シングルマザーで生活費・養育費が不足して借金を抱えてしまったら
内閣府や厚生労働省の調査によると、シングルマザーの家庭(ひとり親家庭)では、相対的貧困率が50%を超えています。
生活費や子供の教育費のために借金せざるを得ない状況の方は多く、借りたお金を返せないという人も多いでしょう。
このコラムでは、シングルマザー・シングルファザーで生活に苦しむ方々に向け、その解決策を考えていきます。
1.シングルマザーの貧困率は高い
現在の日本では、離婚は決して珍しくありません。実際、子供の8人に1人はひとり親世帯で生活しているという統計も出ています。
また、厚生労働省の「国民生活基礎調査の概況」を紐解くと、ひとり親世帯の2件に1件は貧困状態にあることが分かります。
シングルマザーが貧困から抜け出せないことには構造的な問題があります。主な理由は以下の2つです。
- 仕事と子育てを両立させるため、シングルマザーの5割以上が非正規雇(パート、アルバイト、派遣)
- 離婚後の養育費の未払い問題が深刻(未払い率は8割)
厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、令和4年の非正規雇用の年収は306万円です。しかし、これはフルタイムで勤務しているケースも含まれていますので、母子世帯に限ると平均年収は250万円ほどまで下がります。
なお、一方の正規雇用の平均年収は531万円で、金額はに大きな差があります。
また、離婚した母子家庭のおよそ8割は養育費が未払いであると言われています。
離婚時に養育費の取り決めをしても、その後は不履行という事態が横行しており、泣き寝入りしている人が大半というのが現状です。
そもそも「相手と関わりたくないから」「相手に支払い能力がないから」などの理由で、離婚時に養育費の取り決めをしないというケースもあるようです。
[参考記事]
離婚相手に養育費の支払い能力がない場合はどうすればいい?
2.シングルマザーの貧困問題を助ける制度
では、このようなシングルマザーの貧困を解決するには一体どうしたら良いのでしょうか。
もちろん、問題を根本から解決するためには就労収入を増やすことが必要です。しかし、これには時間を要するものもあります。
そんな中、以下の3つの制度については速やかな負担軽減につながるので、シングルマザーの皆さんは是非チェックしてください。
- 児童扶養手当
- 母子父子寡婦福祉資金貸付金
- 生活保護
(1) 児童扶養手当
児童扶養手当は、離婚や死別で片親になった児童がいる親(扶養者)に支給される手当です。片親の暴力や遺棄、行方不明などで同居ができない場合も含みます。当該の児童が片親と生計を同一にしていないことが受給要件です。
対象となる児童の年齢は0歳~18歳で、児童が18歳の誕生日を迎えたあとの最初の3月31日(18歳の年度末)まで支給されます。
2023年4月以降の厚生労働省の規定による支給額は、全部支給で対象となる児童が1人の場合は月額 44,140円で、2人いる場合は上記金額に10,420円を加算、3人目以降はさらに6,250円ずつ加算されます。
なお、児童扶養手当は所得によって支給額が変わるので、一部支給となった場合は月額 10,410円~44,130円と幅がでます(1人の場合)。児童が複数いる場合の支給額も変化します。
所得が高額になるほど児童扶養手当の額は減りますが、シングルマザーの平均的な収入を考慮すると、大幅な減額になるのは一部の人でしょう。
ちなみに、養育費を受け取っている場合は、その8割は所得とみなされます。
また、再婚や事実婚で新たな配偶者できた場合は児童扶養手当の受給資格はなくなるので注意が必要です。
児童扶養手当の受給はお住まいの市町村で受け付けています。
(2) 母子父子寡婦福祉資金貸付金
母子父子寡婦福祉資金貸付金は、ひとり親世帯の児童が就職や就学で資金が必要になったとき、都道府県、政令指定都市、中核市から貸付を受けられる制度です。
ひとり親世帯の経済的自立を支援し、児童の福祉、成長に寄与する目的で創設されているので、基本的に無利子で貸付が行われています。
借入の目的にもよりますが、償還期間は3年〜20年の間で、親に貸し付ける場合の連帯保証人は子供となります。
貸付金額の一例を挙げると、就学資金(高等学校、高等専門学校、短期大学、大学、大学院又は専修学校に就学させるための授業料、書籍代、交通費等に必要な資金)を借り入れるケースで、私立・自宅外通学の場合、高校は月額52,500円、大学は月額146,000円が上限となっています。
他にも、技能習得や就職支度(就職するために直接必要な被服、履物等及び通勤用自動車等を購入する資金)の資金も借りられるため、母子父子寡婦福祉資金貸付金は子供が就学・就職をする際に強力な味方となります。受給を希望する場合は管轄の市役所に問い合わせをしましょう。
(3) 生活保護
生活保護は、憲法で保障される「健康で文化的な最低限度の生活」の実現を保障するための制度で、自分の資産や能力を全て使っても生活に困窮する人を保護し、その後の自立を支援します。
育児に時間をとられ、パート・アルバイト収入しかない(就労時間に制限のある)シングルマザーにとって、生活保護は非常に助かる制度です。
受給資格を得ると基本的な生活費が受給できることに加え、年金、税金は免除され、医療費、義務教育費も扶助があるので、生活は格段に楽になります。
しかし、受給要件は細かくあり、誰でも受給できるわけではありません。
受給金額や受給条件は収入や世帯人数により市町村ごとに異なりますので、特別な事情があり就労もままならないような状況であれば、一刻も早く市町村に相談することをおすすめします。
なお、生活保護は不動産や車などの売却できる資産があると、まずは売って資金を作ることを求められますが、特に財産がない場合は失うものもありません。
3.返済できない借金は債務整理で解決
シングルマザーで借金を抱えていて生活が苦しい場合は、上記制度の利用を検討する以外にも、借金を整理することが大事です。
借金をどうしても返せないときは、「債務整理」で法的に問題を解決することができます。
「債務整理」とは、借金を合法的に減額または免除できる制度です。シングルマザーなど個人ができる債務整理方法は、主に任意整理、個人再生、自己破産の3つがあります。
任意整理は債権者との個別交渉で利息の減額と返済計画のリスケジュールについて合意を得る手続き、個人再生と自己破産は裁判所の許可を得た上で借金を減額・及び免除してもらう手続きです。
それぞれメリットとデメリットはありますが、現在の借金の負担を大きく軽減できることは変わりません。返済に苦しんで生活が困窮している状況であれば、債務整理に踏み切ることをおすすめします。
借金問題が解決すれば経済的な再スタートを切ることができますし、精神的ストレスからも解放されるので子育ても余裕を持って行うことができます。
なお、債務整理をするには専門家である弁護士のサポートが必要です。
弁護士費用を心配される方も多いと思いますが、債務整理に強い弁護士事務所は初回相談を無料としていることがほとんどで、依頼費用も分割払いが可能なケースが多いので、手元に資金がなくても債務整理に踏み切ることができます。
今、借金に困っている人は、一刻も早く専門家に相談してみてください。
4.まとめ
シングルマザーの貧困の抜本的な解決にはさまざまな支援が必要ですが、もしその原因が借金にあれば、債務整理を1つの選択肢として、弁護士に相談いただくことが解決の早道です。
今苦しくても、貧困から脱する道は必ずあります。悩みがあれば一人で抱えずに、専門家・弁護士に相談しながら問題を解決していきましょう。