借金返済 [公開日]2019年11月25日[更新日]2021年2月5日

競売を取り下げてもらうことはできる?

住宅ローンを長らく滞納していると、自宅が「競売」にかけられてしまう可能性があります。
本記事をお読みの方の中には、既に裁判所から「競売開始決定通知」という書類が届いてしまった方もいるかもしれません。

「競売」とは、簡潔に言えば「裁判所が、住宅ローン等の債権者からの申立てを受けて、その債権を回収するために滞納者の自宅を売却すること」を指します。

競売が実行されたら、滞納者は自宅を強制的に売却されてしまいます。

では、競売を回避する(競売を取り下げてもらう)方法はあるのでしょうか?

現在住宅ローンを滞納中の方や、既に競売の可能性に怯えている方は、本記事に一度目を通した上で、すぐにでも競売を回避するための行動を起こすことをお勧めします。

1.競売を回避する方法「任意売却」

早速ですが、「住宅ローンの残務を一括で返済する」以外にも、競売を回避する方法は存在します。

競売を防ぐ方法として多く使われているのが「任意売却」です。
その名の通り、任意、つまり住宅の持ち主の意思で、住宅ローン債権者(抵当権者)の同意を得た上で住宅を第三者へ売却する方法です。

競売の回避をするには、「開札日」の前日がタイムリミットです。
この日までに競売を回避するための対策が「終わっている」必要があります。

(本来的には、「競売で不動産を買った人が代金を払うまで」は、競売を取り下げられる筈ですが、買った人の同意が必要であるところ、同意を得られる見込みは薄いので、期待しない方がいいでしょう。)

すなわち、競売入札開始の前日までに、すべての債権者から任意売却の同意を得ていれば、競売を取り下げることができます。
なお、任意売却によって競売が取り下げられた場合には、裁判所への予納金は残りがある場合だけ返還されます。

任意売却の主なメリットは以下の4つです。

  • 市場価格に近い額で売れるので、その分、多くの住宅ローンを返済できる
  • 引っ越しのタイミングをある程度自分で決められる
  • 上手くいけば引っ越し費用の一部を得られる
  • 滞納者と近しい関係者が滞納者の自宅を落札して買い取ってくれれば、滞納者は落札した親族等から物件を借りることで、その後も同じ家に住み続けることが可能となり得る
【競売取り下げの費用】
競売の取り下げ自体には、ほとんど費用が発生しません。
しかし、債務者は競売の申し立ての際に裁判所に支払われた予納金を負担しなければなりません(多くの場合、申し立て時に債権者が立て替えで支払っています)。
先述の通り、任意売却によって競売が取り下げられた場合には裁判所への予納金が返還されますが、これは取り下げ時点までにかかった経費が差し引かれたものです。予納金額は裁判所によって異なりますが50万円~100万円程度のため、取り下げで返還されるのは20万円~40万円程度と考えられます。
より多くの予納金を返還してもらうには、なるべく早い段階で競売手続きをストップする必要があります。取り下げを考えるならば、出来るだけ早く弁護士に依頼して動くべきでしょう。

 

なお、住宅ローンを払えなくなってしまった場合、「リースバック」によりマイホームに住み続けるという手段もあります。

[参考記事]

任意売却とリースバックの違い

2.任意売却の注意点

しかし、任意売却をしても、必ずしも競売を回避出来るとは限りません。

(1) 競売の取り下げをできるのは債権者のみ

まず気をつけておくべきことは、競売の取下げは、申立人すなわち債権者しか出来ない、ということです。
つまり、競売の取り下げには、申立人=債権者の協力が必要不可欠になります。

競売に至るということは何ヶ月も住宅ローンの支払いを遅らせているということであり、このような滞納者と債権者の関係は悪化しているものと考えられます。
よって、債権者から様々な条件を出されて、交渉が難航する恐れがあります。

債権者に取下げに応じてもらうには、前提として、その理由について債権者に様々なことを納得してもらう必要があるのです。

例えば、任意売却をして買い手が見つかっても、債権者が「競売した方が高く売れそうだ」と思った場合は、そのまま競売が進められることがあります。

また、任意売却の話がまとまったとしても、債権者が「もっと高く買ってくれそうな人が現れるかも知れない」と考えて、取り下げ期限ギリギリまで様子を見ることもあるかもしれません。

何れにせよ、債権者に納得してもらわなければ、競売を取り下げてもらえないので、債権者に対しては下手に出ながら何とか説得する必要があります。

(2) 債権者が書類を出す必要がある

競売の取り下げは、債権者が裁判所に書類を出すことで行ないます。

しかし、仮に交渉がまとまっても、債権者が本当に取り下げ書類を出してくれるかどうか分かりませんし、書類に不備があれば、裁判所から内容の修正を求められるため、提出までに時間がかかってしまいます。

最終的な取り下げの有無は債権者の判断に任せるしかないので、任意売却をしたからと言って、確実に競売を回避出来るとは限らないのです。

3.競売の流れ

先程、「競売の回避をするには、「開札日」の前日がタイムリミット」と記載しました。

競売開始決定から開札日までは、通常6ヶ月程度あります。任意売却するのに慌てる必要はありませんが、のんびりしている時間もないと言えるでしょう。

開札がされると競売の取下げができなくなりますので、競売が申立てられてから競売が完了するまでのステップを理解しておく必要があります。

最後に、競売の流れについて簡単にご説明します。

(1) 競売開始決定通知

ローンの滞納を続けていると、裁判所(競売手続を取り扱う執行裁判所)から「競売開始決定通知」という書類が届きます。滞納が開始してから数か月の経過後に届くことが多いようです。

これは、「あなたの自宅を競売することを決めました」ということを滞納者に連絡する書類です。
この時点で専門家に相談すれば、まだ間に合う可能性があります。

[参考記事]

「競売開始決定通知」が届いたらどう対処する?

(2) 現況調査

裁判所から依頼を受けた担当者が、滞納者の自宅までやってきて、自宅の内部を含めて、写真撮影等の現況調査を行ないます。

滞納者は、この現況調査を拒むことが出来ません。たとえ玄関に鍵をかけていても、鍵屋が同行するので、鍵を開けられて中に入られてしまいます。

このとき同時に、滞納者からの聞き取り調査等も実施されます。

(3) 競売の期間入札通知

その後、競売の入札期間や開札日を知らせる通知が届きます。

入札期間が始まると、物件を買いたい人が購入希望額とともに申込みを行います。
そして「開札日」に、最も高値を付けていた人が物件を手に入れます。

(4) 競売の終了

開札が終わり、最高値を提示していた人がその落札額を払い終えたら、競売手続は終わりです。

この時点で、自宅物件の所有権は完全に落札者へと移り、不動産登記簿上の所有名義の移転登記手続も行なわれてしまいます。

【競売が終わったらどうなるの?】
競売が終わると、対象物件の所有権が他人(落札者)に移転するため、最早その物件に住み続けることは出来ません(仮に、その後も居座り続けると、不法侵入や不法占有になってしまいます)。
よって、競売終了後は、速やかに引っ越しを行なわなければなりません。競売された物件にそのまま居座っていると、裁判所から執行官が作業員や鍵屋とともにやってきて、鍵を開けて、内部の家財道具をトラックに積みこみ、裁判所が指定する倉庫まで運び込んでしまいます。強制的に立ち退きさせられた挙げ句、立ち退き料ももらえないという悲惨な状況になってしまうのです。
しかも、住宅の売却金額が住宅ローンで借りた額に満たない場合(オーバーローンの場合)は、競売で住宅を失ったところで更に、不足分の金額(ローン残)を直ちに支払うよう請求されてしまいます。

4.任意売却の専門家に相談して競売を防ぐ

任意売却によって住宅を売り、債権を返済出来る見通しがつけば、債権者に競売を取り下げてもらえるかもしれません。

しかし、任意売却したからと言って、自動的に競売を取り下げてもらえるわけではなく、取下げに向けた債権者との交渉は必須になります。

ただ、住宅を買ってくれる相手を見つけるのも、債権者との交渉も、素人が1人で出来るものではありません。

競売開始決定通知が届いたら、出来るだけ早く任意売却の専門家(不動産業者など)に相談して、競売を取り下げてもらうために全力を尽くして下さい。

泉総合法律事務所は、住宅ローンの滞納に関する借金問題を多く解決してきた実績豊富な弁護士事務所です。任意売却等に関する相談も承っております。
競売をなんとか取り下げたい、任意売却をしたいとお考えの方は、どうぞお早めにご相談ください。

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