借金返済 [公開日]2020年4月13日[更新日]2023年9月14日

給料差し押さえのリスク|会社にバレる?無視するとどうなる?

借金を返さないまま長らく放置していると、やがて訴訟を起こされるなどして給料を差し押さえられてしまうことがあります。

「差し押さえ」はしばしば聞かれる言葉ですが、そもそもどういったものなのか、具体的にどのようなリスクのある処置なのか分からないという方も多いかもしれません。

そこで、本記事では給与差し押さえの基礎知識や、給料を差し押さえられるとどのような影響があるのか、そして(簡単にですが)差し押さえを回避する方法などについて解説していきます。

現在債権者からの督促を無視している人や、差し押さえの予感・予兆がある人は、ぜひ本記事を読んで参考にしてください。

1.給与差し押さえとは?

まずは、給与差し押さえ(給料の差し押さえ)とはどういったものなのかを見ていきましょう。

(1) 給料の差し押さえについて

給料の差し押さえとは、債務者(お金を借りている人)の給料の一部が、債務者本人ではなく債権者(お金を貸している人)に直接支払われるようになる措置のことです。

給料の一部が直接債権者に支払われれば、滞納を受けている債権者は確実に弁済を受けられるようになります。
そこで、債権者は裁判所に申し立てをして給料の一部を債務者の勤務先から受け取り返済に充てるのです。

債務者側が何らかの手段を講じない限り、給料の差し押さえは完済まで続きます。

(2) 給料差し押さえの金額

消費者金融や銀行、カード会社など、民間の貸金業者からの借金の場合、差し押さえ可能な範囲は「手取り額の4分の1まで」と決められています。
裏を返せば、手取り額の4分の3は受け取ることができるのです。

ただし、33万円を超える給料をもらっている場合、33万円を超えた部分は全て差し押さえられてしまうため、受け取れる給料の額は33万円が上限となっています。

差し押さえを受けた場合、通常の給料だけでなくボーナスや退職金なども差し押さえの対象となるので、生活への影響は大きなものになるでしょう。

ちなみに、税金を滞納している場合、以下の金額の合計額までは差し押さえされません。

  • 給与から控除される所得税や住民税、社会保険料等
  • 月額10万円
  • 生計を同じくする配偶者や子供等の親族一人あたり4万5000円
  • 給与から所得税や住民税、社会保険を控除した額の20%

一見難しいかもしれませんが、「税金の場合、ケースによっては差し押さえられる額が4分の1では済まない可能性がある」と理解してください。

(3) 差し押さえまでの滞納期間

これはケースバイケースですが、少なくとも、支払いを数回滞納した程度では差し押さえはされません。

滞納をすると、まずは郵便や電話で督促されます。
それを3ヶ月ほど無視していると「借金を一括返済してください」という趣旨の一括請求書が届くことが多いようです。

その請求書(催告書)には、「このまま滞納を続ければ訴訟や支払督促などの法的措置に出る」旨も書かれていることが多く、「訴訟予告通知書」というタイトルがついているケースもあります。

これも無視したままでいると、債権者は本当に裁判所に申し立てをすると考えられます。
裁判所からは「特別送達」という郵便物が届きます。そこには、債権者が訴訟を提起したか、あるいは支払督促を申し立てたことなどが書いてあるはずです。

訴訟

訴状には、第1回期日の呼び出し状も入っています。しかし、訴訟を起こされても無視していると、その期日の数週間後には原告(債権者)の主張がすべて認められた旨の判決が出てしまいます。
つまり、債務者がいないまま債務の全額や遅延損害金等を債権者に支払うように命じる旨の判決が出されるのです。

その後、この判決をもとにして、債権者は訴えられた被告(債務者)名義の財産の差し押さえ(強制執行)を申し立てます

支払督促

訴訟よりも簡易的な法的措置である「支払督促」が裁判所から送付されてくるケースも多いです。
支払督促が届いてから2週間のうちに異議申し立てをせずに無視すると、債権者の主張がほぼ全面的に認められて「仮執行宣言付支払督促」というものが出されます。

仮執行宣言付支払督促が債務者の元に送達した後、債権者は裁判所に債務者の給料を差し押さえるための申立てを行うことができるようになります。

 

支払督促の場合、訴訟予告通知が来てから早ければ1~2ヶ月で給料が差し押さえられてしまうこともあるので、裁判所からの書類は当然として、債権者からの督促も無視せず、すぐに専門家にするようにしてください。

[参考記事]

簡易裁判所からの支払督促・訴状を受取拒否したらどうなる?

なお、税金の場合は裁判所の手続を経ずに差し押さえができるので、さらに早く差し押さえが行われる可能性があります。

[参考記事]

税金滞納で差し押さえ!「差押予告書」が届いたらどうなる?

2.差し押さえされるとどうなるのか?

ここからは、給与差し押さえが生活に与える影響をより具体的にご説明します。

(1) 手取り額が減る

まず、これまで通りの手取り収入を得られなくなるため、生活が苦しくなる危険があります。

例えば、複数の業者から借り入れをしている場合、1社から給与差し押さえを受けると、手取り収入が減るため他社への支払いが続けられなくなり、連鎖的に返済の滞納が発生する事態に陥るかもしれません。

あるいは、手取り収入が減ったことで、税金や公共料金の支払いが難しくなることもあるでしょう。

(2) 会社にバレて居づらくなる

給料を差し押さえられると、裁判所からの連絡が会社にいきます。
このため、勤務先には必ず借金の滞納がバレてしまいます

差し押さえをされても、法的には会社はそれを理由として労働者を解雇することはできないので、その点は安心してください。
しかし、「借金を返せなくて差し押さえを受ける人=お金にだらしない人」という評判が生まれてしまう可能性は否定できず、そのイメージの問題で会社に居づらくなったり、人間関係が変わってしまったりするかもしれません。

業種によっては「給与差し押さえを受けている人にお金を扱う仕事はさせたくない」という理由で、配置転換などが行われる可能性もあります。

(3) 家族に借金がバレやすくなる

差し押さえを受けると給料の手取り額が減るため、当然ながら給料の振り込み額も少なくなります。

配偶者が給料を管理している場合などは、通帳を見られて「どうして今月は給料が減っているのか?」と疑問に思われてしまい、そこから借金のことがバレてしまう可能性が高くなります。
また、給与ではなく預貯金の差し押さえをされると、通帳に「サシオサエ」などと記入されてしまいますので、通帳記入をしたら確実に差し押さえの事実がバレてしまうでしょう。

このため、滞納状況が給与などの差し押さえにまで発展すると、家族に借金がバレる可能性は極めて高いと言えます。

3.差し押さえの解除・回避方法

このように、給与を差し押さえをされると悪い影響が多く発生します。
どうにかして差し押さえを回避したいと思うのが普通でしょうし、既に差し押さえを受けている場合はなんとか差し押さえを解除したいはずです。

最後に、そのための方法を簡単に解説します。より詳しくは別のコラムで解説していますので、そちらをご覧ください。

[参考記事]

借金滞納で給与差し押さえ!解除・回避のために必ず知っておくべき事

(1) 差し押さえの回避方法

まずは、まだ差し押さえを受けていないけれど目下滞納中であるか、訴訟予告通知が届くなどして危機的な状況にある場合の対策を紹介します。

①分割払いの交渉をする

督促の放置を続けると差し押さえのリスクが高まります。支払う意志を見せれば分割払い返済の猶予に応じてくれることもあるので、まずは債権者に連絡を取ってみましょう。
債権者としても、差し押さえをするのは時間と手間とお金がかかるため、債務者が任意で返済に応じてくれるのであれば検討をしてくれるでしょう。

しかし、債権者との交渉で和解できないほど借金額が膨らんでいる場合は、下記で説明する債務整理により借金問題を解決するのが現実的です。

②債務整理をする

差し押さえをされる前に弁護士に相談し、「債務整理」をするのも有効的な手段です。

債務整理には主に3種類あるので、簡単に説明します。

  • 任意整理:債権者と交渉して将来利息をカットしてもらい、3~5年程度かけて毎月返済する。
  • 自己破産:裁判所で借金をゼロにしてもらう。代わりに不動産など手持ちの高価な財産を処分し、債権者に配当する必要がある。
  • 個人再生:裁判所で借金を元金から大きく減らしてもらい、3年程度かけて返済する。財産が多いと返済額が増えるケースがある。

債務整理は自分にとって最適なものを行わなければ効果が薄いので、弁護士の意見を参考にしてどれを選ぶか決断することが大事です。

なお、債務整理では税金の滞納は解決できません。税金の滞納で差し押さえの危険が迫っている場合は、役場の担当部署まで連絡してください。
(税金の支払いを確保するために、他の民間企業からの借金を債務整理することは有効と言えます。)

(2) 差し押さえの解除方法

既に給与の差し押さえをされてしまった場合、この状態から差し押さえを解除できる方法は主に2通りです。

①一括払いする

当然ですが、一括払いをして借金を完済すれば差し押さえは解除されます。

しかし、現実問題として、一括払いができるケースは極めて稀でしょう。
一括払いできる余裕があるのなら、そもそも差し押さえにまで至らない可能性が高いからです。

②個人再生か自己破産をする

任意整理以外の債務整理(個人再生・自己破産)には、差し押さえを解除する効果があります。

個人再生と自己破産(同時廃止)の場合

これらのケースでは、裁判所の個人再生または破産の開始決定がされることにより差し押さえが中止されます。

ただし、差し押さえ分の給料がすぐに債務者へ支払われるわけではありません。
差し押さえ分の給料は債権者に支払われなくなりますが、そのお金は会社に蓄積(プール)されることになります。

その後、各債務整理手続きが完了した後に、プールされていたお金がようやく債務者に支払われます。

自己破産(管財事件)の場合

この場合は、裁判所の破産開始決定がされることにより差し押さえが失効し、効果がなくなります。

つまり、差し押さえられていた給料は、個人再生や同時廃止の場合と違って会社にプールされることもなく、債務者がすぐに受け取ることができます。

4.給与差し押さえを受けそう・差し押さえを受けた場合は弁護士へ

度重なる督促を無視し続けると、いずれ給料の差し押さえを受けるかもしれません。
特に、裁判所からの書類が届いた際には要注意です。差し押さえまで時間の猶予がありませんので、すぐに動く必要があります。

差し押さえを受けてしまったら、私生活や仕事に大きな支障が発生します。
できれば差し押さえを受ける前に債権者に連絡をするか、弁護士に相談して債務整理を行ってください。どの債務整理をするのがベストなのかは、弁護士に相談して判断することをお勧めします。

また、たとえ差し押さえを受けた後でも、個人再生か自己破産をすれば差し押さえを解除できます。
とにかく早めに弁護士と連絡をとって、被害を最小限に抑えましょう。

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