法人破産 [公開日]2020年5月28日[更新日]2021年3月17日

有限会社の破産手続き

2006年の法改正によって、有限会社は新たに設立できなくなりました。
現在存在する有限会社はそれ以前に作られた会社ということです。

有限会社は株式公開ができず、資本金が最低300万円必要なものの、取締役の任期がない・決算を公告する義務がない・代表取締役の任命が義務ではない(最低1人の取締役が必要)という点で、家族経営または小規模な事業の法人化に向いています。

しかし、規模が小さい会社が多いせいか、資金繰りに困って倒産する例も多いようです。

ここでは、有限会社の破産手続について様々なことを説明していきます。

1.有限会社の経営が厳しい場合に可能な法的倒産方法

法的な倒産の方法には主に以下の4つがあります。

法人破産・特別清算・会社更生・民事再生

このうち特別清算と会社更生は、株式会社でなければ選択できません。
有限会社が採れる方法は法人破産か民事再生ということになります。

(1) 法人破産

最も典型的なタイプの法的な倒産です。
会社の財産をすべて換金して債権者への弁済に充当し、会社の法人格を消滅させます。

弁済できなかった債務は法人の消滅とともになくなりますが、事業主が会社の保証などをしている場合は、滞納した税金などの支払義務が事業主へ引き継がれます。

(2) 民事再生

裁判所に再生手続開始を申し立てて、債務の減額をしてもらいます。
法人破産と違って会社が存続するため、事業の継続が可能です。

しかし、これができるのは減額した債務を返済できると裁判所に認められた場合に限られます。
また、手続の要所で債権者の同意が必要なこともネックです。

減額の対象となるのは担保のない債務のみなので、整理できる債務が限られているのも欠点でしょう。

2.有限会社の破産の流れ

有限会社の破産手続は、株式会社と大きな違いはありません。
一般的な流れを解説していきます。

(1) 法人破産の準備

まずは弁護士に相談して、何をすべきか判断してもらいましょう。

個別のケースに合わせた方法で対応してくれますし、次のステップである裁判所へ申立てをするための書類も用意してくれます。

(2) 裁判所に申立て

必要な書類や資料を用意したら、裁判所に法人破産の申立てを行います。

弁護士に依頼した場合、手続は弁護士が代行してくれます。
申立て段階では、有限会社の代表などが裁判所へ行く必要はありません。

自己破産(個人破産)には手続が簡易な「同時廃止」というものがありますが、法人破産は必ず「管財事件」という、破産本来の手続で行われます。

管財事件では財産を処分してお金に換える必要がありますが、この手続きによらずに勝手に財産を処分すると後で問題になるかもしれません。

(3) 破産審尋

申立て後、裁判官と破産申立人が面談する「破産審尋」が実施されます。
これには破産申立人である法人の代表者が直接参加しなければなりません。

裁判所によっては申立人の弁護士・裁判官・後述する破産管財人の候補者が面談を行うこともあります。
運用方法が裁判所ごとに違うため、予め弁護士に確認しておくといいでしょう。

(4) 破産手続開始決定

提出された書類や資料、破産審尋の内容を考慮して、裁判官が破産手続を開始するか否かを決定します。

(5) 破産管財人の選任

破産手続開始決定と同時に、裁判所が「破産管財人」を選任します。

破産管財人は破産手続を実務的に取り仕切る役を担い、会社の財産や負債の状況を調査し、財産を処分してお金に換え、債権者へ分配(配当)します。

破産申立人は管財人に協力する義務があるので、会社の帳簿を含めた財産、負債、その他資料などを全て引き渡さなければいけません。

また、隠している債務がないか調査するために、会社宛の郵便物が全て管財人の事務所に届くよう変更されます。

(6) 管財人の調査と換価処分

管財人は会社の資産や負債の状況を調査し、お金に換えられるものを売却していきます。
また、会社に不正行為がないかの調査も行います。

何度か面談があるかもしれませんが、断ると手続に支障がありますし、最悪の場合には調査に協力しなかったとして罰を受ける可能性もあるので、必ず応じてください。

(7) 債権者集会

管財人の調査や換価処分と並行して、裁判所で「債権者集会」が開かれます。

メインは管財人による報告で、調査や換価処分の状況などが説明されます。

出席するのは裁判官・管財人・破産申立人・破産申立人の弁護士の4者であることが多く、債権者が出席する例は少ないです。

仮に債権者が出席した場合でも、罵声を浴びせられるようなことはほぼありません。

中小の有限会社の場合、特段問題なければ、債権者集会は大抵10分程度で終わります。
債権者集会は複数回実施されることもあります。

(8) 配当

換価処分で得た現金を、管財人が各債権者に配当します。

法律に規定された優先順位に基づいて配当されるので、破産申立人がすることは特にありません。

(9) 破産手続の廃止と法人の消滅

配当が終わると破産手続が廃止(終了)されます。

3.有限会社の破産費用

多くの方が気にするのが費用でしょう。

裁判所によって違いますが、以下に東京地裁の例を記載します。

(1) 一般的な金額

  • 申立手数料:1000円
  • 官報公告費:14786円
  • 予納郵券:3490円〜
  • 管財手続費用:20万円~

郵券とは連絡用切手の代金のことで、債権者の数によって変動します。

管財手続費用とは管財人への報酬で、複雑な事件では増額されることがあります。

(2) 特定管財の管財手続費用

債権者が多い、負債総額が高額などの事情によっては、管財人の負担が増えるため「特定管財」という扱いになります。

特定管財では管財手続費用が以下のように変更されます。

負債総額 管財手続費用
5000万未満 70万円
5000万以上1億円未満 100万円
1億円以上5億円未満 200万円
5億円以上10億円未満 300万円
10億円以上50億円未満 400万円
50億円以上100億円未満 500万円

(100億円以上の場合については割愛します)

(3) 弁護士費用

案件により異なりますが、50万円以上が相場と言えます。

当事務所の弁護士費用については、以下の通りとなっております。
なお、借金問題に関する相談は、当事務所では無料となっております。

休眠会社|資産なし:38.5~55万円(税込・別途:手数料3万円)
営業中|資産あり:55万円~(税込・別途:手数料3万円)
大規模企業|応相談(別途:手数料3万円)*法人の規模によって異なります。

4.有限会社の破産も弁護士へ相談を

有限会社の倒産は法人破産か民事再生しか方法がなく、現実的には法人破産しか選択できない場合も多いです。

その法人破産にも多くの注意点があるので、検討する場合はぜひ弁護士にお声がけください。

弁護士は裁判所の運用に精通していますし、各有限会社の事情を考慮して最適解を導き出すことができます。

「株式会社じゃないと扱ってもらえないのでは?」と二の足を踏んではいけません。
どのような案件でも責任を持って最後までご依頼者様のために尽くします。

お悩みの方は、ぜひお早めに泉総合法律事務所へご相談ください。

相談は何度でも無料です。借金の悩みや不安についてお気軽に弁護士へご相談ください。
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