借金返済 [公開日]2018年3月7日[更新日]2023年4月4日

住宅ローンが払えないとどうなる?滞納・差し押さえ前に弁護士へ

念願のマイホームを手に入れたら、同時に住宅ローンの返済も始まります。
しかし、当初は問題なく住宅ローンを返済できていたとしても、想定外の事情による失業、自分や家族の病気(癌・うつ病など)、または事故などで支払いが苦しくなったという話が、知恵袋や体験ブログで散見されます。

ボーナス払いを利用しようとしていた人の場合、会社の業績悪化などでボーナスが減額されて住宅ローンの返済ができない状態になることも考えられます。
ご自身が高齢となり、子供への支援と住宅ローンの支払いを両立できないケースもあるようです。

このような理由で住宅ローンを払えない状況になると、一体どうなるのでしょうか?

ここでは、住宅ローンの支払いを滞納した場合に起こること、滞納の対処法などを紹介していきます。

1.住宅ローンが払えないとどうなる?

まずは、住宅ローンが払えなくなったらどうなるのか、滞納後の流れをご説明します。

なお、併記した期間はあくまで目安です。実際のタイミングは金融機関などによって異なりますのでご注意ください。

(1) 督促の開始(滞納直後から3ヶ月)

まずは、滞納の数日後から、郵便や電話で督促・取り立てが行われます。
最初は比較的穏やかな文面の督促状が届きますが、滞納期間が長くなるにつれて厳しい文面となっていきます。

2ヶ月程度滞納すると「このまま滞納した場合は残高や遅延損害金の一括払いを請求する」旨の書類が届くでしょう。

(2) 期限の利益の喪失(滞納から3~6ヶ月)

滞納を3ヶ月近く放置していると、そのうち「あなたは期限の利益を喪失しました」という旨が記載された書類が届きます。

期限の利益とは、住宅ローンなどの契約の際に定められる「この期限までは返済を待ってもらうことができる」という債務者の利益(権利)です。
期限の利益を失った人は、残高を一括払いしなければなりません。

[参考記事]

「期限の利益喪失通知」が届いた後にするべきこと

(3) 保証会社による支払い(滞納から約6ヶ月)

本債務者からの借金の支払いが受けられないと判断すると、銀行などのローン債権者は保証会社に一括払いを請求し、それを受けた保証会社が債務者の代わりに債権者へ支払いを行います(代位弁済)。
なお、これは(2)の期限の利益の喪失よりも前に行われることもあります。

代位弁済後は保証会社が新たな債権者となって、ローンの債務者に取り立てを行います。

債務者にとっては支払先が変わるだけで、ローンを払わなければならないことには変わりありません。

[参考記事]

代位弁済をされたら弁護士に相談を!|住宅ローン・カードローン

(4) 競売開始決定(滞納から6~8ヶ月)

ローンの回収が困難だと判断されると、保証会社は裁判所に競売を申立て、これを受けた裁判所から「競売開始決定通知」という書類が債務者のところへ届きます。
これによって競売の手続きが始まったことと、対象の不動産(マイホーム)が担保として差し押さえされたことが債務者に伝わります。

滞納者のマイホームが競売で売却されると、売られてしまった不動産は落札者の所有物になるため、引っ越しを余儀なくされます。債権者は、売却金額を受け取って債権の回収に充てます。

[参考記事]

「競売開始決定通知」が届いたらどう対処する?

その後、競売に先立って裁判所の担当者と不動産鑑定士などの専門家が「現況調査」のために自宅にやってきます。

現況調査では、強制的に自宅内外の写真が撮影され、間取りも確認されるとともに、自宅周辺の環境なども調べあげられてしまいます。

この様子を近所の人に見られた場合、競売の手続きが始まったことがバレてしまうかもしれません。

(5) 競売入札期間の通知(滞納から8~10ヶ月)

現況調査の後、競売の入札が始まったことを告げる通知が届きます。
何らかの対策を講じるのであればここが最後のタイミングですが、場合によっては既に手遅れであるおそれもあります。

できる対処法がない場合は、競売が終わるのを待つしかありません。

[参考記事]

競売を取り下げてもらうことはできる?

(6) 立ち退き(滞納から10ヶ月~)

競売で落札されると、家の所有権は落札者に移ります。
所有権のない家に住んでいる人は、たとえ元持ち主であっても不法占拠者となってしまうため、立ち退く必要があります。

立ち退きを拒んだ場合は強制執行を受ける可能性があり、そうなると裁判所の執行官によって荷物を運び出されて家から追い出されてしまうでしょう。

2.住宅ローンが払えない場合の対処法

以上のように、住宅ローンを滞納し続けると持ち家を失ってしまいます。

大切なマイホームを守るためにも、万が一滞納しそう、または滞納してしまった場合はどうすれば良いのでしょうか?

(1) 債権者(銀行等)と相談する

まず、滞納しそうだと判明した時点で、早めに住宅ローンの債権者(銀行など)と相談すると良いでしょう。

例えば、支払期間を延長して毎月の支払額を減額するなど、現実的な返済プランになるよう、スケジュールの見直しを承諾してくれることがあります。

支払期間が伸びる分、支払う利息が増える弊害はありますが、毎月の支払額が減れば滞納のリスクを減らせる可能性があります。

また、元本の支払いを一時停止してもらえることもあります。
利息は払い続けなければなりませんが、一時的に収入が減っているようであれば、利息のみの支払いで難局をしのぐことができるかもしれません。

とにかく相談することで、ケースに応じた何らかの措置をしてもらえる可能性があります。

(2) ローンの借換えを検討する

金利の低い住宅ローンに借り換えるのも一案です。

ただし、住宅ローンの返済を既に滞納している場合、そのことが審査に影響して借り換えが難しくなるおそれがあります。

(3) 任意売却をする

任意売却とは、競売で住宅を失う前に自分で住宅を売る手続きのことです。住宅を売って得たお金は、ローンの支払いに充てることができます。

競売だと低価で買い叩かれる可能性がありますが、任意売却なら市場価格に近い価格で売れるため、うまくいけば引越し費用などを捻出できるかもしれません。

任意売却をする場合は専門の業者に依頼する必要があります。
必ず住宅が売れるわけではありませんし、担保権者の承諾を得られない可能性もある、持ち家を失うことなどがデメリットですが、ただ競売を待つよりもよほどメリットは大きいでしょう。

任意売却とは?

(4) リースバックを利用する

リースバックとは、専門の業者に住宅を売り、その住宅を借りて家賃を払いながら住み続ける方式です。
自分の名義ではなくなるものの、同じ家に住み続けられるメリットがあります。

ただし、住宅を売ったお金でローンを返しきれなかった場合は、ローンの残債の返済と家賃の支払いが二重になって家計へ重くのしかかりますので、検討は慎重に行うべきでしょう。

【親族間で持ち家を売買するのは可能か?】
赤の他人や業者に家を売るのではなく、親族に家を買ってもらう方法もあります。親族に買ってもらった後は、その家を借りて住み続けることができるかもしれません。親族ならば家賃の相談に乗ってもらうなど、ある程度柔軟に対応してもらえる可能性があります。
しかし、そもそも買ってくれる親族がいるのかなどの問題はあります。

[参考記事]

任意売却とリースバックの違い

(5) 債務整理をする

弁護士に依頼して債務整理をすれば、借金を減額または0にすることができます。抱えている借金を適切に減らすことで、住宅ローンを支払う余裕が生まれるかもしれません。

持ち家を失いたくない場合は「個人再生」がおすすめです。
個人再生ならば、住宅ローンを従来通り支払うことを条件に他の借金を大きく減額してもらい、持ち家に住み続けることができます。

減額してもらった借金は、原則3年程度かけて毎月返済していくことになります。

[参考記事]

住宅資金特別条項(住宅ローン特則)の利用要件

収入が全くなくなってしまったなど、住宅ローンそのものの支払いが難しい場合は「自己破産」をして借金を0にすることを考えましょう。
自己破産をすると家を失ってしまいますが、借金が帳消しになるメリットは大きいです。

いずれにしろ、債務整理をする前は弁護士に相談し、あなたにとっての最善策を考えてもらうことが大切です。

3.住宅ローンが払えない場合によくある質問

最後に、住宅ローンを滞納した、または滞納しそうな人の多くが不安に思うことについて解説していきます。

  • (1) 住宅ローンを払えないと保証人に請求が行く?

    現在、住宅ローンの多くは保証人が要らないようになっています(=保証会社が保証人の役割を担う「機関保証制度」となっています)。

    例外的に、夫婦などの収入を合算してローンを組む場合や、ペアローンを組む場合には保証人が必要です。

    収入を合算する場合、例えば夫のみがローンの契約者になり、妻が連帯保証人となります。
    ペアローンでは夫婦や親子などのペアがそれぞれローンの契約者になり、お互いに連帯保証人となります。

    このように連帯保証人がいる場合、ローンの契約者が支払不能になると、連帯保証人へ請求が行きます
    そして、連帯保証人にも支払能力がない場合は、連帯保証人も自己破産をするなど何らかの対策を取らなければならない事態になります。

  • (2) 住宅ローン滞納で給料の差し押さえはされる?

    住宅ローンを滞納したら、通常は住宅の売却(競売)が行われるため、住宅ローンだけの滞納ですぐに給与を差し押さえられることはないでしょう。

    ただし、競売の後に残った借金(残債務)の返済が滞った場合は、給与差し押さえを受ける可能性があります。

  • (3) 住宅ローンの滞納で裁判になる?

    住宅ローン滞納で裁判になるケースは基本的にありません。ローンの債権者は裁判を経なくても競売をすることができますし、競売になったとしても債権者・債務者ともに裁判所に行く機会はそう多くありません。

    なお、債務者の方が「競売は不当だ!」と裁判所に訴えても、実際に支払いを滞納している以上、勝てる見込みはほぼないでしょう。裁判をするだけ無駄になってしまうので、弁護士に相談して他の方法を検討することをおすすめします。

4.住宅ローンが払えなくなったら早めの相談を

「ローンが払えないなら家を売るしかない」…そう考えるのは早計です。
ローンを組んだ銀行などに相談することで、家を失うことなく借金問題を解決できるかもしれません。

住宅ローン滞納の解決策としては、任意売却やリースバック、親族間売買などの方法があります。
しかし、住宅ローンを含めた借金そのものを減額または帳消しにしたい場合は、弁護士に依頼して債務整理を検討しましょう。

弁護士は、個々のケースに合わせた最善の解決方法を考えてくれますし、債務整理の手続きも代行してくれます。
借金で困ったら、ぜひ当事務所の弁護士へご相談ください。

相談は何度でも無料です。借金の悩みや不安についてお気軽に弁護士へご相談ください。
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