借金返済 [公開日]2018年4月13日[更新日]2023年10月11日

うつ病で働けず抱えてしまった借金も債務整理で解決できる?

うつ病で働けず休職・失業…借金が嵩んだら債務整理はできる?

【この記事を読んでわかる事】

  • うつ病で失業してしまった場合の救済策や制度はどんなものがある?
  • うつ病で休職、退職をし、生活費が足りず借金をしたらどうすればいい?
  • 仕事がない場合、どのような債務整理方法を選択できる?

 

厚生労働省の調査によると、令和2年に医療機関を継続的に受療しているうつ病・躁うつ病の総患者数は約 172 万人にのぼるそうです。
また、少し古いデータですが、2012年の「職場におけるメンタルヘルス対策に関する調査」によると、1 年間に1ヶ月以上休職・退職した労働者がいる事業所は25.8%にのぼり、実に4社に1社はそうした社員を抱えていることが分かっています。

しかし、残念ながらメンタルヘルスを理由に休職する場合、給与を支給しない企業や、支給を減額する企業が多いです。
(傷病手当金により全くの無収入になるということはありませんが、この手当で支払われるのは給与の約3分の2の金額です。)

うつ病で休職をして給料の支払いがない場合でも、社会保険料や税金の支払いは続きます。
こうした状況を考えると、うつ病による休職が長期に及んだ場合、経済的に厳しい状況に置かれることは想像に難くありません。

今回は、うつ病で働けなくなったときの対処法と、うつ病患者の債務整理について解説します。

1.うつ病の休職中・退職後に支給されるもの

まず、うつ病などで休職・失職した場合、国や企業から得られる補助を見てみましょう。
うつ病で思ったように働けないという方は、まずはこちらを確認してみることをお勧めします。

(1) 傷病手当金

傷病手当金は、健康保険加入者が病気療養中に支給される手当で、会社から十分な給与の支給がないときに、被保険者とその家族の生活保障をする制度です。
病気が理由で連続して3日休み、4日以上仕事に従事できず、かつ十分な給与の支払いがないときに支給されます。

傷病手当の給付期間は最大で1年6ヶ月です。
例えばうつ病で会社を休み、1年6ヶ月以内に復職したものの、再びうつ病が悪化して休職した場合には、復職期間も1年6ヶ月に組み込まれます。

傷病手当の金額の正確な支給金額は以下の式で算出します。

傷病手当(1日当たりの金額)=(支給開始日以前の12ヶ月の報酬月額の平均額)÷30×3分の2

仮に月の給与が30万円の場合、上記の式に当てはめると

30÷30×3分の2=6,666円

となります。休職しても日額で6,666円の手当があるのとないのは大違いなので、健康保険加入者にとっては有り難い制度です。

ちなみに、労災で休業補償を受けている場合は受給対象外です。傷病手当はあくまでも業務に関わりのない病気やケガによる休職が対象となります。

(2) 失業保険

失業保険は雇用保険から行われる給付で、過去2年間に雇用保険の加入期間が1年以上ある場合に受給が可能です。

受給金額は年齢と給与額によって決定されます。支給額は給与の50~80%で、給与が低いほど給付率は高くなります。

失業保険の計算式は以下の通りです。

基本手当日額 = 6ヶ月の賃金÷180×(50~80%)
失業手当月額 = 基本手当日額×28

たとえば40才の人で6ヶ月の賃金が210万円の場合、給付率は50%です。その場合は

基本手当日額:210万円÷180×50%=5,833円
失業手当月額:5,833円×28=163,324円

上記の額を受給することが可能です。失業保険は最短で90日、最長で360日分支給されます。

(3) 障害年金の受給

障害年金は、病気やケガで日常生活が困難になったり、働けなくなったときに受給できる年金です。
厚生年金、国民年金ともに受給可能な年金で、うつ病も対象に入ります。

障害年金は借金があっても受給できるので、うつ病で働けず、失業保険もなく、借金で困っている人には有り難い制度です。
しかし、うつ病は骨折などのようにレントゲン検査で証明できるものではないので、受給ハードルが高いとも言われています。

障害認定にあたっては、外来・入院状況、治療期間、家族の支援、就労状況、要支援などの要件を総合的に考慮されます。

障害年金の受給については、厚生年金の人は年金事務所か共済事務局に、国民年金の人は市町村の年金係で相談してください。

(4) 生活保護の受給

障害年金を受給するほどではなく、身の回りのことはできるけれど、就労は不可能で生活が苦しいという場合は「生活保護」の受給も視野に入れましょう。

生活保護は借金があっても受給することができます。
しかし、原則生活保護費を借金返済に充てることはできません。生活保護費は税金から払われ、あくまでも生活費を支給するものであり、借金返済に使われるのは趣旨に反するからです。

また、生活保護受給後は新たに借金をすることや、その借金の返済に充てるのもNGです。受給中はあくまでも支給された金額の範囲で生活をすることになります。

2.うつ病が原因の借金も債務整理は可能

うつ病で休職・退職をしたときには、ここまで紹介したように様々な手当てがあります。まずはそうした制度を利用して生活費を得ることをおすすめします。
しかし、それでも生活費が足りない、借金が返済が出来ずに困っているときは、債務整理を検討してみましょう。

債務整理というと「自己破産=全財産を失う」というイメージがあると思いますが、これは間違いです。
自己破産であっても生活費や生活必需品は手元に残すことができますし、そもそも財産を残しつつ借金を減額する手続きもあります。

もともと債務整理は借金に困っている人のための合法的な救済制度なので、うつ病で仕事ができず苦しんでいるのであれば、精神的な負担を軽くするためにも債務整理に踏み切るのは決して悪い話ではありません。

(1) おすすめの債務整理方法は?

債務整理には、主に任意整理・個人再生・自己破産の3つ手続きがあります。
任意整理と個人再生は借金を減額した上で長期の分割払いをする制度で、自己破産は借金が全額免除される制度です。

うつ病患者で生活保護を受給しない場合は、任意整理、個人再生、自己破産のいずれも可能です。
(借金の総額や収入の過多により選択できない制度もありますので、詳しくは弁護士にご相談ください。)

もし、うつ病であっても働くことができたり、家族の収入があったりして、借金が減額されれば自力で生活できるという場合には任意整理を選ぶことが有効かもしれません。
個人再生は継続して安定した収入を得ている方しか選択できない手続きなので、休職中の方や収入が安定しない方は利用することができません。

仮にうつ病で休職しており、分割でも支払うことが困難ならば、借金を0にできる自己破産を選択することも視野に入れましょう。

[参考記事]

債務整理とは?わかりやすく解説!|方法・種類・メリット

(2) 生活保護受給者の場合

債務整理は、うつ病患者の方はもちろん、生活保護や障害年金を受給していても可能です。
しかし、生活保護受給者の場合は一部制限がつくので注意が必要です。

生活保護受給者の場合、任意整理と個人再生を選択することは難しいと言えます。
というのも、この2つの手続は、手続後に減額後の支払いが残ります。生活保護費を借金返済に充当することはできないので、手続きはできないと判断されるでしょう。

一方、自己破産をすることは可能です。自己破産ならば借金が全額免除されるので、生活保護費が借金返済に充てられることもありません。裁判所も問題なく手続を認めてくれることが多いと言えます。

[参考記事]

生活保護と借金・自己破産の関係〜法テラスの利用について

【障害年金受給者の場合】
障害年金受給者の場合は、任意整理・個人再生・自己破産、いずれも可能です。
障害年金はあくまでも「年金」なので、そのお金の使い道は自由です。生活保護のような制限は一切つかないので、公的な支援をもらいながら任意整理・個人再生を目指す場合は障害年金を受給するのがベストと言えるでしょう。
とは言え、繰り返しになりますが、うつ病での障害年金受給は基本的にハードルが高いです。受給できる可能性が0というわけではありませんので、もし希望する場合は年金窓口や病院のケースワーカーに相談してみましょう。

3.まとめ

うつ病で休職・退職に至るまでには、人それぞれ様々な原因があると思います。そこに借金が重なれば心の負担は余りにも大きいでしょう。
実は、借金はうつを引き起こす大きな要因と言われているので、借金が減るだけでもかなり気持ちが楽になると思われます。

うつ病に苦しむ方が最も優先すべきは、うつ病を治療することです。そのためには一刻も早く借金による心の負担を軽くする必要があります。

しかし、うつ病のときは大きな判断をするのは避けたほうが良いと言われます。
そのため、もし債務整理をするにしても、慌てて一人で決断するのは得策ではありません。

大事なのは、専門家と一緒に解決をすることです。
今の借金がどれくらいあるのか、債務整理でどのくらい減らせる可能性があるのかを専門家(弁護士)に相談してみましょう。

借金問題は出来るだけ早く解決するのがベストです。問題が長引くほど状況は不利になり、健康にも悪い影響を与えます。

借金問題にお困りの方は、是非一度、泉総合法律事務所の弁護士に相談してみてください。当事務所は、うつ病に関わる借金問題の解決実績も豊富です。

[解決事例]

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