自己破産において必要な財産目録とは?
借金に困った場合は、自己破産をすれば借金問題の根本的な解決を図れます。
自己破産は裁判所を通して行う手続きです。
裁判所で行う手続きには、大抵の場合多くの書類が必要となります。自己破産も例外ではなく、様々な書類を集め、作成し、提出しなければなりません。
集めた書類をそのまま提出することはできたとしても、書類を「作る」のは難易度が高いです。
多くの人は自己破産の経験がないため、初めて見聞きする書類を作らなければならないでしょう。
ここでは、数ある自己破産の必要書類の中から「財産目録」をピックアップして、内容や書き方などを紹介します。
1.そもそも「財産目録」とは?
財産目録とは、債務者が現在所有している全ての財産を記載した内容一覧のことです。
財産目録の書き方を解説する前に、まずは財産目録が何故必要なのか、どのような財産を記載する必要があるのかなどを解説します。
(1) 財産目録は何故必要?
自己破産をするときは、当面の生活に必要な資産を除いた財産が裁判所によって処分されます。
裁判所は債務者の財産を売却するなどしてお金に換え、そのお金を債権者へ配当します。
これによって、債権者は最低限の弁済を受けられます。
そして、それでも返しきれなかった借金については、裁判所が「免責」許可してくれた後に、ようやく返済義務がなくなります。
つまり、自己破産には「財産を処分する」というステップが必要であり、債務者の財産を明らかにするために財産目録を作る必要があるのです。
財産が少ない場合は財産を処分することなく免責を受けられることがありますが、それでも「財産が少ない」ということを説明し、証明する必要があります。
そのため、財産の多寡に関わらず、自己破産をする際には財産目録を作らなければなりません。
なお、財産目録は個人再生手続でも提出する必要があります。
(2) 財産目録に記載する財産とは?
「財産」というと、真っ先に思い浮かぶのが現金や預貯金かもしれません。
しかし、普段意識していないものでも、多くのものが財産に含まれます。
家や土地などの不動産、自動車やバイクなどの大きな品物はもちろん、株などの有価証券類や貴金属なども当然財産としてカウントされます。
意外と忘れがちなのが保険ではないでしょうか?
保険は解約すれば解約返戻金がもらえることがあります。この解約返戻金請求権も財産に含まれます(掛捨てタイプで解約返戻金が生じない保険もあります)。
また、将来もらう予定の「退職金」も財産です。
仮に明日会社を辞めれば、遠くない将来に退職金をもらうこと自体は可能なはずだからです。
その他、事業をしている人は未回収の売掛金なども財産となります。
さらに、例えば交通事故に遭って損害賠償金をもらえる予定の人は、それも財産として記入する必要があります。
2.財産目録の記入方法
財産目録の書式は、裁判所が用意していることがあります。
裁判所へ行ってもらってくるか、ホームページからダウンロードするなどすれば手に入ります。
ただし、裁判所ごとに細部が異なるので、必ず管轄の裁判所から入手してください。
参考:財産目録(pdfファイル。記入例付き)|裁判所HP
また、自己破産を取り扱っている弁護士であれば、自己の法律事務所の所在地を管轄する裁判所に適した書式を持っているのが通常です。
いずれにしろ裁判所に合わせた形で目録を作らなければならないので、弁護士に相談しながら作成するべきです。
ここでは、一般的な記入方法を紹介していきます。
裁判所によって差異がありますが、ポイントを押さえておけば大きな間違いはしないでしょう。
(1) 記入項目の一覧
現金
保有している現金の額を1円単位まで記載します。
預貯金
使用している全ての預貯金口座の残高を記載します。
普通預金、定期預金など、預金や口座の種別に関わらず全ての口座を書かなければなりません。
取引金融機関や支店名、口座番号なども合わせて記入しますが、地方によっては通帳の写しを提出するため口座番号を書かないこともあるようです。
場合によっては数年以内に解約した口座の分も書く必要があります。
また、借り入れなどがあって残高がマイナスの場合も例外ではありません。
不動産
家や土地、マンションの1室など、保有している不動産について記載します。
不動産の種類、所在地、時価評価額、抵当権が設定されている場合は担保とされている額や債権者の情報などを書き込みます。
取得時期や取得したときの金額、取得した原因が相続などの場合はその旨も書き込んでください。
不動産を保有していない場合は、市町村役場の税務課で「無資産証明書」を交付してもらって添付しなければならないケースがあります。
自動車やオートバイなど
保有している車やバイク等の情報を記載します。
車名や年式、ローンがある場合は残額や債権者の名称なども必要です。
保険や個人年金
加入している保険や個人年金などを記します。
保険の名称、保険会社、証券番号、月々の掛金や解約返戻金、加入日などが主な記載項目です。
過去2年以内に失効したものも含めて記載しなければならないケースがあります。
積立金など
会社で行われている積立金がある人や、財形貯蓄や事業保証金などがある人が対象です。
積立金の種類、金額、積み立てを始めた時期などを書きましょう。
有価証券やゴルフ会員権など
小切手、株券、手形、社債、ゴルフ会員権など、有価証券について記載します。
有価証券の種類や評価額、取得した時期を書いてください。
退職金
定年まで勤めた場合の見込額ではなく、「現在退職したと仮定した場合」の金額を書きます。
既に退職した場合でも、過去に支給を受けた金額を書かなければいけないことがあります。
貸付金や売掛金、求償金、財産分与で得た財産など
人にお金を貸している場合は、その相手や金額を記載します。
事業をしている人で売掛債権がある場合は、それについても記載してください。
求償金とは、例えば他人の債務の保証人として代わりに支払ったお金のことです。
このお金は本来の債務者に支払いを請求できる債権であるため、財産にカウントされます。
さらに、離婚等で財産分与を受けた人は、その財産についても記載を求められます。
公的扶助
生活保護や各種年金、その他扶助制度を利用してお金をもらっている人が対象です。
受給したお金の種類や金額、受給を開始した時期などを書きます。
年金などで毎月お金を受け取っている人は、毎月の受給額を書いてください。
相続財産
相続が原因で財産を得た人は、どのような財産を得たかを記載します。
「2年以内」としている裁判所もあれば、時期を問わず取得時期を書くように定めている裁判所もあります。
相続財産の分割が終わっていない場合でも、この項目は埋めなければいけません。
事業用の設備や備品、在庫など
事業をしている人向けの項目です。
仕事に使っている設備や備品には財産的な価値があるものも存在します。
設備や備品の名前、評価額や購入時期などを記載してください。
また、在庫も財産なので、品物の名前や個数、価格などを書きましょう。
その他高額な財産
過去数年以内に購入した宝飾品やブランド品など、高額な品物を記載します。
東京地裁では「過去5年以内」「購入時の価格が20万円以上」としているようですが、居住地を管轄する裁判所の基準に合わせて書いてください。
品物の名前、購入時期、購入時の価格、現在の評価額などを書きます。
過去に処分した財産
過去に不動産など大きな財産を処分してお金を得た人が対象です。
処分した財産の種類、処分時期、処分によって得た金額などを書きます。
処分とは売却のほか、「質に入れた」「借金の担保として回収された」「保険等を解約した」などが含まれることがあります。
直近2年以内に処分した財産が対象となることが多いようです。
「大きな財産」の基準は裁判所ごとに異なります。
処分で得たお金の使途を記載するよう求めている裁判所もあります。
(2) 記入時に用意するべき資料
以上のように、財産目録には多くのことを書かなければなりませんが、書くための元になる資料の添付も求められます。
どのような資料が必要となるのか、主なものを紹介していきます。
- 全ての預貯金口座の通帳の写し(表紙を含めた全ページ)
- 不動産の登記事項証明書(ない場合は無資産証明書)
- 自動車検査証や登録事項証明書の写し
- 加入している保険や個人年金に関する書類(保険証券など。解約返戻金がある場合、その額がわかるもの)
- 失効した保険に関する証明書
- 有価証券類の写し
- 生活保護や年金など公的扶助の受給証明書の写し
- 退職金見込額証明書か、退職金を計算できるもの(就業規則の写しなど)
- 収入がわかるもの(給与明細など)
- 高額な財産を処分したときの契約書や、処分して得た金額わかる書類など
- 保有する高額な財産の評価額がわかるもの
- 相続や財産分与に関する書類など
人によって必要なものとそうでないものがあるので、弁護士と相談しながら資料を集めていきましょう。
3.財産目録の作成は弁護士に相談を
たとえテンプレートがあったとしても、財産の内容は人によって違うため、正確な財産目録を自力で作るのは大変です。
財産目録の内容に間違いがあると修正が必要になり、自己破産をするまでの道のりが遠のいてしまいますし、下手をすると自己破産で禁止されている「財産隠し」を裁判所から疑われるかもしれません。資産隠しとなった場合、免責不許可となってしまいます。
[参考記事]
自己破産で財産隠しは絶対NG|タンス貯金も調査される?!
確実な財産目録を手早く作るには、弁護士の力を借りるのが一番です。
弁護士がいれば矛盾のない正しい財産目録を作ることができ、借金問題を早く解決できます。
失敗を避け手間を省くためにも、自己破産のときは弁護士までご相談ください。