とは違うの?
生活保護は困窮者に対して困窮の程度に応じたサポートを行う制度です。
現金で給付されることもありますが、その現金を返還する義務はありません。
一方、緊急小口資金には返済の義務があります。
いつかは返さなければいけないお金なので、計画的な利用を心がけましょう。
2.借りられない人は?条件はある?
ここまでの段階では、緊急小口資金はかなり対象の広い支援策であることが見て取れます。
しかし、「私には借金があるけど大丈夫なの?」「過去に貸付を受けたけど、また借りられるの?」などの疑問がある人もいるはずです。
そういった不安を抱える人のために、もう少し詳しい条件を紹介していきます。
なお、以下の記述は「厚生労働省社会・援護局地域福祉課生活困窮者自立支援室」が公表している問答集を参考にしています。
(1) 過去に貸付を受けていても借りられる?
過去に緊急小口資金その他の貸付を受けている人でも、そのことだけを理由として断られることはありません。
個別の事情に基づいて判断され、資金の用途や貸付の必要性、返済能力があるかなどを基準として貸付が行われます。
(2) 他の債務を償還中でも借りられる?
公的機関からの借金、民間からの借金を問わず、他の借金がある人でも緊急小口資金を利用することは可能です。
こちらも同じく個別の事情によって判断されます。
(3) 税金や公共料金を滞納していても借りられる?
税金や公共料金の滞納中であっても、それだけを理由として拒絶されることはありません。
他の債務と同じように、個々の事情によって判断されます。
(4) ブラックリスト状態でも大丈夫?
過去に債務整理をした、かつて自己破産で免責を受けたなどの事情があっても、それのみを理由として拒否されることはないので安心してください。
まずは相談を行い、事情を丁寧に話すことが大切です。
(5) 債務整理をする場合の費用にできる?
この点は注意が必要です。
緊急小口資金は返済を前提とした制度なので、返済しない債務整理である自己破産の費用とすることはできません。
一方で、自己破産以外の債務整理をする際の費用として緊急小口資金を活用することは問題ないとされています。
「自己破産の費用を捻出するために緊急小口資金は使えない」と覚えておきましょう。
3.借金にお困りの方は債務整理で根本的な解決をおすすめ
緊急小口資金を使えるかどうかは機械的に判断されるわけではなく、相談者の事情によってお金を借りられるかどうかが決まります。
コロナの影響で収入が減った人は、そのことを相談してください。
コロナのせいで条件が緩和されているので、これまで借りられなかった人でも貸付を受けられる可能性があります。
ただし、借金で困っているのであれば、まずは債務整理をして借金を根本的に解決することが大切です。
借金の一時的な返済に緊急小口資金を使ってしまうのではなく、借金の解決にこそ緊急小口資金を活用してください。
緊急小口資金は自己破産以外であれば、債務整理の費用として活用可能です。
無利子かつ保証人不要で借りたお金を元にして多額の借金を解決することができるので、場合によっては経済状況が一気に改善することもありえます。
すでに説明した通り、残念ながら自己破産の費用としては緊急小口資金を使えません。
自己破産の費用は何とか自己資金で賄って借金をゼロにして、自己破産後の生活再建のために緊急小口資金を使うというアイデアもあります。
自己破産をするべきか、それとも他の債務整理をするべきなのかは、弁護士にご相談ください。
借金で苦しんでいる人に最適の方法を提案し、各種債務整理の手続も代行することができます。
弁護士がいなければ事実上実行不可能な債務整理も多いです。
ぜひ、お早めに弁護士へご相談ください。