簡易裁判所からの支払督促・訴状を受取拒否したらどうなる?
消費者金融や銀行からの借り入れ、住宅ローン、税金など、何かしらの債務を滞納したまま放置すると、簡易裁判所から郵便物(支払督促・訴状)が届くことがあります。
裁判所からの通知に驚くのは当然のことです。「よく分からない」「面倒くさい」と思って受け取った後に放置したり、受け取り拒否しようとしたりする方もいらっしゃるようですが、このような対応は極めて危険です。
このコラムでは、裁判所からの郵便物(支払督促・訴状)を放置・拒否した場合どうなるのか、また、裁判所から郵便物が届いた場合には本来どうするべきなのかという点について説明していきます。
1.裁判所からの郵便物の内容
裁判所から届くもので、特に放置しておくと不利益となる可能性が高いものは「訴状」と「支払督促」です。
これらは、配達の記録が残り受取拒否もできない「特別送達」という特殊な方法で郵送されます。
[参考記事]
裁判所から届く「特別送達」にはどう対応すればいい?
訴状・支払督促が届く理由としては、長期に渡って借金の返済を滞納し、債権者から届く督促状を無視し続けた結果というのが考えられます。
このようなものが届いたら、自主的に借金を返済してもらうことができないと判断した債権者が、債権の回収を図るため、裁判所を通した「強制執行」に踏み出したと考えるべきです。
-
2.訴状・支払督促を無視するとどうなる?
では、特別送達で届く「訴状」や「支払督促」を無視するとどのようなことが起きるのでしょうか。
(1) 訴状→強制執行
借金の滞納を続けた結果訴えを提起された場合、訴状が郵送されてきます。
その郵便物の中には、第1回期日の呼び出し状も入っています。そのため、まずは郵便物を受領しないと、その期日がいつなのか分かりません。
当然ながら、期日が分からなければ、その日に裁判所に行くことができません。
そうすると、その期日の数週間後には、原告の主張がすべて認められた旨の判決が出てしまいます。この判決は「債務名義」となります。
債務名義と必要書類を裁判所に提出することで、債権者は訴えられた被告(債務者)名義の財産の差し押さえ(強制執行)をすることが認められてしまいます。[参考記事]
強制執行に必要な債務名義とは?取得されてしまった場合の対処法
差し押さえ(強制執行)により、たとえば、勤務先が知られていれば、給与の差し押さえをされ、給与の一部は勤務先から債権者に支払われてしまいます。
また、預金口座が知られていれば、その口座に入っている預金がすべて(※債務額が上限)債権者に支払われてしまうというリスクも生じます。(2) 支払督促→強制執行
「支払督促」は、裁判を提起することを煩雑に感じた債権者の多くが取る手続きです。
これを放置し、支払督促が送達された日から2週間以内に異議申立を行わなければ、債権者の債権の存在が認められるだけでなく、上記のような「判決」がなされたのと同一の効力が生じることになります。
つまり、支払督促を受け取らないと、訴状が届いた時と同様に強制執行されるリスクが発生するのです。
-
3.郵便物を受け取らないとどうなる?(受け取り拒否)
特別送達は、基本的に受け取り拒否できません。
書留郵便や簡易書留のように、郵便配達員が直接手渡すのが原則となっています。しかし、たとえ受け取りを拒否しても、郵便配達員が特別送達を「その場に差し置く」ことで配達が完了したとみなされます。同居の家族が特別送達を受け取っても問題ありません。
とは言え、例えばいくら配達をしても受取人が留守だったような場合、郵便配達員が郵便物を持ち帰る可能性も0ではありません。
また、裁判所が調査を尽くしても債務者の住所や居所、勤務先が判明しない場合があるかもしれません。このような場合はどうなるのでしょうか?
(1) 付郵便送達
被告が特別送達を受領しなかった場合、その郵便物はいったん裁判所に返されます。
しかし、原告が被告の住所を調査した報告書を提出し、裁判所によって当該住所に被告が居住している事実が判明すれば、被告が受領しようがしまいが関係なく、書留郵便を発送した時点で送達されたものとみなされます。
これを付郵便送達といいます。(2) 公示送達
公示送達とは、被告の住所や居所、勤務先が判明しない場合に、裁判所の掲示板に公示し、2週間を経過した時点で送達がなされたものとみなされるというものです。
とは言え、裁判所の掲示板を毎日チェックしているような人はいないでしょう。
そうなると、自分の知らない間に掲示期間の2週間が経過し、送達がされたものとみなされてしまうことになります。このように、訴状や支払督促などの裁判所からの郵便物を何回も受け取り拒否をしても、最終的には強制執行されて財産を差し押さえられてしまいます。
4.裁判所から郵便が届いた場合の対応
給料が差し押さえられたり、いつも引き出せていた預金口座から下ろせなくなったりして、初めて事の重大さに気付くという方もいらっしゃいます。
裁判所から郵便物が届いたのであれば、心当たりがなくてもまずはしっかり受領し、早急に弁護士などの専門家にご相談されることをおすすめします。
全く見に覚えのない郵便物でも、もしかしたら保証債務(自分が保証人になっている借金)かもしれません。
このような借金問題や差し押さえなどの強制執行は、「債務整理」により一挙に解決できる可能性が高いです。
[参考記事]
借金滞納で給与差し押さえ!解除・回避のために必ず知っておくべき事
また、長期間債権者からの連絡がなかった債務の場合、消滅時効が成立していることもあります。
この場合、時効援用をすれば債務は消滅しますので、強制執行されるようなこともありません。
[参考記事]
借金の時効が成立する条件と、時効の援用ができないケース
時効の援用についても、弁護士ならば適切に対応することが可能ですので安心してご相談ください。
5.簡易裁判所からの支払督促・訴状が届いたら弁護士へ
泉総合法律事務所はこれまでにも、給与差し押さえなどの強制執行をされそうだという多重債務者の方からのご相談を多く受けております。
裁判所から郵便が来てしまいお困りの方は、大至急、当事務所までご連絡ください。
効果的な対処方法について、弁護士がアドバイスさせていただきます。