自己破産手続きが早く終わる即日面接制度とは?
自己破産は裁判所を通して行う債務整理です。
「裁判所を通すなんて時間がかかりそう」「手続きが面倒そう」などと考える方もいるのではないでしょうか?
こういった不安から、自己破産に二の足を踏む人もいるかもしれません。
しかし、実は東京地方裁判所には自己破産の手続きにかかる時間を非常に短くできる制度があるのです。
この制度を「即日面接制度」と言います。
本記事では、即日面接制度について解説していきます。自己破産を検討している方はぜひご一読ください。
1.即日面接制度とは?
通常の自己破産手続きでは、破産の申立てから破産手続開始決定まで2週間~1ヶ月程度かかります。
この問題を解決するのが即日面接制度です。
(1) 破産申立から破産手続開始決定までが早い
即日面接制度を利用すると、早ければ自己破産を申し立てたその日に破産手続の開始決定がなされます。
長くても申し立てから3日以内に破産に関する面接が行われるでしょう(ただし、土日祝などを除いて3日とカウントします)。
破産手続きの開始決定がされると、同時廃止事件の場合はそのまま破産手続が終了します。
つまり、最短で申し立ての当日に破産手続開始決定と破産手続きが終わるのです。
通常の自己破産手続きと比べると圧倒的に早く次の免責手続に入ることができます。
(2) 面接は弁護士と裁判所で行う
「即日面接制度」という名称の通り、この制度を利用した場合は面接が必要です。
しかし、債務者本人が裁判所などに呼び出されて面接を受けるようなことはありません。面接を受けるのは債務者から依頼を受けた弁護士です。
即日面接制度では、債務者の借金や財産の状況、および免責不許可事由*の有無を弁護士が調査していることが前提になります。
弁護士の調査について裁判所の書記官が予備審査をした後に、裁判官が弁護士と面接を行います。
面接の結果、弁護士の調査等に問題がない場合は破産手続の開始決定が行われます。
*免責不許可事由とは「借金をゼロにしても良いかどうか」を裁判所が判断するための基準です。
免責不許可事由に該当する事柄があると、自己破産を認めてもらうために追加の調査を受けたり追加書類を作成したりする必要がある「管財事件」になります。
(3) 管財事件の場合
破産申立人に一定以上の財産がある場合、自己破産すると債務者の財産を処分してお金に換え、債権者に最低限の弁済をすることになります。
この手続を「破産手続」と言います。
破産手続では、裁判所が「破産管財人」を選任し、その破産管財人(弁護士)が申立人の財産を調査して換価処分を行います。
財産を処分して得られたお金は、破産管財人を通して債権者に公平に分配されます。
この手続きが行われるほか、免責不許可事由があり破産管財人による調査が必要と思われる破産事案については、破産管財人が選任されるという意味で「管財事件」と呼ばれます。
[参考記事]
破産管財人とは?権限・報酬などをわかりやすく解説
即日面接制度を利用した結果「管財事件」になった場合、申し立てをした次の週の水曜日17時に破産手続開始の決定が行われます。
その後は破産管財人が選任されるなど、通常の管財事件の破産手続きと同じ流れをたどります。
破産手続きの終了まで、やや時間のかかる手続きです。
(4) 同時廃止事件の場合
同時廃止事件とは、破産を申し立てた債務者に財産が無いことが明らかな場合や、免責不許可事由がない場合に行われます。
お金に換える財産が明らかに存在しない場合や、免責を妨げるような事情もない場合に破産管財人を選任して調査等を行うのは時間とコストの無駄になります。
この無駄をなくすために行われるのが「同時廃止」です。
同時廃止では、破産手続の開始と同時に破産手続が終了します。
即日面接制度を利用した結果「同時廃止」になった場合は、面接をした日の17時に破産手続き開始の決定と同時廃止決定が行われます。
つまり、即日面接制度を利用して
- 面接当日に破産手続開始決定が行われたら同時廃止事件(破産手続は終了)
- 面接当日に破産手続開始決定が行われなければ管財事件(破産手続が終わるのはまだ先)
ということになります。
2.即日面接制度のメリットとデメリット
迅速に自己破産手続を進めることができる即日面接制度ですが、メリットがある一方で多少のデメリットも存在します。
ここからは、即日面接制度にどのようなメリットとデメリットがあるかをご紹介していきます。
(1) 即日面接制度のメリット
時間を短縮できる
最大のメリットは、やはり時間の短縮です。
即日面接制度を使うと、通常の破産手続きよりもはるかに短い時間で破産手続きの開始決定が下されます。同時廃止事件になればさらに短い時間で解決します。
いち早く借金問題から解放されるのは、債務者にとって大きな救いとなるでしょう。
面接が一度で済み、債務者本人も出席しない
通常の破産手続きの場合、債務者本人が裁判所に足を運んで「破産審尋」「免責審尋」という2回の面接を受けなければなりません。
しかし、即日面接制度では1回の面接で済みます。
しかも面接に行くのは弁護士であり、債務者本人ではありません。
面接は弁護士に任せて債務者は普段どおり生活を続けていれば良いので、面接のために仕事を休んだり時間を作ったりする必要はありません。
[参考記事]
自己破産での免責審尋とはどういう手続きか?流れと内容、注意点
予納金が安い
自己破産を申し立てるときには、裁判所への手数料として「予納金」というものを納める必要があります。
即日面接制度を利用すれば、この予納金が通常の破産申し立てと比べて5,000円程度安くなります。
(2) 即日面接制度のデメリット
弁護士に依頼する必要がある
破産申立は、弁護士に依頼せずに一般人が自分で行うことも法律上は可能です(実際には一般人が自力で手続きを行うことは不可能に近いため、弁護士への依頼が必須になります)。
また、借金の総額が少なければ、自己破産を含む一部の借金問題は司法書士でも扱うことができます。
しかし、即日面接制度を利用するには、必ず弁護士に依頼をしなければなりません。
これは、即日面接制度が弁護士による債務者の財産状況の調査等を前提としているためです。
弁護士に相談する必要性や、弁護士費用が発生する点はご了承ください。
利用できる裁判所が限られている
即日面接制度は増加する破産申立件数に対処するために設けられた側面があります。
このため、破産申立件数が非常に多い東京地方裁判所でこの制度が開始されました。
他の裁判所にも広がりを見せると良いのですが、現状ではほぼ広がりを見せておらず、東京地方裁判所独自の制度となっています。
一応、横浜地方裁判所には即日面接制度に似た「早期面接制度」がありますが、他の裁判所にはなかなか同様の制度がありません。
実質的に東京地方裁判所でのみ扱っている制度である以上、基本的に東京在住の人でなければ即日面接制度を利用できません。
3.まとめ
即日面接制度は通常の破産手続きと比べて圧倒的に早く破産手続き開始の決定を受けられる便利な制度です。
自己破産をしたい場合は、ぜひこの制度の活用を検討してください。
また、即日面接制度を利用する場合は弁護士への依頼が必須となります。
泉総合法律事務所は、債務整理に強く、即日面接制度にも対応が可能です。即日面接制度をご利用される場合は、ぜひ当事務所の弁護士までご相談ください。