家族が借金を隠していた!正しい対処法は?
借金を抱えていても、家族に隠しているというケースは意外と多くあります。配偶者に秘密にしているケースは特に多く、「バレたら離婚される」と思っている方もたくさんいるようです。
また、親に借金を打ち明けられないお子さんも多いと思います。
ただ、家族の側にしてみると、借金を隠されていることは重大な問題です。配偶者(妻・夫)や息子・親が借金していることが発覚したら、大変ショックでしょう。
そんなとき、家族はどのように対応したら良いのでしょうか?家族としてできること・正しい対応はあるのでしょうか?
ここでは、家族の借金の事実を知った際に取るべき行動について、弁護士が解説します。
1.家族の借金が発覚した際に取るべき行動
早速本題です。
家族の借金が発覚したら、突然の事実にパニックになってしまうこともあるでしょう。「何に使っていたの?」「借金の総額はいくらなの?」「いつから借金していたの?」「これからの家族・生活はどうなるの?」など、借金に対する疑問や疑念、不信感、不安感が頭の中を渦巻きます。
このようなとき、家族はまずどのような行動を取るべきなのでしょうか?
(1) 借金の内容について確認して話し合う
まずは、気持ちを落ち着けて冷静になり、家族で話し合いましょう。
怒りや悲しみはもっともですが、できるだけ感情を抑えて対応することが大切です。
そして、話し合いの中で、以下の点を明らかにしていきましょう。
- 何が原因の借金なのか
- 借入総額はいくらになっているのか
- いつから借金をしていたのか
- 家の財産の使いこみをしていないか
①何が原因の借金なのか
たとえば、給料が減ったり失業したりしたのでお金が足りなくなり、家の生活費のために借金をしたのであれば、秘密にしていたのは別にして、仕方のない事情とも言えます。家族で今後の生活方法を検討していかなければなりません。
一方、パチンコなどのギャンブル、キャバクラなどの娯楽にはまって借金したという場合、あまり同情はしにくいでしょう。
とにかくギャンブルや浪費を止めてもらって、借金を整理することを考えなければなりません。
②借入総額はいくらになっているのか
借金総額によっても、今後の対応方法が変わってきます。
少額なら自力で返せるかもしれませんが、多額なら専門家に債務整理を依頼する必要があります。
③いつから借金をしていたのか
いつから借金をしていたのかも重要です。
結婚をする前からある借金なのか、結婚後にした借金なのかにより、家族の心情も変わってくるでしょう。
また、(今ではほとんどないケースですが)2007年以前から借りているお金なら、過払い金が発生している可能性もあります。
④家の財産の使いこみをしていないか
借金をしている人は、預貯金を出金したり生命保険を解約したりして、家の財産を使い込んでいることが多いので注意が必要です。
共有財産にまで手が及んでいるならば、今後の対策を考えなければなりません。
このように、話し合いで借金の事実を整理することにより、今後の対処方法ややるべきことが見えてくるものです。
(2) 離婚より前に債務整理を検討
配偶者が借金をしていたら、「離婚」が頭をよぎることも多いでしょう。
ただ、配偶者が借金しているからといって、離婚しなければならない、ということはありません。
借金は個人ごとの契約ですから(金銭消費貸借契約)、保証人にでもなっていない限り、家族が代わりに返済しなければならないということはありません。
家の財産の使い込みを防止し、債務整理などによる根本的な解決を目指せば、家族の生活は守られるのです。
また、離婚を考えたとしても、裁判離婚の場合には借金を原因とした離婚が法的に認められにくいということもあります(民法770条1項各号)。
協議離婚で両者が同意していない限り、特に生活費のための借入や少額の借入を原因に離婚することは難しいかもしれません。
子どもがいる夫婦が離婚をすると子どもに与える影響も大きいですので、離婚を考えるよりも、債務整理をして家族生活をやり直す方が建設的でおすすめのケースも多いです。
この点は、離婚問題や借金問題に詳しい弁護士へ相談してみることをお勧めします。
2.子供が借金をしていた場合の対応方法
上記は主に配偶者を前提としていましたが、子供が親に借金を内緒にしていたというケースもあります。
子供が借金の返済をできないとき、親に支払い義務はあるのでしょうか。
(1) 子供が未成年者の場合
子供が未成年者の場合、未成年者は民法上「制限行為能力者」とされ、取引の経験も知識も乏しく、判断力も未熟と考えられています。
そのため、借金をするには親権者(法定代理人)の同意が必要で、仮に親権者の同意を得ないで契約を行った場合は、後から契約を取り消すことができるのです。
取消権は本人と親権者が行使することが可能で、取消権を行使した場合、借金は過去に遡って無効となります。
しかし、未成年者が詐術を用いた(自分は成人だと偽ったり、親の同意書を偽造したりした)場合や、既婚者・商売人である場合、そして親の同意を得た上で行った借入である場合は、借金は有効になります。
ただ、その場合でも、借金の返済義務を負うのは未成年者本人であり、保証人や連帯保証人などになっていない限り親に支払い義務はありません。
未成年の借金について、詳しくは以下のコラムをご覧ください。
[参考記事]
未成年が個人で行った借金は無効になる?親が払う?
(2) 子供が成人している場合
一方、子供が成人済みの場合は、当然ながら親権者の同意も必要なく、親に支払い義務はありません(しかし、親が保証人や連帯保証人などになっていない場合に限ります)。
例え親子であっても、借金は子供個人の問題です。「子供が作った借金は親にも責任がある」と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、法律上は特にそのような責任はありません。
そこで、実際に子供が借金で悩んでいるならば、「親として代わりに支払ってあげる」のか、「子供の自立のために手を貸さない」のかは、親次第ということになるでしょう。
根本的な解決を望むのならば、お子さんに債務整理の手続きを紹介してあげることもおすすめです。
3.連帯保証人になっている家族への影響
借金について、家族の誰かが連帯保証人になっていることが多くあります。
このようなときに主債務者が債務整理をすると、その連帯保証人にはどういった影響が及ぶのでしょうか。
(1) 連帯保証人には支払い義務が生じる
例えば、住宅ローンや車のローンなどで、妻が夫の連帯保証人になっていることも多いです。
このような場合には、妻は連帯保証の義務を逃れることができません。債務者と同等の債務の返済義務を負っているので、元の債務者が借金を支払わない場合、債権者からは全額の支払いを請求されます。
そこで、主債務者が支払いをしないで債務整理をしてしまうと、債権者は連帯保証人に対し、代わりに債務の一括払いを請求してくるでしょう(遅延損害金を含む)。
(2) 保証債務を払えない場合はどうなる?
債権者から債務の一括請求がされても、連帯保証人も同様に支払いできないという場合が多いでしょう。
このような場合、放置しておくと、債権者は裁判を起こしてきます。そして、裁判所は連帯保証人に対し、借金残金+遅延損害金の一括払いの命令を下します。
それでも支払いがないと、債権者は連帯保証人の財産(給料・預貯金・生命保険・株券や車など)まで差し押さえてしまいます。
こうなったら、連帯保証人も一緒に債務整理をせざるを得ないでしょう。
[参考記事]
連帯保証人が自己破産した場合の主債務者への影響
(3) 勝手に連帯保証人にされていた場合は支払義務はない
まれに、家族が了承していないのに、勝手に連帯保証人にされているケースがあります。勝手に実印などの印鑑を持ち出されて、署名押印されている場合です。
このような場合、保証契約自体が有効に成立しませんから、家族は連帯保証人の義務を拒絶して争うことができます。金融機関と話し合いをして解決できることもありますし、裁判になることもあります。
最終的に、家族が保証をしていない(署名押印していない、旦那が勝手に印鑑を持ち出して署名押印したことについて、家族に責任がない)ことを証明できれば、家族が支払い義務を負うことはありません。
この他、保証人と連帯保証人については、以下のコラムでさらに詳しく解説しています。
[参考記事]
保証債務とは?保証人の義務が発生するリスク・対処法
このように、家族が借金を滞納していて、その家族が保証人になっているなら、借金した本人と一緒に保証人も弁護士の所までご相談に行くことをおすすめします。
4.債務整理はお早めにご相談ください
夫・妻や子供など、家族が借金していることが発覚すると、ショックも大きいでしょう。
借金が大きすぎて自力での返済が苦しい状況であれば、早めに「債務整理」を提案しましょう。
債務整理とは、借金を整理するための法的な手続の総称です。
支払い利息をカットして月々の返済金額を抑える方法(任意整理)や、住宅ローンの残っているマイホームを残しながら借金の元本を大きく減額して支払を楽にする方法(個人再生)、借金を全額免除してもらえる方法(自己破産)など、いろいろな種類があります。
借金問題とは言っても人によって状況はさまざまですから、ケースによって最適な債務整理の方法を用いるべきです。そうすると、ほとんどの借金問題を解決することができます。
専門家である弁護士に相談すると、その方やご家族の状況に応じた最善の債務整理方法を提案してくれます。
適切な手続を選択すれば、必ず状況を改善できます。一人ひとりに応じた万全のサポートを行いますので、借金問題は泉総合法律事務所にお早めにご相談ください。